前作は”姫新線&芸備線を全線走破”でしたが、その中で予告しました、姫新線沿線の街、兵庫県たつの市の街ブラを今作ではやってみたいと思います。
どちらかといえばガバッとした印象もある播州ですが(※出身者として)w、そんな播州のイメージとは異なるインスピレーションを感じるような、しっとりとした街が西播にあります
今作で歩く、たつの市です
同市の中心部、龍野町地区は『播州の小京都』とも呼ばれ、古い街並が残り、童謡「赤とんぼ」をつくった三木露風の出生地という事で、その情感豊かな歌詞とも相まって、播州らしからぬ(出身者なので遠慮ないですが^^笑)落ち着きを醸し出している街です。どんな街なのか?ではスタートです^
前作でもご覧頂きましたが、姫新線・本竜野駅で下車します
はじめに当別荘のお約束、「地名・駅名について」から一発いってみたいと思いますw
冒頭の通り、ここの自治体名は『たつの市』です。
一方、タイトルに書きましたように、旧市街地は『龍野』、
さらに駅名の漢字は↑の通り『竜野』です。なぜこのような事になっているのか?ですが・・
・まず『たつの市』ですが、平成大合併によって、本竜野駅周辺に元々あった”旧・龍野市”に、周辺の揖保郡3町が合併して生まれた新しい名です(※旧龍野市も元は揖保郡だった)
なので現在も、これから歩く旧市街の住所は「たつの市龍野町」です
・ならば、なぜ駅名が龍野でなく「竜野」になっているのか?.ですが、これは確たる資料がなく、諸説あるんですが不明だそうです・
・駅名についてさらに掘ってみますがw、姫新線の駅は↑の通り、「本」竜野駅となっています。なぜ「本」がわざわざ付いているかというと、ここから5km離れた山陽線に「竜野駅」もあるからです
山陽線の竜野駅は1889(明治22)年開業という超歴史ある駅で、この時点で姫新線は開通しておらず、”龍野への入口”という理由で命名されたようです。山陽線の竜野駅は長年、旧「揖保郡揖保川町」に位置し、旧龍野市ではなかったんです。
(※姫新線開通以前、網干~龍野間に「播電鉄道」という私鉄が存在していたんですが、これにまで言及すると街ブラの容量が無くなりますので(笑汗)本作では割愛します)
姫新線の本竜野駅が開業したのは、その後、1931(昭和6)年で、龍野の中心部に立地したので山陽線駅と区別するため「本」を付けた、という事のようです・
・で、平成大合併時に、旧揖保川町を含む揖保郡3町が旧龍野市に合併、それにより山陽線竜野駅も「たつの市」域内となって、開業100年余で初めて駅名と自治体名が一致したという凄い歴史を持つ駅です(笑)
そろそろ「街ブラはまだか」とお叱りがきそうなのでw、駅から歩いてみたいと思います^
近年改築され、なかなかお洒落なつくりの本竜野駅
↑旧市街はこんな感じの位置関係です(※駅前の掲示板)
今いる駅は↑図の左下、図まん中に流れるのが揖保川で、その対岸(※↑図右上側)がこれから歩く旧市街地です
駅前通りは、電柱が地下化されスッキリとした感じ
実は僕、龍野に親戚がいて小学校の頃来た事があるんですが、駅も含めて僕の記憶の中の面影はなく、様変わりしていました・
途中の堂本交差点からは電柱が登場し、同時に古い家並も増えてきます
そして、先程の地図の通り、揖保川の橋が見えてきます
兵庫県有数の大河、揖保川です。後で出てきますが、龍野特産のそうめん、『揖保乃糸』の名で有名ですよね・
揖保川といえば、2019年の作『姫路・網干街ブラ』でも登場しました。網干は、ここから約10km下流になります。ラストにリンクを貼っておきますのでご覧下さい(19.8.29up vol.320)
堤防沿いに、そうめんと共に龍野特産、『薄口醬油』の工場、ヒガシマル醬油があります
・そして、揖保川の対岸には~
橋を渡ると、いよいよ古い街並へと入ります
↑看板にもありますが、そのしっとりした雰囲気から”播州の小京都”とも呼ばれる街です^
古民家が並ぶ街並
但し近年再整備されたようで、江戸・明治期からの”本物”と、近年建てられた”古風”な建物が混在しています
勿論、民家だけでなく商店も多数営業していて、お土産を物色しながらの街ブラが楽しめますw
↑信用金庫も街並に合わせた建物になっています
国の伝統的建物保存地区にも指定されています
さらに歩いていきます^
見学スポットも何ヵ所かあります
瓦屋根と土塀が並ぶ街並に、柳がゆれる・・まさに小京都^^
先程揖保川でヒガシマルの工場がありましたが、龍野の醤油メーカーは最大手のヒガシマルだけでなく数社が現在も操業しています。
↑はカネヰ醤油さん
工場玄関の前には、↑”もろみ”の自販機がありました
自販機で製造直売のもろみを売ってるのは日本唯一だそうです^^
そんな龍野醤油の歴史を伝える建物が、街中にあります
古民家の街に突如現れる洋館、『醤油の里・大正ロマン館』です。
1924(大正13)年築、醤油同業組合として建てられました。当時の西播では珍しかった本格的洋館で、龍野の薄口醤油が関西料理に欠かせない調味料として、当時から隆盛を誇っていた歴史を物語っています
現在は観光と交流の拠点として、観光案内所や展示室等として活用されています(※国有形文化財)
別棟の売店には、そうめんと醤油が山積になってましたw
次は、ロマン館のすぐ近くの↑、古民家見学です。ここは~
「龍野といえばこの人」として有名な、童謡『赤とんぼ』をつくった、三木露風の生家です
それほど大きくはない平屋建ですが、沢山の部屋にわかれています
明治初期の建築と伝わるそうです。
庭園に面した廊下には↑、波打った感じの「昔のガラス」がはまっている戸が・
戦前、ガラスは高価で、しかも↑のような大きな全面ガラス戸はかなりの高級品だと思われます
住宅内には展示品も多数、露風直筆の原稿もあります
つづいては、露風家の前の坂を上ってすぐの~
龍野城跡へ行きます。龍野は城下町という顔も持っています。
現在「本物」が残っているのは石垣のみです。
門から石段を登ると~
御殿が再建されています。なお、天守はこの奥の山頂近くにありました。なお城門のうちいくつかは、近郊の寺に移築され現存しているとの事です。
内部見学できるとの事で、ちょっとおじゃまします^
1979(昭和54)年に再建されたものです。
天守は江戸初期に藩主だった京極家が転封になった際破却されたんですが、次に藩主になった脇坂家は天守を再建せず、この本丸御殿を本拠としたという事です。
さらに街の奥へ、すぐに山が迫ってきます。
↑山裾にある、龍野公園には・・
↑入口のところに、先程生家を訪ねた、三木露風の碑があります
露風の肖像、そして『赤とんぼ』の歌碑が、壁に並びます。
この碑に近づくと、自動で赤とんぼの歌が流れます♪
夕焼~け小焼け~の 赤とんぼ~
追われ~てみたの~は~ いつの~日か・・
・ご存じ、誰しも口ずさんだ事があるであろう童謡ですが、この、なんとも叙情的な歌詞が龍野の街の雰囲気とまさにマッチし、いわば龍野のテーマソングともなっていますね・
↑は前作でも掲載した姫新線DC(※兵庫県区間)ですが、ドア横にはしっかり赤とんぼが飛んでいます^^
龍野公園から、坂を下って再び街中へ
この坂の途中にある、料亭旅館「梅玉」さん
この旅館の庭園内に、龍野の名物の一つで全国唯一という”片しぼ竹”という竹が自生しています。見学しようとおじゃましたんですが・・
この奥か・・
しかし残念ながら、↑の通り『裏山からイノシシが出る恐れがある』との事で、庭園へ通じる入口は閉鎖中でした
・この「片しぼ竹」、真竹の一種なんですが、竹って「節」がありますよね、その節目の「一つおき」に、シワのある節とない節が交互にみられるという、全国でここにしかない珍種の竹です
(※国天然記念物指定)
時間不足で見学できてないんですが、ヒガシマルが運営する『うすくち醤油資料館』もあります
資料館があるのは↑、本物の醤油蔵の中。この蔵そのものも江戸末期築の貴重なもので、国有形文化財です。
古い街なので、勿論寺院も多数あります。一つだけですが紹介しておきます。↑如来寺です(※西山浄土宗)
「西山浄土宗」、元々は浄土宗の一派ですが、明治期以降は独立性をやや強め、現在は京都府長岡京市の光明寺を本山としているとの事です・
同寺には、釈迦入滅を描いた涅槃図が伝わるとの事。1651(慶安4)年との作者の墨書が添えられ、作成年がハッキリ分かる図画として大変貴重との事です。
(※たつの市指定文化財)
鐘楼等の諸堂の奥に、本堂が建ちます
本堂の正面にドーンと説明版があるのが面白い^
1533(天文2)年の開基で、市内の別の場所にあった寺が15世紀、戦乱のため焼失、その際に本尊のみ近くの池に沈め、難を逃れたとの事。後年その本尊(阿弥陀如来)を現在地に祀ったのが同寺の始まりとの事です。
↑の山号額「松籠山」は、京都・宝鏡寺門跡から贈られたとの事。
時間がきました、再び揖保川を渡り、本竜野駅へ戻ります
龍野で醤油やそうめんが特産になっているのは、言わずもがな、この揖保川の存在のおかげといっていいと思います。
水質が適していた事に加え、鉄道や国道が整備される以前の江戸期や明治期は、この揖保川を使った水運で、製品が全国へ運ばれました。姫新線開通後は鉄道で、そして現在では山陽自動車道の竜野ICから全国へ、いまや全国ブランドとなった『揖保乃糸』や、関西に限らず世界中にファンも多い薄口醤油が出荷されています
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姫新線で、薄暮の龍野をあとにします
いかがでしたでしょうか、前作でスッと通過した龍野の街、ご覧頂いた通り、まさに播州の小京都の名に恥じない美しい街です。数々の歴史も秘め、そして現在は名産品を武器に、そして街おこしにも余念がない元気な街です。姫新線も姫路~播磨新宮間は約30分ヘッドの運転とローカル線にしては便利です。コロナ収束後、是非訪ねてみて下さい
☆関連作(※揖保川つながりという事で)
vol.320 山電網干線&網干の街ブラ(19.8.29up)
vol.320 関東風?の新車!山電網干線 &港町・網干街ブラ (鉄分・街ブラ半々) | 旅ブログ Wo’s別荘 (ameblo.jp)
・なお、次作からの予告ですが、当別荘久々の【大型シリーズ】(笑)、題して『大峠を行く』が始まりますw
この大タイトルのもとw、その中での「第1章」~「第?章」まで、場面を変えつつ展開していく空前のシリーズとしていく予定です(なんじゃそりゃ?w)
はたしてそんな大それた内容になるのか?あるいは大風呂敷なのか?(笑)、次作以降をお楽しみに^^