1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、44回目は、メルクール号を取り上げます。なおTEE列車時代についてはこちらでもまとめております。よろしければご覧ください。

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

メルクリウス(マーキュリー)はローマ神話の神。その名はラテン語の "merx"(商品)に由来する。水星は「神々の使い」とされ、商人と泥棒の神であった。

 

メルクール号という名前は、フランクフルトとコペンハーゲンを結ぶユーロシティ列車に使われる以前から、ドイツの長距離列車において最も伝統的な名前のひとつだった。1987年以前にも、ドイツ連邦鉄道(以下、DB)の長距離列車として、ローマ神話の神々の使者であり、交易の神であるメルクールの名を冠していた。メルクール号の愛称は、1952年5月18日、フランクフルト中央駅発ハンブルク・アルトナ駅行の特急列車(F3/4)に初めて使用された。 1968/69年ダイヤではD336/337(シュトットガルト中央駅〜ハンブルク・アルトナ駅)として運行され、その後、F130/131またはF136/137として運行された後、1971/72年冬ダイヤから、メルクール号はDBが新設したIC-71ネットワークに組み込まれた。これ以降、インターシティ/TEEでメルクール号の名を持つ列車は以下の通りで運行された: 

  • 1971年9月26日〜1974年5月25日:IC114/115 ミュンヘン中央駅〜ハンブルク・アルトナ駅
  • 1974年5月26日〜1978年5月27日:TEE34/35 シュトットガルト中央駅〜コペンハーゲン
  • 1978年5月28日〜1979年5月26日:IC134/135 シュトットガルト中央駅〜コペンハーゲン(メルクール号は「毎時、各クラス」という新しい「IC-79」コンセプト開始前年に、その開始を見越して運行された、DB最初の2等車連結インターシティの1つである)。
  • 1979年5月27日〜1984年6月2日:IC132/133 カールスルーエ中央駅〜コペンハーゲン(IC133は1981年夏ダイヤからは、フライブルク・イム・ブライスガウ発で運行)
  • 1984年6月3日〜1985年6月1日:IC102/103 フライブルク・イム・ブライスガウ〜コペンハーゲン〜カールスルーエ
  • 1985年6月2日〜1986年5月31日:IC130/131 フランクフルト〜コペンハーゲン
  • 1986年6月1日〜1987年5月30日:IC30/31 フランクフルト〜コペンハーゲン

1987年5月31日、EC30 メルクール号はコペンハーゲン中央駅発9:20に4両のドイツ国鉄客車編成(ロービュまでしか走らないDSB(デンマーク国鉄)の増結客車を含む)として運行開始し、ネストヴェズ、ニュークビンを経由してデンマーク側フェリー乗り場となるロービュ着11:20(プットガルデン行のフェリーはわずか10分後に出発)。ドイツ側のプットガルデン着12:35で、直後にプットガルデン〜フランクフルト間の客車を増結、DB-218型ディーゼル機関車の重連牽引でプットガルデン発12:54。途中リューベックに停車した後、ハンブルク中央駅着14:26。ここで大規模な入替え作業が行われる: メルクール号はここで進行方向を変えつつ、数分前にハンブルク・アルトナ駅(14:24発)を発車した区間運転列車(EC1030)と接続した後、DB-103型電気機関車に牽引され、ハンブルク中央駅発14:52で旅を続ける。ブレーメン、オスナブリュック、ミュンスター、ドルトムント、ボーフム、エッセン、デュイスブルク、デュッセルドルフ、ケルン、ボン、コブレンツ、ヴィースバーデン(2度目の方向転換)を経由し、終着のフランクフルト中央駅着21:10(対向列車:EC31 フランクフルト発8:49→ハンブルク中央駅15:06着/15:33発、コペンハーゲン着20:45)。つまり、フランクフルト〜コペンハーゲン間の1057キロは、89km/hの表定速度で移動した。興味深いことに、メルクール号は頭端駅のヴィースバーデン中央駅に乗り入れた数少ない長距離ユーロシティ/インターシティ列車だ。

 

1989年5月28日からは、メルクール号はプットガルデンとリューベックの間のオルデンブルク(ホルシュタイン州)にも途中停車するようになった。メルクール号1991年6月2日からは、ハンブルク中央駅〜コペンハーゲン間に運転区間が短縮され、新しい列車番号であるEC 192/193と、新しい列車名カレン・ブリクセン号と改称された。これはDBが、ユーロシティにはヨーロッパ諸国の有名人名を優先的に使用するというUIC(国際鉄道連合)の要請に従った型だ。
 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1987年夏ダイヤ 

1等コンパートメント車、1・2等の半室コンパートメント車、1等・2等オープン座席車、食堂車なし、ロービュでデンマーク国鉄編成を増解結。西ドイツ、デンマークの車両。

 

今回は以上です。

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)