Q&A1306 エコーなしでの移植は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 凍結胚盤胞移植によって妊娠に至り、現在7ヵ月に突入しております。結果として妊娠できたのはもちろん嬉しいのですが、移植時に疑問に思ったことがあり、どうしても知りたいので是非ご教示ください。
私が移植をしたのは、産科と不妊治療科を併設しており、医師は院長が一人というクリニックで、リプロのような規模の大きな病院ではありません。ブログを通じて同じように移植をされた多くの女性の体験談を読ませて頂いていると、移植時は腹部を映すエコーモニターがあり、医師がそれを見ながら適切な場所を確認して移植をしている、と理解しておりました。また、その場合は皆さん、エコーを見やすくするために、移植前に尿を溜めるように指示されていると理解しております。
ところが、私が移植したクリニックでは、移植を実施する際、腹部エコーはなく、モニターを見ながら処置することもなく、尿溜めを指示されることもありませんでした。そして、移植の終了後に、経腟エコーにて移植した場所を見せて頂きました。クリニックには凍結胚盤胞を1つ保管しており、チャンスがあれば第2子も移植したいと考えているのですが、上記のように移植時にモニターがなかったことから、実は、成功率が下がっているのではないかと心配しております。

そこで質問です。
①移植する際に、腹部エコーで場所を確認しながら処置するのとしないのとでは、移植の成功率に大きな影響があると考えられるでしょうか。医師の経験・技術が豊富であれば、モニターがなくても問題ないのでしょうか。
②第2子の移植時、前回と同じクリニックで移植をする場合、腹部エコーを見ながらの処置ではないにしても、尿はある程度溜めた方がいいのでしょうか。

A 

適切な位置へ移植するためには超音波(エコー)ガイド下での移植が必要であることが、複数の論文により証明されています。これは、胚移植の理想的な位置は、子宮底部から10~20mm手前が良いとされていますので、その位置を合わせるためです。ただし例外的に、極めて熟練した医師なら、ブラインドでも手の感触と事前に計測した移植ポイントまでの距離で位置を合わせることも可能かもしれません。これは職人技とも言えるでしょうが、現実的ではありません。

②尿を溜めるのは腹部エコーで見るためです。したがって、腹部エコーを見ないのであれば尿を溜める必要はありません。

なお、当院では経膣エコーガイド下に移植をしますので、尿を溜める必要はありません。経膣エコーガイドでは、子宮が前屈でも後屈でもどのような向きにあっても移植ポイントをはっきり見ることができます。

 

下記の記事を参照してください。

2016.4.17「☆正常胚が着床しないのは何故? その2

2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報

2014.9.18「胚移植のラーニングカーブ

2012.12.29「胚移植(ET)の理想的な位置は?