NO BOOKS NO LIFE -読書の時間― 

エントリー目次


書評


92.荒川弘:銀の匙 7

91.村上春樹:色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年

90.板垣恵介:謝男 2

89.あだち充:MIX 2

88.松井優征:暗殺教室3

87.アンディ・アンドルーズ:世界を変える力

86.斉藤一人:千年たってもいい話

85. 冲方丁:もらい泣き

84.伊藤喜之:バカでも年収1000万円

83. 戸塚たくす・阿久井真:ゼクレアトル~神マンガ戦記~1

82. 荒川弘:銀の匙 6

81. 有川浩:旅猫リポート

80. 堀江貴文・本そういち:ホリエ戦記 1

79.井上雄彦:リアル12

78.羽海野チカ:3月のライオン 8

77.早川光・連打一人:私は利休 1

77. 水野敬也:夢をかなえるゾウ2

75. 渡辺保裕・松浦儀実:神様がくれた背番号 1

74.辻村深月:ツナグ

73.あだち充:MIX 1

72.二ノ宮知子:87CLOCKERS1

71.大場つぐみ・小畑健:バクマン。20
70.石井あゆみ:信長協奏曲

69.荒川弘:銀の匙2
68.ヤマザキマリ:テルマエ・ロマエⅣ

67.井上雄彦:リアル 11
66.中村光:聖☆おにいさん
65.石田衣良:明日のマーチ

64.羽海野チカ:3月のライオン
63:奥浩哉:GANTZ 1~

62:諌山創:進撃の巨人1

61.一色まこと:ピアノの森18
60. 海棠尊:ブレイズメス1990
59.ヤマザキマリ:テルマエ・ロマエⅠ

58.堀江貴文:拝金

57.伊坂幸太郎」バイバイ、ブラックバード

56.東野圭吾:新参者

55.伊坂幸太郎:オー!ファーザー

54. 村上春樹:1Q84 Book3

53.あだち充:クロスゲーム 17

52.茂木健一郎:脳は0.1秒で恋をする  

51.苫米地英人:「夢」実現脳の作り方  

50. 斉藤一人:微差力  

49: 井上雄彦:バガボンド 32

48. 遠藤雅彦:東京マラソン  

「東京マラソン」クイズ 解答編

47.川上未映子:ヘブン

46.吉田篤弘:つむじ風食堂の夜  

45.大場つぐみ&小畑健:バクマン。6

44.万城目学:プリンセス・トヨトミ

43.万城目学:鴨川ホルモー
42.内藤誼人:レジ待ちの行列、進むのが早いのはどちらか

41.万城目学:鹿男あをによし

40.伊坂幸太郎:SOSの猿  

39.石田衣良:チッチと子

2009年書評バックナンバー



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92.荒川弘:銀の匙 7

農業高校の青春を描いた『銀の匙』ももう7巻。


当初は、同じ作者の『鋼の錬金術師』に比べて、設定も地味に思えたのに、キャラクターを増やし、都会の高校ではありえないワイルドな現実に触れる日常的体験の積み重ねの力で、しだいに人々の心に食い込んで、小学館漫画賞を受賞するまでに至ります。現在も近所の書店の売上げはトップのようです。


動物や、農作物、土や機械に直に接する体験のインパクトは、勉強も遊びも、間接的な情報に囲まれた多くの若者の生活とは対照的なためでしょう。


とは言え、ここで描かれている農業高校の生活はハードそのもの。


いくつもの行事の準備をかけ持ちした八軒勇吾は、蝦夷農祭を前に、過労でダウン。


回復してもみんなに合せる顔がないとおどおどしながら、顔を出すころには、学園祭も後片付けの時間。


そんな勇吾を気づかう御影アキ。両者の距離は近づくかに見えたのですが…


他方、駒場が押さえの切り札として活躍する蝦夷農野球部は順当に勝ち進み、後二つ勝てば春のセンバツ出場。しかし、学校でのテレビの観戦の間にも、勇吾は牛の出産にかり出され、気が気でない様子。


果たして、甲子園出場の夢は叶うのか…


銀の匙 Silver Spoon(7) (少年サンデーコミックス)/小学館

¥440
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著者名:荒川弘 書名:銀の匙 7 出版社:小学館 2013年4月刊


評価:☆☆☆☆ 80点


今回は、過労でダウンした八軒勇吾の家族関係にスポットライトが当てられます。表面上、農業高校の生活に無理解な父親、過度の心配症の母親、それを苦手に思う勇吾と兄。このあたりのすれ違いは、どこの家庭でもありがちな経験だけに心が痛むものがあります。第七巻のラストのページの切れ方は、まさに神采配。何が起こるかは、漫画を手にとってお楽しみください。


↓特別版も出ています。

銀の匙 Silver Spoon 7 大蝦夷農業高校生徒手帳つき特別版 (小学館プラス・アンコ.../小学館
¥950
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91.村上春樹:色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年


『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』
は、村上春樹3年ぶりの長編小説。発売初日で、すでに60万部の印刷が決定しているそうです。

高校時代、多崎つくるには、四人の仲のよい友人がいました。

彼と名前が赤、青で始まる二人の男と、黒、白で始まる二人の女の間には、親密なコミュニティが形成され、そこに一種のケミストリーが生まれていました。

その中で、たった一人名前に色がないので、色彩を持たない多崎なのです。

しかし、彼が大学二年生の夏に、この友情関係は突然の終焉を迎えてしまいます。

彼一人大学進学のため、上京し、残りの四人は地元にとどまります。それでも、帰省するたびに昔通りの旧交を温めていたのに、なぜか四人からつまはじきにされ、そこで関係にピリオドが打たれるのです。

その結果、つくるは大きな傷を心に受け、死しか考えることができない時間を過ごすことになるのでした。

36歳になったつくるには、木元沙羅という交際している女性がいるのですが、彼女はつくるに距離を詰め切れない部分をつくるに感じます。過去の深い影を感じた彼女は、その謎を知るためにいろいろと話す中、五人組の存在にたどり着き、つくるに彼らに会いにゆくことを提案します。

かつて、向かい合うことを避けていたあの時間に、彼らに何が起こったのか。

その謎を解き明かすために、つくるは郷里である名古屋へと向かうのでした。

色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年/文藝春秋
¥1,785
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著者:村上春樹 表題:色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 出版社:文藝春秋 2013年4月刊 


評価:☆☆☆☆ 80点

村上春樹としては、かなりオーソドックスな小説です。リアルな場所と時間の設定があり、登場人物の背景も細かく描かれています。死をモチーフにしたファンタジーの入り口が何ヶ所か提示されるのですが、その洞穴が作中で相互につながりを見せることはなく、あくまでもリアルへの着地点を見つけようとするかのような試み。女性の狂おしいまでの情熱を描くものとしては『ノルウェイの森』ほど徹底しておらず、空想の場所を相互に地下でつなげるような『1Q84』の実験性もないので、春樹ファンの中には不満を感じる人もいるかもしれません。しかし、郷里にも東京にも、自分の居場所を見つけられない主人公の過去の真実との和解と再生の物語としては、感動的に読め、生きる勇気も得られる作品です。村上春樹ワールドへの過度の期待を外し、普通の青春小説として読むのがよいかもしれません。

90.板垣恵介:謝男 2

謝男 (ニチブンコミックス)/日本文芸社
¥620
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『謝男(シャーマン)』
は、範馬刃牙シリーズで知られる板垣恵介による、教師を主人公とした土下座漫画。

この作品の原点は、RINが作画し、板垣が原作した『どげせん』にあります。

しかし、作品をめぐる考え方の違いから、その後コンビは決裂し、RINは『どげせんR』を発表、これに対抗する形で、板垣が発表したのがこの『謝男』です。

『どげせん』の主人公、瀬戸 発(せと はじめ)が田代まさしをモデルと髭と眼鏡の中年男であるのに対し、『謝男』は、女形を思わせる美形の青年教師である点が対照的です。

『謝男』の世界は、素朴な人情物に近い『どげせん』に比べ、ぶっとんでいて、読者を常識や想像力の彼方まで連れてゆくこともしばしば。

『謝男』の第一巻は、主人公拝一穴(おがみいっけつ)の美意識が全開して、超常現象を引き起こすレベルにまで達するので、読者の半数は戸惑いを隠せなかったのではないでしょうか。
謝男 1巻 (ニチブンコミックス)/日本文芸社
¥620
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それに比べると、第二巻は安定した定型にはまっていて、比較的安心して読めると思います。

あくまで、「比較的」の話です(笑)。

第六話「塗り変える過去」は、かつて授業中のお漏らしで「尿ボーイ」とあだ名されたことのある大企業の社長が、高校時代を振り返り、拝によって救われたエピソードを語ります。高校に上がっても、またお漏らしをしてしまった彼をいかに拝が救ったか。

この回想中の拝は教育実習中で、それが十年前ということは拝の年齢は30代前半であるということがわかります。

第七話「達する者」は、路頭に立つ比叡山の千日回峰行をきわめた高僧にクラスのワルガキがいたずらをしかけ、笑いものにしようとするのを見かけた拝がとった態度は?というお話。

高い境地をきわめた者同士のコミュニケーションの話は、なかなか感動的。刃牙の達人たちの交流を彷彿させるエピソードです。

第八話「100万倍の距離」は、汚部屋となった自宅に引きこもった女子生徒を、家庭訪問した拝がいかに救ったという話。

第九話「サンタクロースの夜」は、街頭に置かれたサンタクロースの像に向かって拝が土下座をするシーンから始まります。一体、クリスマスイブに校庭で起こったあるハプニングとは?ちょっとしたファンタジーですが、夢があっていい話だと思いました。

そして第十話「正しい恋愛」はある男子生徒が、拝を真似て、好きな女の子に土下座して告ったのに、思った成果は得られず、拝に不満をぶつける。その時、拝の行ったアドバイスは…

作者:板垣恵介 書名:謝男(シャーマン) 2 出版社:日本文芸社 2013年4月刊

評価:☆☆☆★ 75点


こういう教師が本当にいれば楽しいし、頼もしいと思いますが、土下座はあくまで手段にすぎず、大事なのはその下にある信念と美意識の貫徹。相手が、そして周囲が、どのような態度をとろうと貫き通す意地と、最終的にはそれを認めさせてしまうかけひきの戦術がないと、茶番に終わるので、よい子の実習生や新人教師は真似しないように。

格闘技の技や腕力がなくても、信念と知恵、機転で自分を押し通すという点では、最強をめざす刃牙の世界に通じるテーマと言えるでしょう。

89.あだち充:MIX 2

MIX 2 (ゲッサン少年サンデーコミックス)/小学館
¥480
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それぞれ伴侶を失った父親の連れ子である立花投馬と母親の連れ子である立花走一郎音美は、ともにあの明青学園中等部に在籍していた。


投馬と走一郎はそれぞれ野球部のサードとキャッチャーのレギュラーであったが、並外れた投球能力を持つ投馬はピッチャーにはなれないでいた。


OB会長の息子、二階堂がエースであったためだ。


投馬が二階堂よりもずっと優れた投手であることを知りながら、二階堂を黙々とリードし続ける走一郎。


その認識はどうやら監督も共有しているらしいことが次第に明らかになる。


次第に練習を早めに切り上げるようになる二階堂…


どうやら複雑な事情がありそうだ。


運よく明青学園は都大会の予選を勝ち抜くことができた。


そして一回戦の相手は、冴えたカーブの持ち主、エース西村を擁する水神中学。


二階堂がいないマウンドを控えの安野が走一郎の絶妙のリードで好投し、明青学園は有利に試合を運ぶのだったが…


作者:あだち充 書名:MIX 2 出版社:小学館 2013年3月刊


評価:☆☆☆☆ 80点


 相変わらずやきもきするような展開ですが、この間に作者は何をやっているかというと、ひたすらキャラクターづくりに終始し、主人公たる投馬がいかに二人の兄妹や、周囲の期待をになっている魅力的な存在であるかをアピールしているわけですね。

 妹のデートがかかると、学校の試験でも寝る間を惜しんで頑張ってしまうというエピソードにそれは端的に現れています。

 次の巻では、一見悪役に見える二階堂が実は気の毒な存在であるということが徐々に明らかになるのでしょう。読者も走一郎の言動の端々からそれを知りながら、他の登場人物同様にもやもやとした状態を引っ張るというのがこの作品のお約束なのです。

88.松井優征:暗殺教室3

ぼくら3年E組の担任はころせんせー

ころせんせ-は人間ではない

ころせんせーはまんまる顔に触手のあるタコみたいな超生物だ

ころせんせーは月を壊した

ころせんせーは人類を滅亡させる

だからぼくらはころせんせーを暗殺しなければいけない

ころセンセーを暗殺すれば

百億円の成功報酬がもらえる

けれども

ころせんせーは強い

普通の攻撃は受け付けない

銃弾なんか生八橋で受け止めてしまう

ころせんせーはすばやい

マッハ20の速度で空を飛び

外国でアイスクリームを買いながら

採点を済ませてしまう

ころせんせーは生徒思いだ

分身の術を使いながら

一人ずつちがう学習メニューで

みんなの成績を引き上げてしまう

ころせんせーは頼りになるいい先生だ

今日も暗殺教室の楽しい一日が始まる

暗殺教室 3 (ジャンプコミックス)/集英社
¥420
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週刊『少年ジャンプ』で一番人気のコミックが、松井優征『暗殺教室』です。

生徒が教室で教師を暗殺するというきわどい設定ながら、ころせんせーの超生物ゆえの圧倒的な能力の差と、ユニークなキャラクター。そして、逆説的にころせんせーが生徒のやる気と能力を引き出し、結果として理想の教師を演じてしまうという絶妙のストーリー展開によって、見事に毒抜きに成功しています。

第三巻では、京都へ修学旅行に来た3年E組に襲いかかる魔の手を、ころせんせー自作の分厚い修学旅行のしおりの力でいかに乗り切るか、そして新たに刺客としてやってきた女生徒、自律思考固定砲台さんの話。さらに、落ちこぼれクラスであるE組に対する他クラス生徒による差別とハラスメントをどうはねのけるか、さらにあのビッチ先生の師匠が暗殺者としてやってくる…の4つのエピソードが語られます。

キュートなキャラクターたちと、絶対成立しない暗殺ゆえの安全なゲーム感覚が、この作品のヒットの秘密と言えそうです。

著者:松井優征 書名:暗殺教室 3 出版社:集英社 2013年3月刊

評価:☆☆☆☆


暗殺教室 1 (ジャンプコミックス)/集英社
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暗殺教室 2 (ジャンプコミックス)/集英社
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