Trans Europ Express(TEE)を、当時のトーマス・クック鉄道時刻表の紙面から振り返る企画です。
今回は25回目は、ゴッタルド(Gottardo)号です。私的な話ですが、小学生、中学生の頃に鉄道図鑑内で紹介された国際列車で一番印象に残っているのが、このゴッタルド号でした!!
列車名の由来は?
この列車が通過するゴッタルドトンネルの上に存在する標高2108mの「ゴッタルド峠」にちなんだ列車名です。
ゴッタルドトンネル貫通したものの、トンネルに至るまでに急勾配が連続するという厳しい地形でした。そのため、この区間のTEE列車に電車列車が抜擢されたのは、出力不足になるディーゼル列車ではなかったことは必然だったと言えます。
運行されていた国
スイス、イタリア
運転時期と区間
1961年7月1日~
チューリッヒ~ルガーノ~ミラノ中央駅
1965年5月30日~
バーゼル~チューリッヒ~ルガーノ~ミラノ中央駅
1969年6月1日~
南行 バーゼル~チューリッヒ~ルガーノ~ミラノ中央駅
北行 ミラノ中央駅~ルガーノ~チューリッヒ
1974年5月26日~
南行 バーゼル~チューリッヒ~ルガーノ~ミラノ中央駅~ジェノバ・ブリニョーレ駅
北行 ミラノ中央駅~ルガーノ~チューリッヒ
※ジェノバへは夏期期間のみ
1979年5月27日~
バーゼル~チューリッヒ~ルガーノ~ミラノ中央駅~ジェノバ・ピアッツァ・プリンチペ駅
※ジェノバへの運転は1979年9月29日まで
1982年5月23日~
チューリッヒ~ルガーノ~ミラノ中央駅
1987年5月31日~1988年9月24日
南行 チューリッヒ(空港)~ルガーノ~ミラノ中央駅
北行 ミラノ中央駅~ルガーノ~チューリッヒ(中央駅)
その後、ユーロシティーに格下げ
使用された車両、編成
電車
【スイス】
RAe TEE II 型電車
運転開始当初からユーロシティーに切り替わる晩年まで、一貫して使用されました。

maurizio messa, CC BY-SA 2.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.0>, via Wikimedia Commons
固定編成で5両(1966年10月より6両)で構成されており、うち1両は電源電動車と呼ばれる座席のない編成が含まれていました。この電車ですが、これまでの編成にあったコンパートメント席はなく、開放席と食堂・ミニバー車(運営はSSG)で構成されていました。写真をみましたが、前述の電源電動車に厨房があるようで、1両まるまる座席につかうという贅沢さ。食堂は間接照明方式だったようで、相当オシャレな内装だったようです。
このRAe TEEII型電車は、エーデルヴァイス号にて、当時の最先端の技術を投入して4電源方式仕様の電車として紹介しましたが、その他にもアルプス山脈越えを想定した仕様で製造されました。スイス・イタリアの異なる電化方式、かつゴッタルドトンネルとその前後の急勾配を安定した出力で走破できる性能は、1961年運転開始当初からいかんなく発揮されたようです。
実際の時刻表紙面
1969年夏ダイヤ
89列車 バーゼル発7:37 → ミラノ中央駅着13:37
90列車 ミラノ中央駅発18:00 → チューリヒ中央駅着20:56
※ミラノ発着時刻について。イタリアのみ夏時間(スイスの+1)
1969年夏ダイヤから、従来南北方向ともにバーゼルまで足を延ばしていたのが、北行のみ途中のチューリヒで運転打ち切りになるダイヤに変更されています。
このチューリヒ打ち切りの背景ですが、この電車の基地がチューリヒにあることが一因になります。バーゼル発着時代は深夜バーゼル→チューリヒ、早朝チューリヒ→バーゼルと回送運転を行っていましたが、深夜のチューリヒ→バーゼル間の乗車率の低さが、空気を運ぶ「非効率」な回送運転と判断された結果のようです。
Cook Continental Timetable August 1969 より
1974年夏ダイヤ
89列車 バーゼル発7:37 → ジェノバ・ブリニョーレ駅着15:20
90列車 ジェノバ・ブリニョーレ駅発16:17 → チューリヒ中央駅着20:56
※ジェノバ発着時刻について。イタリアのみ夏時間(スイスの+1)
夏限定ながら、港町ジェノバへの乗り入れを果たした頃のダイヤです。ジェノバでは、ピアッツァ・プリンチペ(PP)駅、ブリニョーレ駅の2駅に停車していました。
Cook Continental Timetable June 1974 より
1980年秋ダイヤ
59列車 バーゼル発7:38 → ミラノ中央駅着12:40
58列車 ミラノ中央駅発16:55 → チューリヒ中央駅着21:03
※上記は9月28日以降の時刻(夏時間終了後のため、スイスとイタリアの時差なし)
この頃は、ベリンツォーナ駅が停車駅に加わっています(いつからかは調査中)。
また南行のバーゼル〜チューリヒ間の運行は平日のみに変わっています。
最後に時刻の掲載はないものの、ジェノバへの乗り入れは1980年夏には行わないという記事について。この時刻表自体は1980年秋のものなので「?」ですが、おそらく1980年1月号の記事には【夏に運転】とあり、何らかの事情でジェノバへの運転が取りやめになった影響で、一部の運転を期待していた旅行者への配慮だと思います。
ThomasCook International Timetable September 1980 より
1984〜85年冬ダイヤ
59列車 チューリヒ発8:39 → ミラノ中央駅着12:40
58列車 ミラノ中央駅発16:50 → チューリヒ中央駅着20:53
晩年はかつて登場時と同じ運転区間であるチューリヒ〜ミラノ間で運行されています。
ThomasCook Continental Timetable January 1985 より
1988年夏ダイヤ
57列車 チューリヒ空港駅発14:18 → ミラノ中央駅着 18:25
58列車 ミラノ中央駅発19:30 → チューリヒ中央駅着 23:24
1987年5月からは、南行の始発駅が、従来のチューリヒ中央駅から、チューリヒ空港駅に変更されています。航空便との連携が時代の変化を感じさせる記事です。
また、この南行の出発時刻も従来の午前中発が、午後出発になった点もこの列車の役割が大きく変わったことを物語っています。
また、このチューリヒ空港発に変わった時点で、ヨーロッパ唯一のTEEになっていました。そして最後に、記事の通り、1988年9月25日から2等車連結のユーロシティーに変わります。
ThomasCook European Timetable 88年夏号(日本語解説版)より
今回は以上です。
参考資料:
・Cook Continental Timetable August 1969 ほか
・写真で楽しむ世界の鉄道 ヨーロッパ1,2,3 交友社 1959、1960、1965
・Das Grosse TEE-Buch 40 Jahre Trans-Europ-Express /Jörg Hajt/HEEL 1997年
・カラーバックス 世界の鉄道 国際特急 植田信行監修 徳間書店 1978年
参考サイト:TEE、ゴッタルド (列車)(ともにWikipedia)
ページ内写真:Flickr の各リンク
カバー画像:Deutsche Bahn AG, converted by , Public domain, via Wikimedia Commons