Q&A858 抗セントロメア抗体 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2015.8.8「Q&A781 44歳、もう限界でしょうか」の記事で回答いただきました。

「抗セントロメア抗体」の採血をしてみてください。とのことでしたが、実は、原発性胆汁性肝硬変(PBC)を発症してからは抗核抗体 1280倍、CENTROMERE 1280倍と項目にあります。たぶんこれが抗セントロメア抗体のことだと思うのですが、いかがでしょうか。またご指摘いただいたように「プレドニン」でした。こちらを服用していますが、この抗セントロメア抗体が高く出た場合は「プレドニン」以外に何かあるのでしょうか。

またその後の治療ですが、
2015.6 完全自然周期にて、D11採卵、1つ排卵済みでしたが、3個採卵でき、1個多核受精、2個未熟、移植なし
2015.7 クロミッド周期にて、D12、1つ卵胞ありましたが採卵確認できず
と、薬を使わないほうが卵胞数はあるみたいなのですがなかなか移植まではたどり着けません。

今後の治療について先生から「私は、まだやるべきことが残されていると思いますので、諦めるのはその後にしておいた方がよいと考えます」と言っていただいて勇気をいただくことができました。ありがとうざいます。松林先生なら具体的にどのような治療を勧められますか。教えていただけますでしょうか。

A セントロメアは、染色体が分裂する際に、染色体の中心部が対局に引っ張られる場所です。ここに抗体が結合してしまうと、染色体の分離がうまくいきませんので、染色体異常になったり、細胞分裂がうまくいかなくなります。抗セントロメア抗体が極めて強陽性ですので、受精や分割が極めて難しい状況だと思います。このような場合に有効な治療指針は現在のところ定まっていませんが、私ならプレドニン15mgを刺激開始から採卵まで使用してみます。それでも成果が出ない場合には、免疫グロブリン20gを刺激開始日に点滴することで、抗セントロメア抗体の働きを抑えることが可能かもしれません。ただし、免疫グロブリン20gで20万円程度かかります(自費)。

抗セントロメア抗体は、PBC以外では、強皮症の軽症型であるCREST症候群、Raynaud症候群の方で陽性率が高くなっています。しかし、不思議なことに私の知る限りでは、これらの疾患と不妊症に関する論文はこれまでに報告されていません。