顆粒膜細胞のニューロキニンとキスペプチンの役割 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

極めて難解な論文ですので、簡潔にいきたいと思います。顆粒膜細胞は、卵胞の壁の細胞(MGC)と卵子の周囲の細胞(卵丘細胞)からなり、卵子を養っている細胞です。これまで、ニューロキニンB(NKB)とNK3受容体(NK3R)系、キスペプチンI(KISSI)とKISSI受容体(KISSIR)系が生殖機能に重要であると報告されており、視床下部~下垂体のホルモンへの作用は必要不可欠であると考えられていました。本論文は、NKBとKISSIの卵巣への直接作用について明らかにしたものです。

Hum Reprod 2014; 29: 2736(スペイン)
要約:56名のドナー卵子から、MGCと卵丘細胞を採取し、NKB/NK3RおよびKISSI/KISSIRの発現を検討しました。NKB/NK3RおよびKISSI/KISSIRは、mRNAおよび蛋白ともにMGCと卵丘細胞に同様な発現を認めましたが、特に卵丘細胞で強い発現が認められました。KISSIはMGCのカルシウム濃度を増加させましたが、NKBにはその作用はありませんでした。しかし、NKB存在下では、KISSIによるMGCのカルシウム濃度の増加が有意に減弱しました。

解説:ニューロキニンは、タヒキニンに属すG蛋白で、その受容体には、NK1、NK2、NK3があります。ニューロキニン変異とキスペプチン変異は、どちらも下垂体性無月経の原因として考えられており、両者のリンクが示唆されていました。このような背景のもとに本論文の研究が行われました。本論文は、卵巣の顆粒膜細胞におけるNKBとKISSIが同様の発現パターンであることを示しており、卵巣への直接作用について明らかにしたものです。

キスペプチンについては、下記の記事を参照してください。
2013.12.19「☆キスペブチンとは?」