1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、52回目は、カレン・ブリクセン号を取り上げます。

EC Karen Blixen

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

カレン・ブリクセン、正確にはカレン・クリステンス・フォン・ブリクセン=フィネッケ(1885~1962)、デンマークの作家。

 

1991年6月1日に最後の運行を行ったEC 30/31 メルクール号は、翌日(=1991年6月2日)、新しい名称 カレン・ブリクセン号として、運転区間をハンブルク - コペンハーゲン間に短縮され、列車番号 EC 192/193に引き継がれた。メルクール号と比較すると、カレン・ブリクセン号はコペンハーゲン方面に1時間繰り下げ、ハンブルク方面に1時間繰り上げされたダイヤになった。EC 193はコペンハーゲン発9:20で、ハンブルク中央駅着14:31。このDB(ドイツ鉄道)客車編成列車は、EC 194としてハンブルク中央駅発17:11、コペンハーゲン着22:20で帰路につく。このルートでの他のユーロシティと同様、デンマークではホイェ・ターストラップ、ネストヴェズ、ニュークビン、ロービュに途中停車し、ドイツでは海峡幅18kmのフェーマルン・ベルト海峡をフェリーで横断した後、プットガルデン、オルデンブルク、リューベックに停車。逆方向のEC 192はハンブルク中央駅発15:11で、デンマークの首都に20:20到着。つまり、所要時間(このルートの他のユーロシティと同様)は5時間9分または5時間11分(表定速度:69km/hまたは68km/h)である。

※ブログ筆者注釈:ダイヤの繰り上げ、繰り下げについて当時のThomasCookEuropean Timetableを見る限りそのような繰り上げ(下げ)は行われていないので、どの部分を見た指摘なのかは現時点では不明。ちなみにこの年のサマータイム適用は1991年5月24日のようなので、その点を指摘しているのかも知れない

 

1992年5月31日からハンブルク - コペンハーゲン間のユーロシティーが7往復に増発されるのに伴い、カレン・ブリクセン号には新しい列車番号EC 190/191を与えられた。 ハンブルク - コペンハーゲン間の編成はEC 192/193 ハムレット号と、ハンブルク - プットガルデン間はEC 184/185との共通運用となった。 1993年5月23日から、EC 192/193 ハムレット号との共通運用編成は、デンマークのIC3ディーゼル列車化された最初の2列車(ハムレット号カレン・ブリクセン号)のうちのひとつとなった。乗客の需要が見込まれるため、カレン・ブリクセン号はハンブルク-コペンハーゲン間の2ユニット(6両編成)で運転され、追加の1ユニットはハンブルク - プットガルデン間に限定で連結された。この場合、EC 190の所要時間は5時間01分に短縮された。変化ほど不変なものはなく、1994年5月29日からカレン・ブリクセン号はEC  186/187に改番され、再び機関車牽引のDB客車による運転となった。1996年夏ダイヤでは、ベルリン・リヒテンベルク駅からコペンハーゲンへ向かう2両編成の客車(IR 2134/2135 ネプチューン号)も併結した。こうして生まれたドイツとデンマークの首都間の直通列車は、残念ながらその後の数年間で運行されなくなる。

 

1997年9月28日以降、ユーロシティの全列車がIC3ディーゼル列車化され、運行ダイヤも再び変更された。EC 186はハンブルク中央駅発17:30で、コペンハーゲン着21:57し、EC 187はコペンハーゲン発10:55で、ハンブルク中央駅着15:24。同時に、フェリー会社「スカンドラインズ」は、より効率的で高速な新型フェリー「ドイッチュラント」、「プリンツ・リヒャルト」、「プリンセッセ・ベネディクテ」、「シュレスヴィヒ・ホルシュタイン」をフェーマルン・ベルト海峡で運開始した。続いて2つのフェリー乗り場の改修で、全ルートの所要時間をさらに短縮した。 EC 186/187の所要時間は、それぞれ4時間27分と4時間29分となり、表定速度は(ほぼ)80km/hに達した。EC 187/186の1日での往復運用にはIC3ディーゼル列車が1ユニットあれば十分で、その後、1997年10月19日までと、1997年12月19日から1998年1月4日までは1ユニット、1998年4月9日以降は2ユニットで運行された。

 

1998年5月24日より、カレン・ブリクセン号はEC 36/37となる。EC 37はハンブルク中央駅発17:37で、コペンハーゲン着21:59。つまり、全ルートで4時間22分と時間を短縮、巡行速度も81km/hに向上。またIC3ディーゼル列車による1日往復と、(ハンブルグ〜プットガルデン間の)1ユニットの増結は1998年夏と同年クリスマス休暇にも行われ、EC 34/35 ベルテル・トーヴァルセン号とEC 38/39 ハムレット号と共通運用が行われた。1999年6月19日から8月30日までの夏ダイヤ期間中、EC 36/37は再び2ユニット(6両編成)で運行され、ハムレット号、ベルテル・トーヴァルセン号と共通運用が行われた。ただし、EC 36のダイヤは1時間繰り下げられた(コペンハーゲン発11:55、ハンブルク発16:16)。所要時間を8分短縮することで、表定速度81km/hが南行きでも実現した。需要の多い時間帯に2ユニットで運用するEC 36/37は、2000/2001年ダイヤでも維持される。

 

オーレスン・リンク開通に伴い、EC 37は2000年7月2日からコペンハーゲンからマルメ(22:40着)まで延長。同列車は翌日、EC 38 ハムレット号(マルメ発7:03、ハンブルク中央駅着12:15)として帰着する。2001年夏ダイヤ以降、EC 37のハンブルク到着時刻は17:28に繰り下げられ、401kmのルートで表定速度77km/hとなった。2002年12月15日以降、ハンブルク - コペンハーゲン間を運行するユーロシティの全列車から列車名がなくなった。ただし、EC 36/37はこのダイヤ改正後も列車番号と時刻表の位置は維持されつつ、EC  37のマルメ延長運転は取りやめとなった。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1996年夏ダイヤ 

1等・2等のコンパートメント車、1・2等合造コンパートメント車、2等オープン座席車、食堂車なし、ロービュ(デンマーク国鉄)とプットガルデン(ネプチューン号)で増解結。ドイツとデンマークの車両。

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)