☆男性の加齢に伴うお子さんの異常や疾患 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

男性の加齢に伴うお子さんの異常や疾患について記した最新のレビュー論文をご紹介致します。

Fertil Steril 2015; 103: 1402(米国)
要約:男性の加齢に伴うお子さんの異常や疾患について、これまでに発表された論文からリスクをまとめたところ、下記の表のようになりました。
             一般の確率   男性の加齢に伴う確率
軟骨無形成症       1/15,000    1/1,923(>50歳)
アペール症候群      1/50,000    1/5,263(>50歳)
ファイファー症候群    1/100,000    1/16,666(>50歳) 
クルーゾン症候群     1/50,000    1/6,250(>50歳)
神経線維腫症       1/4,000     1/1,080(>50歳)
網膜芽細胞腫       1/20,000    1/6,667(>45歳)
ダウン症候群       1/1,200     1/876(40~44歳)
クラインフェルター症候群 1/500男性    1/312男性(>50歳)
てんかん         1/100      1/77(40~45歳)
乳癌           1/8.5      1/5.3(>40歳)
小児白血病        1/25,000    1/21,930(>40歳)
小児中枢神経腫瘍     1/36,000    1/21,302(>40歳)

解説:女性の加齢に伴う卵子の老化現象とお子さんの異常や疾患の増加についてはよく知られていますが、男性の加齢に伴うお子さんの異常や疾患についての論文は極めて少数です。本論文は、これまでに発表された論文をまとめたものです。先進国では晩婚化と出産年齢の高齢化が男女ともに進んでいます。このような状況下では、噂話やネットの怪情報ではなく正しい情報の提供と理解が重要となります。これらの確率の増加をどのように捉えるかは、各自の考え方によると思いますが、少なくとも現段階では男性の年齢(が高齢だからという)理由で妊娠を諦める必要はないことは言えると考えます。

なお、本論文には自閉症の記載が一切ありませんので、男性の加齢と自閉症については明確な根拠がないものとお考えください。。