本論文は、ART治療（体外受精、顕微授精）をやめた後の自然妊娠の確率を国家規模の統計を用いて検討したものです。
Hum Reprod 2019; 34: 1470（英国）
要約：1998〜2011年にART治療（体外受精、顕微授精）を実施した女性2133名を対象に、その後無治療での妊娠成立の有無を後方視的に検討しました。なお、観察期間は最後の胚移植から1〜15年であり、ART妊娠群1060名とART非妊娠群1073名を比較しました。5年間での妊娠成立は、ART妊娠群15%とART非妊娠非群17%で有意差を認めませんでした。ART妊娠群において、無治療での妊娠率低下と有意な関連を有するのは、不妊期間が0.89倍／年、胚移植3回以上が0.31倍、顕微授精が0.62倍でした。一方、ART非妊娠群において、無治療での妊娠率低下と有意な関連を有するのは、不妊期間が0.86倍／年、卵管因子が0.31倍、複数の不妊原因が0.48倍でした。
解説：英国では、ART治療件数1994年に18,304件でしたが、2014年には52,288件と3倍に増加しました。妊娠率も1994年の14%から、2014年の27%に2倍に増加しています。しかし、一方で治療を諦める方も少なくありません。これには、身体的、精神的、経済的な理由があるかと思います。ART治療をやめた後の自然妊娠の確率に関する論文はそれほど多くありませんが、11〜24%程度と報告されています。これらの論文は症例数が少ない小規模かつ経過観察期間が短いものばかりです。本論文は、ART治療をやめた後の自然妊娠の確率を国家規模の統計を用いて検討したもので、過去最大の規模かつ最長の経過観察期間での検討です。ART治療での妊娠成立の有無に関わらず、治療終了後の自然妊娠率はおよそ1/6であることを示しています。
下記の記事を参照してください。
2018.5.21「☆不妊治療をお休みしている時の自然妊娠の確率」年間約24.5%（38歳以下の女性、精液所見が良好）
2014.5.29「☆☆妊娠には「ニュートラルな気持ち」で！」
2013.3.3「☆第１子顕微授精出産後の自然妊娠の確率は？」年間約2%（若い女性）
2013.2.26「☆第１子体外受精出産後の自然妊娠の確率は？」全体で約20%（34歳未満の女性、精液所見が良好）