子宮筋腫の取り扱いについて再考の余地あり | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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米国生殖医学会誌に「子宮筋腫の取り扱いについて再考の余地あり」とのコメントが発表されました。

 

Fertil Steril 2017; 107: 334(ベルギー)

要約:子宮筋腫は極めてポピュラーな疾患であり、およそ30%の方で手術が必要になり、根治術としては子宮全摘出術が必要です。全米で年に60万人の方が子宮全摘出術を行っており、そのうち1/3が子宮筋腫によるものです。しかし、子宮全摘出術を行ってしまっては妊娠することができません。子宮筋腫核出術で筋腫のみを摘出することができますが、最近登場した選択的プロゲステロン受容体調節薬(SPRM)が子宮筋腫の治療に有効であることが示され、治療の選択肢が増えました。妊娠を妨げることが明らかにされているのは、粘膜下筋腫と子宮内腔を変形させる筋層内筋腫です。SPRMを用いると、手術が必要とされた症例の40%で手術が回避できたとの報告もありますので、これからは第一選択としてSPRMを考慮するのはありだと考えます。また、子宮筋腫核出術を行った症例の60%の方で、5年以内に子宮筋腫の再発が認められます。手術を行うと腹腔内の癒着を招くリスクがありますので、なるべく手術は最小限にしておきたいものです。なお、SPRMの使用法は、ユリプリスタール5mg/日x3ヶ月を2クール行うことが推奨されます。

 

解説:ユリプリスタールは当院でも数名の方に使用しましたが、効果は十分あるものと考えます。ただし、費用がかなり高額であり、輸入品ですので、すぐに処方することができません。現在では、手術→ユリプリスタールの順番での治療ですが、ランダム化試験が行われ、ユリプリスタールが第一選択になる日が近いうちに来るものと考えます。

 

ユリプリスタールについては、下記の記事を参照してください。
2016.1.25「ユリプリスタールの長期投与」
2015.8.26「ユリプリスタールの子宮筋腫縮小作用機序」
2015.3.18「新しい子宮筋腫治療薬の有効性と安全性」
2014.12.11「子宮筋腫の新たな治療戦略」