技能実習制度を廃止して、特定技能に切り替われば外国人労働者の問題がある程度解決すると思われている方々がいらっしゃいますが、この業界をわかっている方々は特定技能の危うさを熟知しており、特定技能の拡大が大きな社会問題になりかねない、もしかすると技能実習制度の方がまだマシだったと思われる可能性があると思っております。
私も特定技能について、こりゃやばいぞと思っている一人です。実際に運用が始まり、このコロナ禍で特殊な条件ですが、はっきり言って問題だらけで技能実習制度の方がまだまともです。
理由を挙げてみましょう。
- 技能実習制度は技能実習法という法律があり、外国人技能実習機構という団体が実習生の保護と制度実施の確認、監理団体・実習実施者の許認可の権限などを持っており、厳しい監理の下で技能実習を行っております。
- 対して特定技能の場合、出入国管理局の一部門での管理であり、入管法の中での一つの在留資格でありますので、この特定技能に特化させて対応しているわけではありません。そういう意味では技能実習よりずっと緩いと思います。
- 技能実習制度は元々技能移転が目的のため、制度そのものが転職を前提にしておりません。ですから、よほどの事情がない限り会社を変えることができません。これが奴隷制度と言われる由縁でもありますが、採用する側としては何があっても2年11ヶ月の働き手の確保ができるわけですから、このメリットはかなり大きいと言わざるを得ません。
- 対して特定技能の場合、基本転職は自由です。これは特定技能外国人を労働者として見ているからです。5年働いてもらえると、この特定技能が発表された時点ではそう思われた会社の方々は多かったと思いますが、転職が自由となれば少しでも条件が良いところへ転職するのは当たり前です。
- 技能実習生の場合、給料については日本人労働者と同等以上という制限がついていますが、最近の高校卒業者の新卒採用がほぼ最低賃金での求人が多いため、技能実習生も最低賃金での採用が多く見受けられます。監理費を含めると決して安い労働者ではないのですが、社保等の負担を考えると割安な労働者に違いありません。
- 対して特定技能の場合、そもそも技能実習生からの移行組が多いせいか、給料を高く要求する技能実習生あがりの方々が多く、そこまでの給料を出すなら、日本人労働者にだしてやってくれというケースを多々見かけます。昨今の人手不足に合わせて、法外な給料を取れると勘違いしている外国人が多く、月給22〜28万の農業従事者の求人を出すアホな人材紹介会社もあるため、まともな給料設定ができない現状があります。
- 技能実習制度は一度日本に招へいしたら、最低3年間は受け入れ会社と監理団体は実習生の雇用を維持しなければならない責任があり、これは外国人技能実習機構で担保されているもので、技能実習生の就労の権利を守っております。それと同時に収入の確保も保障されていると考えるべきです。
- 対して転職自由の特定技能は、契約の更新は1年毎で同一職場での5年の就労は保障されておりません。ということはどういうことかというと、使えない特定技能外国人は1年で雇い止めも可能だということです。これは日本人労働者と同じ環境になります。登録支援機関はあくまでも支援であって、監理団体と同様の責任はありません。
- 技能実習制度において、悪徳ブローカーはだいぶ淘汰されてきました。これはやはりなんだかんだいっても外国人技能実習機構の存在が大きいでしょう。毎月月末に発表される監理団体等の行政処分を見るにつけ、ようやく悪徳監理団体の排除が少しずつできてきていると思われます。(それでも全然足りないですけどね)
- 一方、特定技能では営利団体も登録支援機関になれるため、この外国人労働者業界に不慣れなというか無知な派遣会社や紹介会社がこぞって業界に参入しております。それが現在この人数が少ない状況でも、少なからず、ろくでもないことをしているようです。だいたい紹介料と称して、50万、60万取るところが結構多い。採用した特定技能外国人も労働条件が見合わなければ、すぐに辞めるので採用側もいろいろと大変な状況です。入管では悪徳ブローカーを見極めるだけの人員もなく、正直やりたい放題になっております。人権侵害は技能実習以上になること間違いなしですからね。これははっきり言っておきます。技能実習が制度上矛盾を抱えているのなら、技能実習と特定技能を合わせて制度上の矛盾を取り払い、その上機構にしっかり監理していただくのが今のところベターだと思います。転職の自由を認めるのであれば、ベトナム側でしっかり責任をもってマッチングを行い、もし日本に来てからの転職の場合は一旦ベトナムへ帰国して再度マッチングし直す、送出し国の責任も問いたいのであれば、そういう方法も一つの案です。
- 技能実習制度の場合、転職の自由がない分、地方での人材の定着が見込まれます。東京がいくら最低賃金が高くても、技能実習生は上京することができません。地方活性化を望むなら技能実習制度は使えますよ。
- さて特定技能の場合、地方で採用した特定技能外国人は間違いなく最低賃金の高い東京及び首都圏、または近畿圏、中京圏へ転職していきます。時給200円以上の格差がありますので、なにも無理して地方の安いところで働く必要はありません。特定技能を普及させたいのなら、一律全国の最低賃金を東京の最低賃金にならす必要があります。今の段階で特定技能外国人をいくら入れたとしても、東京一極集中は避けられない。それでもこの特定技能やりますか?

