子宮内膜の着床能の研究 続報 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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スペインのグループから「着床の窓」「ERAテスト」に関する新たな論文が発表されました。核小体チャンネルシステム(NCS)は近年着床との関連が示唆されていますが、本論文は、ERAテストとNCSの正の相関を示したものです。

Fertil Steril 2014; 102: 1477(スペイン)
要約:2008~2012年49名(20~34歳、BMI 19~25)の方から子宮内膜を採取し、ERAとNCSを後方視的に分析しました。ERAが受容期(receptive)である場合にはNCSが陽性となり(24名)、ERAが非受容期(non-receptive)である場合にはNCSが陰性となりました(25名)。

解説:従来行われていた子宮内膜日付診では、「着床の窓」を正しく検出することができませんでしたが、スペインのグループが開発したERAテストは、「着床の窓」の研究に極めて有効なツールとして期待されています。ERAテストは子宮内膜を採取し、238個の遺伝子発現のパターンから着床の窓を見極める方法です。その再現性は、29~40ヶ月後の検査においても変化がなく一定です。このため、個別化した胚移植プランが可能になります。残念ながら、現在のところ、スペインのグループでしか検査ができません。

一方、核小体チャンネルシステム(NCS)は、1μmの大きさの膜性構造物で、着床期に出現し、妊娠中は消失することが知られており、子宮内膜の受容能に関連があるのではないかと考えられていました。スペインのこのグループは、NCSが簡便に見いだせる方法を開発し、着床期にNCSが発現され、子宮中央より上部(奥側)に均一に見いだされることを明らかにしました。なお、NCSは妊娠歴とは無関係で、4 ng/mL以上のプロゲステロン濃度と関連を示しました。

ERAとNCSのリンクが何に役立つかと言えば、、着床しやすい場所や条件の検討に有用です。本論文から、子宮内膜の中央より奥が着床にふさわしく、プロゲステロンは最低4 ng/mL以上必要であることが推測されます。

着床の窓とERAテストについては、下記の記事を参照してください。
2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」
2014.8.10「「着床の窓」について」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」