ユリプリスタールの長期投与 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は、2015.3.18「新しい子宮筋腫治療薬の有効性と安全性」で紹介した論文の同一グループによる続報です。前回はユリプリスタール投与前と2コース投与後の比較でしたが、本論文はユリプリスタール投与前と4コース投与後の比較になります。

Fertil Steril 2016; 105: 165(EU諸国)
要約:2012~2014年にEU11カ国46施設でユリプリスタールのPhase III臨床試験が行なわれています(PEARL IVスタディー)。本研究は、18~50歳、BMI 18~40、FSH <20、3~12 cmの子宮筋腫があり何らかの症状を有する方を対象に行いました。ユリプリスタール(5 or 10 mg)を12週投与、12週休薬のサイクルでを行ない、子宮筋腫縮小効果と安全性(副作用の有無)を検討しました。451名の方をユリプリスタール5 mg投与群(228名)あるいは10 mg投与群(223名)にランダムに割り付け、ダブルブラインド形式で実施しました。投与前と2コース投与後を比較したところ、下記の結果になりました。

         5mg   10mg
無月経率     63%    73%
不正出血消失率  73%    75%
月経血量     46%    43%
子宮筋腫容積   28%    27%  

また、痛みや症状のスコアは改善し、QOL(生活の質)は良好になりました。副作用もほとんどなく、薬剤の継続率も良好でした。投薬開始時には子宮内膜が厚くなる方がおられましたが、一時的なものでした。なお、子宮筋腫の縮小や症状の改善は、薬剤を休薬している間も継続されていました。

解説:ユリプリスタールは、選択的プロゲステロン受容体調節剤(SPRM)であり、プロゲステロン活性を調節(抑制)するだけではなく、子宮筋腫の増殖を止め、アポトーシス(細胞死)に陥らせることができます。しかもエストロゲンを抑制することがないという特徴があり、副作用が極めて低い薬剤です。投薬中止後の生理は1ヶ月で復活しますが、子宮筋腫の縮小効果は6ヶ月間も持続します。本論文は、ユリプリスタールによる子宮筋腫治療効果が、5mgと10mgで同等であることを示しています。ユリプリスタール12週投与、12週休薬のサイクルを継続することによる有効性と安全性が明らかになりました。

ユリプリスタールのメリットは、休薬期間にも持続的な治療効果が期待できること、1日1回の内服で済むこと、副作用が少ないことです。長期的な使用には極めて有効な薬剤と言えるでしょう。ユリプリスタールの登場により、子宮筋腫の治療に大きな変革がもたらされるのではないかと考えます。