1987年からTEEの後継としてはじまったユーロシティの歴史を振り返っていく企画を立ち上げました。ドイツから取り寄せた、Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegendenの翻訳を通じて、ユーロシティーの一端を知る、文字通り「備忘録」としたいと思います。

 

まとめの対象ですが、前述の書籍内では1987〜1993年の間に運転開始されたユーロシティを扱っており、その中の列車名ごとに歴史や仕様がまとめられているページとします。書籍の紹介順に倣って、39回目は、ベーラ・バルトークを取り上げます。

EC Béla Bartók

(この写真が参考文献に掲載されているわけではありません)

 
 

(以下原文訳、一部表現、短縮名称等をブログ筆者で補足)

ベーラ・バルトーク(ハンガリー語だとバルトーク・ベラ、1881年〜1945年)は、ハンガリーの作曲家、ピアニスト、民族音楽研究家

 

1991年6月2日から、EC62/63 ベーラ・バルトーク(または、バルトーク・ベラ)号が、既存のレハール号フランツ・リスト号に続くハンガリー発着のユーロシティ長距離列車として登場した。EC62はブダペスト東駅発12:30、ハンガリー国鉄(以下、MÁV)内のギュールと国境駅ヘジェシュハロムに途中停車。そこで15分間の機関車交換と国境検査のための停車後、列車はブルック・アン・デア・ライタ経由でウィーン西駅着15:50。その後フランクフルト所属のDB-103型電気機関車に伴われて16:00発で旅を続け、EC62はザンクト・ペルテン、リンツ、ザルツブルクを経由して終点のミュンヘン中央駅着20:36。739kmの旅は8時間06分、表定速度は91km/hに相当する。対向列車EC63はミュンヘン中央駅発9:25、EC 62と同じの途中停車駅とウィーン西駅での方向転換と機関車交換を実施。ウィーン・ヒュッテルドルフ駅にも途中停車(14:05着、14:20発)後、17:38にブダペストへ戻る。ベーラ・バルトーク号での使用客車は、DB(1等車Avmz2両)とMÁV(食堂車、2等車5両)が提供。

 

1994年5月29日ベーラ・バルトーク号の連続的な変化が始まる: ドイツ側では、EC62/63がミュンヘン中央駅を越えてシュトゥットガルト中央駅まで延長運転され、MÁV客車のみの編成となり、南ドイツの路線に新たな彩りを添えた。EC62はダイヤを維持し、ヘジェシュハロムでの機関車交換を避けるため、ブダペスト(12:25発、1994年9月25日からは12:30発)〜ウィーン間はÖBB-1014型複電圧電気機関車による連続運転となった。ウィーン 〜ミュンヘン間はÖBB-1044型電気機関車が牽引担当し、ミュンヘン〜シュツットガルト間の最終区間はDB-103型電気機関車が担当し、ミュンヘン・パーシング駅、アウクスブルク、ウルム、プロヒンゲンに途中停車後、シュトットガルト着23:11。対向のEC63は、シュトゥットガルト中央駅発6:00、ミュンヘン中央駅(8:12着、8:25発)とウィーン西駅(13:05着、13:20発)で2回の方向転換、機関車交換を経て、ブダペスト東駅着16:43(1995年註:本文には右記の通りだが、文章の流れだと1994年だと推察9月25日から16:38着)となった。このため、EC62/63の表定速度は双方とも91km/hとなる。

 

次の1995/1996ダイヤ改正(1995年5月28日実施)では、所要時間が大幅に短縮され、EC62(ブダペスト発12:37→シュトゥットガルト着22:50)は10時間13分、EC63(シュトゥットガルト発6:00→ブダペスト着16:23)は10時間23分、その結果、表定速度は96km/hと94km/hと大幅に上昇。1996年6月2日より、ベーラ・バルトーク号はドイツ区間でさらに延長運転された結果、シュトゥットガルトからハイデルベルク、マンハイムを経てフランクフルト中央駅までの運行となった(EC62 ブダペスト発12:27→フランクフルト着0:44/EC63 フランクフルト中央駅発5:30→ブダペスト着17:35))。

 

しかし、それだけではありません。1997年6月1日からは、DBの客車とMÁVの食堂車を連結したベーラ・バルトーク号が、人口においてハンガリー第二の都市デブレツェンまでハンガリー区間を延長運転(EC62 デブレツェン発9:05)。ブダペストまでは、ミシュコルツ・ティサ駅のみの途中停車(320kmの迂回区間)。ブダペスト・ケレティ駅、ウィーン西駅、ミュンヘン中央駅、シュトゥットガルト中央駅の4駅で方向転換と機関車交換を行い(かつてのダイヤ位置で運行)、翌日0:44に終点フランクフルトに到着。対向列車EC63はフランクフルト中央駅発5:30、シュトゥットガルト中央駅(7:03着、7:10発)、ミュンヘン中央駅(9:15着、9:25発)、ウィーン西駅(14:18着、14:35発)、ブダペスト東駅(17:14着、17:30発)で方向転換、デブレツェン着20:52。所要時間15時間22分/15時間39分、表定速度97km/h/95km/h、運転距離1,486キロの旅に何人乗客がいたかは、残念ながら記録されていないがその数は管理しやすいものであったに違いない......。デブレツェン〜ブダペスト間の需要を高めるため、ニュレジュハーザ、トカイ、セレンチュ・ティザ駅、フゼサボニーに途中停車するようになり、その1年後にはこれらの駅間の所要時間が大幅に延びている。EC62はデブレツェン発8:40、EC63はデブレツェン着21:14。

 

1999年5月30日からは、EC62/63 ベーラ・バルトーク号はMÁV車両に戻され、再びドイツ区間の発着駅はミュンヘン中央駅に短縮されてた(EC62:デブレツェン発8:53→ブダペスト東駅着12:27、同駅発12:42、ウィーン西駅着15:30、同駅発15:45、ミュンヘン中央駅着20:36、対向列車EC 63:ミュンヘン発9:25→デブレツェン着21:12)。2001年6月10日ベーラ・バルトーク号のブダペスト〜デブレツェン間の延長運転も終了し、EC62/63は1991年当時に戻ることになった。所要時間はそれぞれ7時間46分(EC62:ブダペスト発12:50→ミュンヘン着20:36)、7時間48分(ミュンヘン発9:25→ブダペスト着17:13)と、初年度に比べて大幅に短縮され、表定速度94km/hに対応した。

 

2002年12月15日からミュンヘン - ウィーン間が運転区間が短縮され、この所要時間はさらに改善された。現在、ÖBB-1116形電気機関車が牽引し、ÖBB車両で構成されるユーロシティ ベーラ・バルトーク号は、この時点でそれぞれの所要時間は7時間24分と7時間32分しかかかっていない(EC62:ブダペスト発13:10→ミュンヘン着20:34、対向列車のEC63:ミュンヘン発9:26→ブダペスト発16:58)。つまり、表定速度99km/hのEC62は、100km/h制限にギリギリ間に合ったことになる。翌年(2003年冬)には、ウィーン以西のÖBB-1116型電気機関車をDB-101型電気機関車に置き換えられ、食堂車はÖBBからMÁVに移管された。ブダペストではEC62/63が再びブダペスト東駅発着となった。他の多くのユーロシティ列車と同様に、EC62/63は2004年12月12日から名前を失ったが、2007〜8年冬ダイヤ改正まで走り続け、その後は真新しいレイルジェットがミュンヘン〜ウィーン間の最初の接続を引き継ぎました。以下が2007年12月9日からの時刻表の一例: 

 

EC62:ブダペスト東駅発13:10→ウィーン西駅16:08発/16:22着→ミュンヘン中央駅着20:34(表定速度100km/h)

 

EC 63:ミュンヘン中央駅発9:27→ウィーン西駅13:38発/13:52着→ブダペスト東駅着16:53(表定速度99km/h)

 

ただし、2007年12月9日からEC44/45(EC44:ブダペスト東駅発17:10、ウィーン西駅着20:08、EC45:ウィーン西駅発15:52、ブダペスト東駅着発18:53)に移籍するため、この間ベーラ・バルトーク号の名前を使われないままではない。新生ベーラ・バルトーク号は、MÁV-470型電気機関車とMÁV客車5両(食堂車含む)で構成されていた。EC42/43 フランツ・リスト号、EC46/47 センメルヴェイス・イグナーツ号とは2日往復で共通運用。2008年9月14日より、EC42/43(←こちらは誤りと推察。正しくはEC44/45)はEC942/943に改番され、運行経路も変更された。EC943はウィーン発9:50、ブダペスト着12:49、EC942は変更なし。2009年12月13日、ブダペスト〜ウィーン間のレイルジェットによる接続拡大により、ベーラ・バルトーク号の名前は、ユーロシティ時代の歴史書からついに姿を消した。

 

 

  編成例(書籍内イラストから)

 

1992年夏ダイヤ 

1等・2等のコンパートメント車、食堂車(ハンガリー国鉄)、途中での増解結なし。

ハンガリーとドイツの車両で混合編成

 

今回は以上です。

 

 

参考資料:

・Die EuroCity-Zuege - Teil 1 - 1987-1993: Europaeische Zuglegenden /Jean-Pierre Malaspina, Manfred Meyer, Martin Brandt

・Thomascook European Timetable/Thomascook

参考ページ:

Datenbank Fernverkehr (Database long-distance trains)

Harrys Bahnen

ページ内写真:Flickr(引用元は写真とセットで明記)