外国人技能実習機構のHPには、技能実習の基本理念として下記のことが書かれております。
技能実習制度は、我が国で培われた技能、技術又は知識の開発途上地域等への移転を図り、当該開発途上地域等の経済発展を担う「人づくり」に寄与することを目的として創設された制度です。
→制度の理念としては、あくまでも日本から発展途上国への技能、技術移転を目的としたものであり、外国人労働者の受入では決してありません。まずこの理念から実際の運用がかけ離れていることがこの制度を複雑怪奇にさせている大きな原因の一つです。
ですから外国人労働者のことを技能実習生と呼ぶのです。彼らは海外から日本の技術を学びに来た学生のような扱いであります。
技能実習法には、技能実習制度が、このような国際協力という制度の趣旨・目的に反して、国内の人手不足を補う安価な労働力の確保等として使われることのないよう、基本理念として、技能実習は、
- ①技能等の適正な修得、習熟又は熟達のために整備され、かつ、技能実習生が技能実習に専念できるようにその保護を図る体制が確立された環境で行わなければならないこと、
- ②労働力の需給の調整の手段として行われてはならないこと
が定められています。
→改めてこの理念を読むと正直とんだ茶番ですね。技能実習制度を廃止しろという人権派の皆様の思いもよくわかります。ここまで現実の制度運用が理念とかけ離れている制度は他にあるのでしょうか?そして、技能実習から特定技能への変更がどうして大きな矛盾を抱えているのか、この理念を見ればわかります。
発展途上国の「人づくり」に寄与する制度で実習してきた人たちを日本の労働力不足を補うために使おうとするのが、特定技能です。話が違いませんか?
結局技能実習制度が、単純労働者の受入であったことは周知の事実なのですよ。単純労働者の受入=移民であることから、日本政府はいろいろと理由をつけて移民でないことを説明するためにこのような技能実習制度を作ったというのが、本音であります。
そして、このように制度の中に矛盾を内包しているので、リーマンショックやコロナ禍など非日常の出来事が発生すると、いろいろと問題がクローズアップしてしまうのです。
旧法時代、研修生制度と呼ばれていた時期では、もともと研修生は労働者の扱いではありませんでした。ですから、労基法の適用外となり、また残業という概念もないため、平気で最低賃金を下回る時給で働かせ、残業も300円や400円、もしくは出来高払いという形で、本当に低賃金労働者として働かせておりました。
また、送出し国での手数料もその当時100万や150万も当たり前でした。そして、その法外な手数料についても研修生が会社にクレームを入れても「それはそちらの国のことだから」とまともに取り合ってもらえませんでした。ベトナムと日本の賃金格差は10倍近くもあり、低賃金とはいえ、ベトナム本国では高額な給料であったために、多くのベトナム人が一生懸命に働いておりました。
失踪を防ぐために保証金を取り、万が一失踪が発生した場合、監理団体は平気で送出し機関へ損害賠償と称して、ベトナム本国で取っていた保証金をもらっておりました。初めて受け入れた研修生からいろいろと話を聞いたとき、酷い制度だなと本当に思いました。キックバックも当たり前でしたし、協定書の他に附属覚書があり、そこには細かく保証金やキックバックの金額が書かれておりました。2010年以前に設立された協同組合(監理団体)ならばほぼどこの組合にも同じであったと思います。老舗の監理団体ほど違法行為は当たり前であったとはっきり言えると思います。
ですから技能実習法の施行は、この制度を健全化する大きな転換期であったことは間違いありません。現在毎月、行政処分された監理団体や実習実施者が発表されておりますが、旧法時代の感覚が抜けず、適当に技能実習制度を運用していた者たちの一部があぶり出されたと思います。
外国人技能実習機構があまり機能していないという批判もありますが、年1回の監理団体への実地調査及び3年に1回の実習実施者への実地調査は、不正行為へのかなりの抑止力になると思われます。こうして、少しずつですが、技能実習制度を適正に運用できるように行政側も努力をしてきたということは認めて良いとは思います。
しかし、そもそも理念が実態に合っていないので、いつになってもこの制度が批判されていると思います。
また、この制度の代わりとして特定技能が新設されましたが、特定技能は技能実習の先祖返りの制度で、入管法の中に新たに設けられた在留資格であるため、技能実習よりも問題が多い制度です。私はよく人権派がこの特定技能への切り替えを進めますが、どこをどう転んでこの特定技能を進めるか、訳がわかりません。
技能実習制度を考えるに、私は外国人労働者の受入について徹底的に議論すべきだと思うのですよね。移民も含めて考えないと、外国人労働者を受け入れないという選択肢もありなんですよ。但しその場合、労働者を確保するために日本人をどう扱うかも考えなければなりません。
結局そういう議論も何もないんですよね。それがこの国の一番の問題だと私は思いますよ。


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