NO BOOKS NO LIFE -読書の時間―  -3ページ目

82.荒川弘:銀の匙 6

ロハスな生活への憧れからか人気急上昇の農業高校を舞台にした青春ドラマ、荒川弘『銀の匙』もいよいよ第六巻、佳境に入ってきました。

馬術部の副部長となった八軒勇吾は、御影ユキのサポートで、何とか障害を跳べるようになったものの、地区の馬術秋季大会に出場する羽目に。

そこへ登場したのが農協の組合長のお嬢様、南九条あやめ

実は彼女は、中学のとき御影ユキと同窓だったのだが、エゾノーを落ちたため、プライドの高さからユキと勇吾にことあるごとに突っかかってくる。しかし、どこか突っ込みどころのある彼女は憎めないキャラクターで、場を盛り上げる。

勇吾はジムカーナと小障害飛越Cに、ユキは小障害飛越Bに挑むが、その結果はいかに?

一見何事も完璧にこなせそうなユキも、実は本番に弱いと周囲は囁くのであったが…

そして、大会が終わると間もなく学園祭。

しかし、色々な雑用を引き受けすぎた勇吾の疲労はピークに達し、テンパッた弾みでユキにアプローチするのだったが…

銀の匙 Silver Spoon 6 (少年サンデーコミックス)/小学館
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著者:荒川弘 書名:銀の匙 6 出版社:小学館 2013年1月刊

評価:☆☆☆☆ 80点


ということで、それまで抑制されてきたラブコメ的要素も解禁となり、ちょっとドキドキ。ふだんは読まない連載中の少年サンデーを立ち読みしたくなるくらい、先の展開が楽しみとなった『銀の匙』です。

81.有川浩:旅猫リポート

 《我輩は猫である。名前はまだない。―と仰ったえらい猫がこの国にはいるそうだ。
 その猫がどれほどえらかったのか知らないが、僕は名前があるという一点においてのみ、そのえらい猫に勝っている。
  もっとも、その名前が気に入っているかどうかはまた別の話である。何故なら僕につけられた名前は僕の性別に合致していないこと甚だしいからだ。》

 
 こんな風に始まる有川浩の小説『旅猫リポート』は、猫のナナと主人公の青年サトルが日本を縦断の旅をするというロードムービー的な物語である。
旅猫リポート/文藝春秋
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 ある理由で、長年生活をともにしてきたサトルは、新たな飼い主を求めて、かつての友人のもとを訪ねてゆく。
 
 その度に甦る幼いころ、若かったころの友人と猫にまつわる思い出。

 行く先々で、猫や犬、動物たちとの出会いもある。

 語り手としての、猫と人の視点が交錯する中で

 しだいに明らかになるサトルの悲しい過去…


 空間の中の旅は、同時に時間の中の旅でもあるのだ。

 果たしてナナに安住の地は見つかるのか。

 そしてサトルが旅路の果てに見出したものは何か?

著者:有川浩 表題:旅猫リポート  出版社:文藝春秋 2012年11月刊

評価:☆☆☆☆ 80点


この物語の主人公の白猫は頭にハチの模様があります。そんな猫をかつて飼っていたことがありました。
それだけにそのストーリーは自然に心の中に入り込んできました。猫の視点と人の視点を交互に用いることにより、人の表面からは知りえない人物の心理、そして動物たちの心理を多面的に描き、奥行きを与えています。ストーリーがエンディングに近づくにつれ、なぜサトルとナナは別れなければいけないのか、なぜ北海道へ向かうのかも明らかになって、涙を禁じえない傑作です。 

80.堀江貴文・本そういち:ホリエ戦記 1

ホリエモンの本はほとんど新刊で買っているのだが、この本は盲点だった。

ビジネス書のコーナーばかりチェックしていると、この本は見えなくなる。

コミックになると大体出版社ごとになっていて、著者名とタイトルがわかっていてもかなり探すのは面倒だ。

コミックは大体出てすぐにコンビニか本屋の平積みのコーナーで買ってしまい、いちいち奥の書棚を探して回ることはめったにない。

この本も偶然BOOKOFFのコミックのコーナーで見かけてゲットしたものだ。

私は麻雀はやらない。殺伐とした勝負の世界に特に興味もない。

だが、この本は面白かった。九州の田舎から出てきたばかりの堀江青年の姿や生活ぶりが描かれている。

そう

これはボク堀江貴文が

一番ワクワクしてたころのお話です



東京での麻雀デビューは駒場寮から。

あの汚くて、前世紀の遺物のような駒場寮の一室から始まるのである。

そこで出会った大学生たちとの麻雀で、持ち前の勝負強さを発揮する。

さらに、寮の一室にある本格的な麻雀部屋で、さらなる強豪としのぎを削る。

さらに、アルバイトで出会った女の子とスキーに行こうと、寮の仲間と戦い資金の調達をもくろむホリエモンであったが…
ホリエ戦記 ホリエモン闘牌録 (1) (近代麻雀コミックス)/竹書房
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著者名:堀江貴文・本そういち 書名:ホリエ戦記 1 出版社:竹書房 2012年7月

評価:☆☆☆★ 70点

さわやか系の青年に美化されてしまってるものの、学生時代がリアルに描かれると、断然ホリエモンも身近に感じられます。学生時代、自分もこんな髪型、こんな服装してたなあと妙なノスタルジーも感じた作品でした。この後戦いが進むとわからないのですが、この1巻は麻雀を知っている人もそうでない人も楽しめるエンタメになっていると感じました。

最近2巻も出たようです。
ホリエ戦記 ホリエモン闘牌録 (2) (近代麻雀コミックス)/竹書房
¥680
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79.井上雄彦:リアル 12

変わりたい

バスケの経験値の不足を感じた戸川清春は、車椅子バスケを始めて1ヶ月ながらも進境著しい水島亮ともどもAキャンプに参加する。

しかし、キャプテンに選ばれながらも、そこでも最短距離を最速でという個の力の向上しか望まない清春は、チームの不和を招いてしまう…

Aキャンプのスタッフとして志願しながら、面接で落とされた安積久美は、新しい自分を目指し、再度の面接を申し込む。

他方、車椅子バスケという目標を見出し、リハビリに励むようになった高橋久信。その変化を目にした父親と母親は、しだいに家族のバラバラになった絆を取り戻してゆく。

そして、高橋とともにリハビリに励むプロレスラー白鳥

彼は試合まで二ヶ月しかない段階でまだ満足に歩けないのに、無謀にも復帰試合の予定を入れてしまう。

最初清春の片意地な心が受け入れなかったAキャンプコーチ、ジャック・ランドールの言葉。

-ひとりの力で頂点に立った人間はいまだかつていない

-楽しんでるか?バスケットボールを

さらにジャックのアシストをするスピードスター、ラリーとの交流の中、ついに戸川はチームメイトを前に…

REAL 12 (ヤングジャンプコミックス)/集英社
¥630
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著者名:井上雄彦 書名:リアル 12  出版社:集英社 2012年11月刊

評価:☆☆☆☆

上りのジェットコースターのようにゆるやかに複数の人物のリアルを積み重ねてきたこの作品も、 次第にテンションを上げ頂点に達し、それぞれの物語が勢いをつけて滑り出そうとする段階へ。戸川、高橋、安積、白鳥、その魂の声を要約する言葉、それが変わりたい。その中で、ただ一人変われないでいる野宮に未来はあるのか?

78.羽海野チカ:3月のライオン 8

若くして棋界の頂点に立つ宗谷名人に挑む桐山零

その大局と後の感想戦の中で、零は不思議な時間を過ごす。

沈黙の中、二人だけで過ぎてゆく

真っ白な心地よい時間

最後の指を見た零の仕草に応じるように

-そういうもんだよ。

と口にした宗谷の言葉…

帰郷のための列車が台風のため運休となり、二人で泊まる宿を手配する中、零はある隠された事実に気づく。そう宗谷名人はすでに…


他方、永世棋匠を賭けて、島田八段を迎えうつ柳原棋匠

一緒に戦ってきた仲間も いつしか

一人消え 二人消え……


年齢的な限界を感じ、孤独と重圧の中でも、戦う気概は衰えない。

ただお前が立っているのが焼野が原なのだとしたら

俺はまだ焼かれている真っ最中だ…


渾身の力を振り絞り、柳原棋匠が繰り出した一六玉の一手は

焼野が原を緑に変えるものだった。
3月のライオン 8 (ジェッツコミックス)/白泉社
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作者:羽海野チカ 表題:3月のライオン 8 出版社:白泉社 2012年12月刊

評価:☆☆☆☆★ 90点

この巻は筆力あふれる一巻です。若さと老い、二つの対極の中で、言葉にされない心の中の対話と風景が長く描かれます。読者も同時に疲れ果てるような壮絶な勝負の後には、下町の夏祭りに向けて、屋台のメニュー準備に励む三姉妹のほのぼのとした情景が描かれ、ディナーの後のデザートのような味わいを添えています。