64:羽海野チカ:3月のライオン
佃島・月島界隈をモデルにした東京下町を舞台に
孤独な少年棋士と三姉妹の交流を中心に
魂の彷徨を描くハートウォーミングストーリー
指して 指して
指して 指して
指し続けて
指して 指して
-指して
指して 指して
指して 指して
指して 指して 指して
――そうして僕は
今、ここにいる
(羽海野チカ『3月のライオン 5』)
3月のライオン (1) (ジェッツコミックス)/羽海野 チカ
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- 桐山零(きりやまれい)は17歳の棋士。
中学生でプロ入りし、天才と言われたが、彼の生活は孤独そのものであった。
交通事故で両親と妹を失い、父親の知人の棋士の元に預けられる。
しかし、そこでも将棋の才を認められたがために、義理の姉と弟の反発と敵意を買い、居場所を失い独立。
しかし、一年遅れで高校に通うが、気の許せる友人はできない。
そして、プロ棋士の道は厳しい。
勝たねばならないが、義理の父をも破り、引退目前の老棋士をも打ち負かす度に、繊細な零の心は傷ついていてゆく・・・
零が住んだのは東京駅に近い川沿いの六月町。
そこで知り合ったのが、対岸の三月町に住む川本三姉妹だった。
昼は祖父の経営する和菓子屋で働き、夜は叔母のバーで働き家計を支えるあかり。
中学生のひな、そしてまだ幼いモモ。
居場所を失った零にとって、そこは失った家庭の温かみを感じさせる別世界であった。
戦いに傷つく度に癒され、零も次第に棋士として、そして人間として成長してゆく・・・
著者:羽海野チカ『3月のライオン』 1~5(以下続刊) 出版社:白泉社 2008年~
評価:☆☆☆☆★ 90点
胸を締めつけられるようなストーリーです。シリアスでな零の心の世界の風景とコミカルなあかりたちとの団らんという異なる文体が交互に来ることで、読者は絶えずその落差の大きさに戸惑う仕掛けがなされています。まるでモーツァルトのように、巧みな転調で長調と短調が交錯し、それゆえに一層深い心の明暗の世界が浮き彫りになるのです。そして、舞台となっている佃島や月島周辺の風景(あかりたちの家は佃島の住吉神社周辺がモデル)が孤独と温かさというストーリーの両面と見事にマッチし、魂に食い入らずにはおかないのです。
大地震
本日二度にわたり大きな地震がありました。
余震も続いていますが、今一番恐ろしいのは臨海地帯と川沿いの津波の被害です。
海や川よりできるだけ離れることはもちろんですが、関係各省庁が取り残された住人の救助に向けて全力であたることを祈念する次第です。
現在徒歩にて自宅まで移動中。
携帯の電源も切らし、PCのバッテリ切れも間近なのでこのへんで。
今も余震が続いています。
みなさま、くれぐれもご注意ください。
63:奥浩哉:GANTZ1~
映画が面白そうなので、その前に原作を最初から読ことにしたGANTZ。
いったん読みだしたら、面白くて止まらない。
1、2、3、4、5と読み進めて6まで来るともうこれは後戻りできないと思った。
初めはおふざけの宇宙人のキャラがどんどん強大になってゆき、
ありえない想像力の世界が、克明でアートな絵とともに自由奔放に画面を支配している。
凄い!これは革命的なコミックである。
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- 一体、その世界とは?
地下鉄ホームで、落ちた男を助けようとした高校生加藤勝。
そして、昔馴染みの義理で手伝わざるをえなかった玄野計は、逃げ遅れて、地下鉄にはねられ、バラバラになってしまう。
しまったはずだが、大きな黒い球のある部屋で、五体満足でいる自分たちを発見する。
その部屋には、他にも死んだはずの人間たちが先客としていた。
そして、次に玄野が目にしたのは、裸体の美少女の目の前への転送だった…
黒い球は、GANTZと呼ばれていた。
時間がくると、GANTZからは武器一式と、2chの書き込みのようなふざけた誤字だらけの指令がくだる。
そして、部屋の住人達は外の世界に転送され、得体のしれない姿をした宇宙人と戦わなければならない。
1時間のうちに倒しきれなければ、彼らの存在も消えてしまうのだった・・・
不条理な世界でのサバイバルゲームがこそがGANTZの世界である。
評価 ☆☆☆☆★ 90点
著者:奥浩哉 作品名:GANTZ 1~31(続刊中) 出版社:集英社
不条理なサバイバルゲームであるGANTZだが、この作品の肝となるのは以下の3点。
1) 「ウルトラマン」のように、「新世紀エヴァンゲリオン」のように、毎回新しい趣向をこらして登場する宇宙人のキャラ。最初がひきこもりオタクのようで、「ネギあげます」が口癖のネギ星人。次には、無数のキョロちゃんを歌のお兄さんのようなや山本星人、おふざけのような脱力系キャラと死闘を繰り広げるが、どんどんそのキャラクターが強大化してゆく。一体、次に何が出るのか、どのような特徴を持ち、どう倒せばよいのか・・・その時、クリエイターたちの構想と作画の限界が試される。
2)GANZの一回の使命が終わるたびに、仲間から犠牲者が出て、次なる仲間が転送されてくる。それぞれに違った生活史を持ち、それぞれの特技を生かし、敵に立ち向かおうとするが、それがアダになる場合もある。そして、男が主体の世界に、女性が混じることでラブコメの要素も加わる。玄野が惹かれる美少女岸野恵は、自分を助けてくれた加藤に心を寄せる。その三角関係の行方は・・・
3)毎回ミッションの完了ごとにGANTZより、各人の採点がおふざけのような文章で行われる。しかし、そのスコアが100点になると、何か特典が得られるので、真剣にならざるをえない。一体、何が起こるのか。この世界から玄野たちは解放されることがあるのか(解放されるとしたら、それは作品が終わる時だから、連載終了まで解放されないという読みが成立する)。
この作品には、画像としての完成された力があり、純粋にエンターテイメントとしても楽しめるが、同時に日々社会で、得体のしれない敵と、理由もなく戦わざるミッションを強いられている現代人にとっての普遍性を備えている。その敵の姿も、親しみがあるほどに、かえって不気味である。
62.諌山創:進撃の巨人1
- 進撃の巨人(1) (少年マガジンKC)/諫山 創
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3巻までで、100万部を突破していると言われる話題のコミック『進撃の巨人』
いったん読みだすと、あまりのスリリングな面白さで一気に最後まで読んでしまいました。
『進撃の巨人』の世界では、人類は50mの高さの三層の城壁に守られた都市で生活しています。
百年の間、人類は平和に暮らしていました。
しかし、五年前にその平和は突如として破られました。
突如50mの高さの人食い巨人たちが現れ、壁を壊し侵入し始めたからです。
かつて、巨人たちの大きさはせいぜい15mにすぎませんでした。
だから、50mの壁の中で安全に生活できたのです。
しかし、今やこの壁を蹴り破るまでに強大化した巨人。
次々に人が食われてゆきます。
巨人たちを倒さない限り、未来はないのですから、人類も捕食されるままではいられません。
みなしごのミカサと、目の前で巨人に母親の命を奪われたエレンたちは、訓練を終え、調査兵団に志願します。
ちょうどスパイダーマンのように、空間を自由にロープの力で飛び回る立体機動で、巨人の急所である延髄の部分を切り取り倒すのが彼らの役目です。
しかし、巨人の力は強大。次々に仲間が食われてゆき、それを見たエレンは無謀な単騎行動に!
人類に未来はあるのか?そして主人公とおぼしきエレンの運命はいかに?
評価:☆☆☆☆★ 90点
作者:諌山創 書名:進撃の巨人1 出版社:講談社
人類が現在の繁栄を築いていられるのは、これといった天敵がいないためです。かつてはいたのかもしれませんが、狩猟の過程で消えてしまいました。今、人類は他の動植物を捕食することで生きながらえていますが、その立場を逆転させ、捕食される側に置くことでこれほど劇的な世界が広がると、一体誰が予測したでしょう。
作者諌山創氏は23歳の新人。一巻の段階では、まだ人物の表情の拙さや、画面構成の硬さも目立ちます。しかし、2巻、3巻と続くにつれ、しだいにその独自の描写に磨きがかかります。特に巨人と巨人が戦うシーンには。しかし、なぜ巨人と巨人が戦うようになるか、それが二巻以降のミソなんですね。
