Q&A589 41歳、海外在住、早発閉経、卵子提供治療中 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 41歳、海外在住、早発閉経、卵子提供治療中
着床前診断をし正常な3AAの凍結胚を2個ずつ2回移植しましたが着床しませんでした。エストロゲン、プロゲステロンの注射を打ち、アスピリン、抗生物質を服用し、内膜は2回とも11ミリ以上で申し分ない状態でした。1回目はプロゲステロン注射を開始してから5日半後、2回目は4日半後に移植しました。
着床障害の検査として、下記項目についてクリアしておりました。
・抗リン脂質抗体
・抗カルジオリピン抗体  
・ループスアンチコアグラント(LA)
・TSH 
・FreeT3
・FreeT4
・抗核抗体
・プロラクチン
・テストステロン
・抗プロトロンビン抗体 
・NK細胞活性
・ヒトインターフェロンγ(INFγ)
・染色体検査
・血清カルシウム
・血清リン
・空腹時血糖
同じような条件では、ほとんどの方が2回で妊娠されているとのことで、担当医は、子宮内膜の細胞の単位の問題で、受精卵が内膜に入ると通常作用するレセプターが働いていないことが懸念されると言われました。凍結胚はまだ10個以上残っており、ERAテストをしてみるのも有効かもしれないとは言われたのですが、私はどんなによい受精卵を移植しても妊娠できないのではと思い、次の移植を躊躇しております。

1 最近話題を耳にする着床の窓(ERAテスト)とこのレセプターは別問題なのでしょうか。レセプターが作用しないということは着床の窓が開かないということなのでしょうか。
2 ERAテストは移植サイクルの直前のサイクルでやると伺ったのですが、窓の開く時期・期間がサイクルによって異なる可能性がある中で、移植サイクルとは別のサイクルでERAテストをやってみる価値はあるのでしょうか。
3 2014.12.8「☆慢性子宮内膜炎と着床障害」の記事の慢性子宮内膜炎の検査など、他に何かやってみる価値のある検査があれば教えていただけるとありがたいです。
4 担当医より、Beta-3蛋白の有無を調べる検査も有効かもしれないと連絡がありました。このBeta-3に関してもERA検査と同様、医師によって意見が分かれるということをネットで知りました。日本国内で検査できる機関の有無に関しまして、ご教示いただければありがたいです。

子どもをなかなか諦められずにいるのですが、やるだけのことをやってだめであれば諦められるのではないかと考えてあと1回か2回チャレンジするつもりでおります。

A 
1 何のレセプターなのかわかりませんから、ERAと同じなのかは不明です。担当医に直接聞いてみてください。
2 ERAテストは「全ての周期が同じ着床の窓を持つ」ことが前提にあります。あくまでも仮定の話ですので、毎月同じなのかは不明です。
3 慢性子宮内膜炎の検査はやってみて損はないと思います。
4 Beta-3蛋白とは、Transforming growth factor β(TGFβ)のことだと思います。動物ではTGFβが着床に関連するという論文が多数ありますが、ヒトではまだ研究段階のものです。勿論、調べてみるのは良いことだと思います。研究段階の検査は、ある特定の研究室でしか行われていなませんので、おそらく担当医は心当たりがあってお話されたのだと思います。日本で実施している施設は、私は存じません。

「着床障害については何もわかっていない」のが現状です。新たに登場した検査なども研究段階のものですので、気になったことは潰していくというスタンスで取り組んでみて欲しいと思います。正解が何なのかは誰にもわからないのです。私なら、6日目と7日目に胚盤胞を1個ずつ移植してみたいと思います。

「着床の窓」とERAテストについては、下記の記事を参照してください。
2014.12.21「☆ERAテストについて」
2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報」
2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」
2014.8.10「「着床の窓」について」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」