2023年に通年で、1987〜1993年の間に運転開始されたドイツ・オーストリアを走るユーロシティの歴史を振り返りました。その参考にしたのが、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenというドイツ語本であり、この続編がDie EuroCity-Zuege: Teil 2: 1993 bis 2020 として出版されています。そのため、引き続き私の後学、備忘を兼ねて原文訳を補足しながらまとめていきます。位置づけは前回に続き第2編となります。

 

第2編の2回目は、キレスベルク号ユトリベルク号の2列車をあわせて取り上げます。

EC Killesberg und Uetliberg

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 

(以下本文を参照に日本語訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

キレスベルク:海抜417メートル、フォイエルバッハー・ハイデの最高峰。シュトゥットガルト市中心部の北に位置し、同名の地区名にもなっている。

 

ユトリベルク:海抜870メートル、チューリヒ市の南西に位置する山。地元の憩いの場として親しまれている。

 

「灰色のネズミ」と呼ばれたSBB-RAe電車による運用について、

1992年夏ダイヤ EC33(シザルパン号/ジュネーブ→ミラノ)、EC34(ルテチア号/ミラノ→ジュネーブ) ・・・機関車牽引の客車列車に変更

1993年夏ダイヤ EC50/51(マンゾーニ号/チューリッヒ〜ミラノ間)・・・廃止

※ともに、機関車牽引列車の方が需要の変動に柔軟に対応できるためである。

そのうえで、残ったSBB-RAe電車による列車は残るEC57/58 ゴッタルド号(列車番号はTEE時代と同様)に加えて、1993年5月23日から、チューリッヒ~シュトゥットガルト間に、EC154/155 キレスベルク号および、EC158/159 ユトリベルグ号として新たな活躍の場を与えられている。1987年から1989年にかけて、ユーロシティ列車 シュヴァーベンラント号、バルバロッサ号、ヘルマン・ヘッセ号による「ユーロシティ導入の試み」の失敗に続き、SBBとDBは、シュトゥットガルトとチューリッヒ間を所要時間3時間以内で接続することを目的に、新たな試みを開始した。

 

EC155 キレスベルク号は土曜日を除く毎日運行。シュトゥットガルト中央駅6時56分発でドイツ国内の途中停車駅はベ―ブリンゲン、タールハウゼン(運転停車)、ロットヴァイル、ジンゲン(8:48着、方向転換して8:54発)を経てスイスに入国。シャフハウゼン、ヴィンタートゥールに停車し、チューリッヒ中央駅着8:50。そこで2分短時間停車後、終着チューリッヒ空港駅着10:01。この電車列車は回送としてチューリッヒ中央駅に戻り、ユーロシティ ゴッタルド号(EC 57/58)としてミラノに向けて出発する。その後の運用だが、翌日には、EC158/159 ユトリベルグ号、翌々日にはEC154 キレスベルク号(チューリッヒ空港→シュトゥットガルト)の運用についていた(土曜日除く)。前述のダイヤから分かる通り、シュトゥットガルト中央駅とチューリッヒ中央駅間の所要時間3時間以内という目標は、ほぼ達成されたことになる。キレスベルク号はチューリッヒ空港発着の総距離256キロを走行し、所要時間は3時間4分または3時間5分、表定速度は83km/hだった。1994年5月29日の夏ダイヤ開始以降、ユーロシティ キレスベルク号の始発・終点がチューリッヒ中央駅に変更。列車番号もあわせて変更される(EC184:土曜日除く毎日運転:チューリッヒ中央駅発18:11→シュトゥットガルト中央駅着21:00/EC185:土曜日除く毎日運転:シュトゥットガルト中央駅発6:56→チューリッヒ中央駅着9:50)。

 

ユトリベルク号は、キレスベルク号とほぼ同じ時間に反対駅から出発する時刻表となっていた: EC158はチューリッヒ中央駅発6:30で、シャフハウゼン、ジンゲン、ロットヴァイル、ベーブリンゲンに停車し終点シュトゥットガルト中央駅着9:13(所要時間2時間43分、表定時速88km/h)。シュトゥットガルト・ローゼンシュタイン車両基地で長時間停泊後、EC159として、シュトゥットガルト中央駅発16:52、EC158の途中停車駅に加えてヴィンタートゥールにも停車し、チューリッヒ中央駅19:50着/19:52発で終点のチューリッヒ空港着20:02。1994年夏ダイヤから、EC159はチューリッヒ空港には乗り入れず、チューリッヒ中央駅終着となる。

 

残念なことに、Gäubahn経由でユーロシティを継続運行したい思惑は短期間のうちに再び失敗に終わる。チューリッヒ〜シュトゥットガルト間のRAe電車による運行は、度重なる技術的問題(車軸のひび割れ)の影響で1994年8月初旬(8月4日という記事ありに終了。その後、SBBはエアコン付ユーロシティ客車3両編成を提供し、DB-110型電気機関車とSBB-Re 4/4 II型電気機関車が牽引担当していたが、 1995年5月27日をもってユーロシティのキレスベルク号ユトリベルク号ともに廃止。

 

(以下は、キレスベルク号、ユトリベルク号関連情報として、本文内容をまとめます)

 

この路線における「長距離列車の惨事」は今後も続くだろう: DBの車体傾斜式列車、チザルピーノ電車、DBのIC2ダブルデッカー客車が(さまざまな恥ずかしい理由で)生まれては消えていくだろう。2020年の時点から見ると、唯一変わらないのは機関車牽引のSBB客車列車で、その前方にはÖBB-1016型電気機関車(タウルス)、さらにはドイツ区間では技術的理由からÖBB-1116型電気機関車も登場し、見る者の目を楽しませてくれるだろう。SBB展望車は、車両ローテーションの際に一時的に1等車として使用されることもある。

 

最後に、「灰色のネズミ(=SBB-RAe電車)」に話を戻そう:パリ〜ローザンヌ間のTGV列車からベルンへの接続列車としてベルン〜フラーヌ間で運転されたIC420/423とIC426/427はSBB-RAe電車が使用されていたが、 1999年11月27日にその生涯を終えた。 最古の4編成は、生涯走行距離が約600万キロを走破していた。幸いなことに、その編成内のRae 1053号機は(ほぼ)当時と同じ状態で動態保存されている。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1993〜94年冬ダイヤ 

スイスのRAe TEEII型電車列車

オープン座席車(1等、2等)、食堂車・バー、電動車

電車列車のため途中増解結なし

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Züge: Teil 2 1994-2020 /Jean-Pierre Malaspina, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)