慢性子宮内膜炎と反復流産の関係 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

慢性子宮内膜炎(CE)着床障害の原因と考えられていますが、本論文は反復流産(不育症)との関連を示しています。

Fertil Steril 2015; 104: 927(米国)
要約:2回以上の流産の経験のある方107名について、CD138免疫染色を用いた慢性子宮内膜炎(CE)の検査を行いました。CD138免疫染色(56%=60/107)は、通常のHE染色(13%=14/107)と比べ、有意に多くのCEを検出できました。次回妊娠での流産率は、CE(ー)群(12.9%=4/31)と比べ、CE(+)の無治療群(32.3%=11/34)で約2.5倍に増加していました。

解説:慢性子宮内膜炎(CE)は、持続する子宮内の炎症であり、形質細胞(CD138陽性)の存在が特徴的です。CEの原因となる細菌として、淋菌、クラミジア、マイコプラズマ、ウレアプラズマ、大腸菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、エンテロコッカス、酵母菌、結核菌などが候補として考えられています。

これまでに発表された論文では、CEと反復流産(不育症)の関連について、賛否両論があり結論が出ていませんでした。これは、CE検出方法として多くの論文で通常のHE染色が用いられたため、検出率(正診率)に問題があったためと考えられます。本論文は、症例数が少ないため結論的なことは言えませんが、CEは着床障害のみならず反復流産(不育症)にも関与する可能性を示唆しています。現在のところ、CE検査は不育症の方には通常行われていませんが、CE治療により不育症の方の次回妊娠予後が改善したとする報告もありますので、今後の研究の進捗状況に注目したいと思います。

慢性子宮内膜炎(CE)については、下記の記事を参照してください。
2015.5.21「☆慢性子宮内膜炎と異常子宮収縮の関連」
2014.12.8「☆慢性子宮内膜炎と着床障害」

なお、当院ではCE検査にはCD138免疫染色を用いています。