週末の午前中、寝室で惰眠を貪っていたら、玄関をノックする音と、「こんにちはー」という男性の声が聞こえてきた。
仕方なく寝間着の上から丹前を羽織って、玄関の戸を開けると、こんな田舎には似つかわしくない3ピースの上等の紺スーツを着込んだ、少し小柄な紳士が立っていた。
その紳士は、にこやか、かつ、はつらつと、休息中に訪れた事を僕に詫び、自己紹介をしながら、チラシを差し出した。
チラシに目をやると、そこには目の前に立っている紳士のりりしい写真が印刷されており、「○○に新しい風を!」というキャッチフレーズが同時に目に飛び込んできた。
彼は、先日行われた地方議会議員選挙に落選した候補者だった。
彼が言うには、前回の選挙では、準備不足でなかなか自分の名前を覚えてもらえなかった(うん、確かに僕も良く覚えていなかった。)ので、こうして少しでも顔と名前を覚えてもらおうと、一人で戸口訪問を行っているのだという。
選挙期間中だと、候補者や運動員が直接戸口訪問することは禁じられているが、選挙は終了しているので、ある意味、落選した候補者は次の選挙までにどれだけ直接有権者に出会えるかが重要になるのだろう。なんとなく「場違い」なスーツで一軒一軒尋ね歩く彼の姿を想像して、悲壮感を感じてしまった。
選挙運動の期間中、候補者の選挙カーは、候補者の名前を連呼する。時に騒音とも思えるような大音響に迷惑すら感じるときもあるが、彼らとて必死である。
本当であれば、自分の施政方針をしっかり有権者に伝えたいと、恐らくはほとんどの候補者が願っている。しかし残念なことに、選挙期間中であろうと有権者のほとんどは、自分の暮らしのペースを変える事はしない。選挙が話題になることはあろうが、候補者の所属する政党や派閥は気にしても、本人の施政方針が何かまで吟味する有権者は稀であろう。
有権者の生活のペースの僅かな隙間に、自分自身の事を印象づけなければならない。それが、選挙カーによる大音響での名前の連呼になるのだろう。
彼が去った後、僕は受け取った「施政方針のチラシ」を、居間に座ってじっくり読んでみた。選挙期間中にさんざん配られる選挙チラシとて、ほとんど目を通す気にならなかったが、こうして読んでみると、一人の政治家の視点が凝縮されていて、今、自分の住んでいる地域に、どんな課題があるのかを知ることができる。僕が支持する政党に与しているわけではなさそうだったが、好感が持てた。
そう、選挙期間中だけ政策が語られるわけではない。国政の場でも、地方自治体でも、普段の生活の中にこそ、政治が語られてしかるべきだろう。
選挙の準備を行うのは、候補予定者だけではなく、我々有権者も、今現在語られている政治にしっかり目を向け、次の選挙の準備をするべきだと思うのだ。
仕方なく寝間着の上から丹前を羽織って、玄関の戸を開けると、こんな田舎には似つかわしくない3ピースの上等の紺スーツを着込んだ、少し小柄な紳士が立っていた。
その紳士は、にこやか、かつ、はつらつと、休息中に訪れた事を僕に詫び、自己紹介をしながら、チラシを差し出した。
チラシに目をやると、そこには目の前に立っている紳士のりりしい写真が印刷されており、「○○に新しい風を!」というキャッチフレーズが同時に目に飛び込んできた。
彼は、先日行われた地方議会議員選挙に落選した候補者だった。
彼が言うには、前回の選挙では、準備不足でなかなか自分の名前を覚えてもらえなかった(うん、確かに僕も良く覚えていなかった。)ので、こうして少しでも顔と名前を覚えてもらおうと、一人で戸口訪問を行っているのだという。
選挙期間中だと、候補者や運動員が直接戸口訪問することは禁じられているが、選挙は終了しているので、ある意味、落選した候補者は次の選挙までにどれだけ直接有権者に出会えるかが重要になるのだろう。なんとなく「場違い」なスーツで一軒一軒尋ね歩く彼の姿を想像して、悲壮感を感じてしまった。
選挙運動の期間中、候補者の選挙カーは、候補者の名前を連呼する。時に騒音とも思えるような大音響に迷惑すら感じるときもあるが、彼らとて必死である。
本当であれば、自分の施政方針をしっかり有権者に伝えたいと、恐らくはほとんどの候補者が願っている。しかし残念なことに、選挙期間中であろうと有権者のほとんどは、自分の暮らしのペースを変える事はしない。選挙が話題になることはあろうが、候補者の所属する政党や派閥は気にしても、本人の施政方針が何かまで吟味する有権者は稀であろう。
有権者の生活のペースの僅かな隙間に、自分自身の事を印象づけなければならない。それが、選挙カーによる大音響での名前の連呼になるのだろう。
彼が去った後、僕は受け取った「施政方針のチラシ」を、居間に座ってじっくり読んでみた。選挙期間中にさんざん配られる選挙チラシとて、ほとんど目を通す気にならなかったが、こうして読んでみると、一人の政治家の視点が凝縮されていて、今、自分の住んでいる地域に、どんな課題があるのかを知ることができる。僕が支持する政党に与しているわけではなさそうだったが、好感が持てた。
そう、選挙期間中だけ政策が語られるわけではない。国政の場でも、地方自治体でも、普段の生活の中にこそ、政治が語られてしかるべきだろう。
選挙の準備を行うのは、候補予定者だけではなく、我々有権者も、今現在語られている政治にしっかり目を向け、次の選挙の準備をするべきだと思うのだ。