Q&A524 ホルモン補充周期の黄体ホルモンが心配です | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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Q ホルモン補充周期の移植予定
妊娠確定後も8~9週までは、黄体ホルモンが必要になるようですが、ちょうど、胎児の器官形成と重なりますが 胎児への影響には問題はないのでしょうか。また、どの位の量までなら多量とは言わず大丈夫なのでしょうか。
現在、通院中の病院で 今回 初めてホルモン補充周期で挑戦してみようと思っているのですが、人工授精の際に黄体ホルモンに問題がないにも関わらず、患者一律でデュファストンを処方する方針の病院ですので、今回がどのように処方されるか不安です。
通常は、血液検査等をして、その都度、黄体ホルモンを個々に必要な量だけ処方されるのが普通でしょうか。過剰摂取したとして、胎児への影響は大丈夫なのでしょうか。

A 妊娠中に黄体ホルモンは必須のホルモンです。それが生体内から供給されるのか、外から投薬されるのかの違いに過ぎません。体外受精が行われていなかった時代には、妊娠初期の女性ホルモン剤が問題ではないかと漠然と考えられていましたが、ホルモン補充周期が世界中で広まった現在、女性ホルモン剤による胎児への影響は報告されていません。

このような考え方から、人工授精の際にもデュファストンなどの黄体ホルモン製剤が使用されています。受精卵は問題ないのに、単に黄体ホルモン不足があるがために妊娠できないという悲しい状況を回避するための作戦です。黄体ホルモンは排卵後の卵胞の抜け殻から産生されますので、毎回同じではありません(毎月採血するとよくわかります)。黄体ホルモンは、不足していてもしていなくても、補充することに大きなデメリットがないため、毎月補充するのが得策です。私も、人工授精の際に、皆さんにデュファストンなどの黄体ホルモン製剤を処方しています。

妊娠中の黄体ホルモン濃度は、ホルモン補充とは比べ物にならない程高濃度です。2013.9.6「☆女性ホルモン剤は太る?」の記事の中のグラフ、2013.5.27「☆女性ホルモン剤を使うのは心配ですか?」の記事の説明文を参照してください。