☆第1子顕微授精出産後の自然妊娠の確率は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2013.2.26「第1子体外受精出産後の自然妊娠の確率は?」で、それは約20%(ただし、若い女性で精液所見が悪くない場合に限る)であることを紹介しました。それでは、1人目を顕微授精で妊娠した場合(あるいは治療をやめた場合)の自然妊娠の確率はどうでしょう。その答えは、今回ご紹介する複数の論文から、年間約2%となります。ただし、若い女性の場合に限ります

Fertil Steril 2000; 73: 774(アイルランド
要約:1990年~1998年に顕微授精で妊娠出産した44名の女性(採卵時年齢、平均34歳)を2年後に質問票調査しました。2名(4.6%)が自然妊娠されました。なお、第1子出産後に体外受精や顕微授精をされている方は除外しています。

RBM Online 2008; 17: 403(ドイツ
要約:顕微授精で妊娠出産した899名の女性を4~6年間追跡調査しました。10.9%は避妊中で、妊娠を目指している方のうち20.0%が自然妊娠され、26.6%が顕微授精で妊娠しました。自然妊娠された方の多くは第1子出産後2年以内で、女性の年齢が若いことが唯一の自然妊娠予測因子でした。半数は追跡調査できなかったので、もしそれらの方全員が自然妊娠しなかったとしても、約10%の方が自然妊娠することになります。

Fertil Steril 2002; 78: 550(ベルギー
要約:1992年~1993年に顕微授精を実施して妊娠しなかった200名の女性(最終採卵時年齢、平均30.5歳、のべ433採卵周期)の治療をやめた後5年間経過観察しました。23名(11.5%)が自然妊娠され、治療をやめてから妊娠までの期間は平均20ヶ月でした。妊娠した方は(35ヶ月)、妊娠しなかった方(50ヶ月)と比べ、不妊期間が有意に短くなっていました。

解説:精液所見が悪い方でも自然妊娠はあり得ます。しかし、あくまでも女性の年齢が若い方に限定されますので、注意が必要です。本論文からは、顕微授精が必要な場合の夫婦の自然妊娠率は年間2%程度となります。