【お断り】
現在連載しているブログ記事は、コロナ禍のときに業界関係者と一緒に作り上げたベトナム送出し機関の状況についての小冊子から取り上げたものです。かなり良い出来なのですが、あまりにも内情を赤裸々に書いてしまったものですから、業界関係者の立場から公開せずにしておりました。このままお蔵入りしてしまうのももったいないので、私の責任にてブログに公開することにしました。文面は私の方で多少直しながら、連載していきますので、よろしくお願い致します。
第 2 章 送り出し機関の選び方と見るべきポイント
(4)教師
前述の通り、送り出し機関に勤務する教師のうち 8~9 割は元実習生であります。残りは、留学生かベトナムで日本語を学んだ大学生等です。8 割は N3、1.5 割が N2、絶滅危惧種並みの N1になっております。
介護を扱う送り出し機関の場合、N2 以上の比率は高いです。介護クラスだけを専属で見る N2 以上の教師もいます。 又、送り出し機関の日本語教師は離職率が非常に高い傾向にあります。
1~2 年以上同じ送り出し機関で働いている教師の率は恐らく 50%を切ります。特定技能ができ、技能実習 3 号もあることから、元実習生の教師にとっては、日本へ戻るまでの腰掛扱いであることが最たる原因です。女性教師の場合、結婚・出産による産休も多く、そのまま退職の流れになることも多いです。
そのため、担任がコロコロ代わることもしばしばです。教師の能力を把握するには、まずは JLPT、日本渡航の有無、実際の会話が主たる手段です。
日本語教育に力を入れている送り出し機関は、ベトナム現地で長年日本語を教えている学校から先生をヘッドハンティングしています。お金がかかりますが。
(5)実習生
送り出し機関を問わず、実習生自身は目がキラキラしており、日本で稼ぐことを夢見ている人材が多いです。個々の人材自体は決して悪くなく、磨けば光る原石の状態であります。送り出し機関次第では、ただの石にも、宝石にもなることができます。
視察時に実習生と会話する時間があると思われますが、会話する際、一度で聞き取れることはあまりありません。注目すべきは「日本語がわからないときに何ができる」かであります。
大抵の場合、「すみません、もう一度(ゆっくり)お願いします。」というフレーズをどこの送り出し機関でも教えていますが、実際に自身がそれを使うタイミングに直面したときに使えるかどうかで送り出し機関の教育の本質が見えます。
ベトナム人の悪い癖(=日本人が嫌いな癖)に、「笑って誤魔化す」「相手の目を見られない」があります。日本人に慣れていない為、目を合わせられず、下を向いて黙ってしまう実習生は多いです。入国後の現場でのトラブルを未然に防ぐ為にもこれを矯正できているかを確認するのは非常に重要であります。
(6)コンプライアンス
① 出国費用と借金
監理団体であれば、実習生派遣のルールとして、手数料上限が 3,600USD であることは知っていなければなりません(2022年にて手数料に関してはルールが変更されています)。他国のことだからと我関せずであるならば、技能実習制度に関わるべきではありません。何故なら、送り出し機関がこれを守っているか否かが、日本側に非常に大きく影響するからです。
技能実習制度に関わるもの全てが忌避するのが「失踪」であります。その原因は様々ありますが、最も大きなものが「借金の返済」であります。「この給料では返済できない」「返済できても貯金できない」→「じゃあ、も っと給料がいいところに…。」と失踪に繋がっていきます。
最低賃金で雇用できてしまいますが、地方の低い最低賃金で借金が 100 万円 オーバーであれば、当然、失踪リスクは高まります。いくら懇切丁寧に面倒を見ても、起こってしまいます。優先順位に差はあれど、「お金を稼ぐこと」が実習生の命題であるからです。
つまり、実習実施者にとっては、法的に一切非がないにも関わらず、出国前の借金が原因で失踪という被害を被ることになります。入国前の段階で詳細の費用や借金を確認、把握できるのは監理団体が最も可能な立場にいます。例えば、入国前に送り出し機関と協定を結ぶ条件として、費用明細を出させ、入国後に実習生に聞き取りを行い、聞いていた内容と違った場合、契約を解消・見直す等、縛りを付けることも可能であります。
但し、費用・借金確認時に気を付けるべきことは、
「送り出し機関の徴収金額≠借金額」
ではありません。送り出し機関に支払う費用が 60 万円であっても、既にあった借金の返済の為、家具・家電購入の為、募集ブローカーへの謝礼、私的な理由による借金を含めた結果が 100 万円という例も少なくありません。 報道されている実習生の 100~150 万円という借金も全てが全て送り出し機関が徴収しているわけではないことを知っておいてください。
しかし、それでも、送り出し機関に支払う費用が低いに超したことはありません。そもそも、法定金額がある以上、高い・安いを論じることすらおかしく、本来はどこの送り出し機関も同額であるはずです。
ベトナム人の営業マンが Facebook 等で「出国費用が安くても入国後のフォローが雑では意味がない」「高くても駐在を置いて、フォローが厚いほうが良い」というてんで的外れな発言をしていますが、本来、入国後のフォローは監理団体の義務であり、送り出し機関が強制されるものではありません。日本各地に駐在を置くのも当然無料ではありません。人件費に加えて住居費も送り出し機関が負担することが多いですが、その原資がどこなのかよく考えてください。実習生に対する費用設定が高くなければ、元が取れるはずもないでしょう。
入国後の送り出し機関のフォローは義務ではない。あくまで、善意。
多くのベトナム人営業マンが勘違いしている原因は監理団体にあります。長年に渡って、監理団体が契約・求人を餌に当たり前のように駐在を要求し、当たり前のように巡回を要求してきた結果が、「駐在が多ければ契約を取れる」「フォローが厚ければ求人が取れる」という実習生の費用問題を置き去りにした勘違いであります。
大切なことなので、もう一度。
「入国後のフォローは監理団体の仕事。送り出し機関はあくまで善意。」
もちろん、送り出し機関も入国後の実習生のフォローすること自体は決してやぶさかではありません。問題は、それが当たり前ではないということを監理団体が理解することです。そもそも法令を遵守していない送り出し機関を選んでも、何かあったときの責任は監理団体にあります。
OTIT の監査でも、特定の送り出し機関と協定を結んでいると、協定書はもちろん、管理費の送金明細、渡航時の航空券・宿泊施設の領収書等を重点的にチェックされています。
監理団体は送り出し機関のコンプライアンスの程度がいかに自身、及び、実習実施者に大きな影響を及ぼすのかをしっかり頭に入れておき、常々忘れることのないようにしてください。
実習実施者にも同じことが言え、コンプライアンスを徹底している送り出し機関を選んでいるのかどうか監理団体をしっかり選別することが非常に重要であります。
また、アテンドを行う送り出し機関の通訳には要注意です。お迎えなどの連絡などで LINE の交換も行うケースも多いと思いますが、送り出し機関を通さず、勝手に個人で連絡をしてくる場合、後々送り出し機関から独立してプローカーを考えている輩が多いです。夜の遊びや愛人を囲っている場合、それをネタにして送り出し機関の変更を迫ることもあります。
更に、自ら送り出し機関のライセンスを借りて、斡旋を行う者も多く、こういう輩とは基本付き合わない方がいいです。余計にかかった費用はすべて実習生の負担に変わります。それがわからない痛い日本人は多いです。
② 前職要件
技能実習制度は、原則、母国で就いていた仕事と同種のものを日本で実習し、帰国後、復職し、技術移転と母国の発展に寄与するというものであります。しかし、当然ながら日本で希望する職種の就労・実務経験がない人材が実習を希望することがあります。パンドラの箱化しているやり方以外に、王道として以下のようなやり方があります。
前職要件(省令第 10 条第2項第3号ホについて)
https://www.otit.go.jp/files/user/docs/291218-05.pdf
前職のない介護はもちろんのこと、特に製造業系の溶接・機械加工・金属プレス等では、送り出し機関が提携先の大学・短大・専門学校において、必要時間の講習を行います。1 つの実習実施者で数が見込める場合、その 1 社用の専門コースを作り、その企業の OB を講師として送り込み、コースの修了者を面接・採用というカスタマイズも行っています。日本でもコンプライアンスの徹底が叫ばれて久しく、大手実習実施者を中心にこの手法を選択することが今後更に拡大をしていく可能性があります。
(7)募集能力
そもそも、ベトナムの募集の仕組みとは?大きく、以下の 2 種に分けられます。
・ 自社:自社の募集部を持ち、Facebook・Zalo 等の SNS、各地の高校・専門学校等の教育機関への
営業活動、又は既に在籍・入国済の実習生の紹介が挙げられます。
・ 外部委託(俗に言う募集ブローカーの使用):どこか特定の送り出し機関に属することなく、フリ ーランスで人材募集を行っている人間に委託します。
収入は、採用面接合格後に紹介した人材からもらう謝礼金、及び、当該人材が出国時に送り出し機関から支払われる謝礼金の 2 つ。それぞれ 500USD~1,500USD が相場です。
募集が困難な不人気職種については、候補者を面接に参加させただけで送り出し機関から謝礼として 2~5万円程度がもらえることもあります。実習生の出国費用を増やす主原因が、この謝礼金ですが、個々の金銭のやり取りの域を出ない為、法的に取り締まることは不可能であり、これに頼る送り出し機関も多く、仕組みとして出来上がってしまっている為、撲滅も非常に困難であります。
但し、送り出し機関の中には、募集ブローカーと人材の直接のやり取りを禁止し、出国後に経理を介して渡すのみと制限・管理している送り出し機関も存在します。
それから、先にも述べましたが、ベトナムでは人気・不人気職種というものが存在します。募集にかかる期間も 2 週間~2 か月以上と幅広いです。
一方、人気職種の場合、既に送り出し機関で勉強しながら求人を待っている人材もいる為、2 週間以内に採用面接を実施することも可能です。
不人気職種、特に縫製については、ベトナムで 3 倍を集めることは 300%不可能であり、万が一集まっても、30 歳過ぎか経験がない 18 歳という非常に両極端。建設についても鳶職は同様の状態。こうした現状を正直に報告・相談できる送り出し機関は信用できます。
決して、「できる。大丈夫」 と安請負する送り出し機関を安易に選ばないようにしてください。
(8)在日ベトナム人の営業は受けてはいけない
実習生の借金が大きくなる原因の一つが在日ベトナム人の営業であります。送り出し機関の営業を行い、監理団体や企業へ取り入り、実習生を使ってもらうように仕向けます。中には堂々とハニートラップをかける猛者もいます。このベトナム人たちは決して監理団体や実習実施者からは金銭を取りません。その代わり、紹介した送り出し機関や実習生から直接取ります。金額は 5~15 万円/人です。
コンプライアンスを重視している会社なら、間違ってもこういう連中から実習生を受け入れてはいけません。
(9)在日日本人の自称駐在員
複数の送り出し機関と契約し、複数の名刺を使い分けている者が多く、固定給+出来高(実習生1人採用につき〇〇円)、出来高のみの単なるブローカーであることが多いです。出来高ばかりを求めるので、アフタフォローは雑なことが多く、信用に足りません。
日本人でもベトナム人でも誰かの紹介(営業)に考え無しに乗っかるのではなく、送り出し機関を自分の目で見て、見極めることをオススメします。上記のような人間は耳ざわりのいい言葉しか言わず、リスクについての説明を避ける傾向が強く、受け入れてから、「こんなはずじゃなかった」となる例が非常に多いので、要注意です。
(実例)
5 社の送り出し機関の名刺を使い分け、全社から毎月固定給+管理費総取り+出来高ボーナス 1,500USD/人というとんでもない契約をしています。当然送り出し機関は目減りする利益を実習生の出国費用に丸乗せになり、借金は 100万円 over が当たり前になっています。
(10)こんな日本人に気をつけて in Vietnam(実在)
ベトナムには様々な人種の日本人が揃っています。中でも言ってることと、やってることが違う二枚舌パタ ーンには要注意です。「紹介」を餌に近寄ってくる日本人はほぼブローカーであると判断してかまいません。
(実例 1)
《いい送り出し機関紹介します!》という個人・会社があります。表では、「実習生の為に!」「実習生の借金問題は送り出し機関が悪である!」「監理団体は悪質なところばかりである!」と綺麗ごとを並べておきながら、裏では、監理団体と成約できたらいくら、実習生が採用されたら・出国したらいくらという設定をしています。
(実例 2)
2019 年 6 月に上記内容を Twitter に投稿し、瞬く間にベトナム語に翻訳され、現地ニュースも巻き込み大炎上しました。問題はここではなく、彼の事業内容です。「CBM ASIA」で、技能実習・特定技能向けのグローバル人材 IT プラットフォームを立ち上げ、マッチングサイトのようで、謳い文句は美辞麗句が並んでいますが、その実態は下の写真です。載せるだけで金、視察だけで金、契約するだけで金、採用するだけで金。金金金のブローカー業です。申し訳程度に「実習生から取ってはいけません」と書いてあるが、知っていたら悪質そのものです。知っていなくても、そんなもの偽の領収書と口裏合わせでどうにもなってしまうため、言ってることと実態は真逆へ転じます。炎上して、自主的国外退去になった模様ですが。
ブローカー業料金表
何度も申し上げるが、入国後の講習施設等を除き、原則、技能実習制度に送り出し機関・監理団体・実習実施者・実習生以外の登場人物は不要です。こうした比較サイト・紹介サイトが多いですが、自分で探す・選ぶという最も重要な過程を他人任せ・責任を丸投げしますと、後でもっと痛い目に遭います。ここで発生する余分な費用がどこに転嫁され、その結果起こりうるリスクが想像できれば、こうした業者は自然と存在価値・意義は消えます。この制度に関係する者は当事者意識を必ず持たなければなりません。
(11)送り出し機関の処分(取消・停止)に要注意
(送り出し機関の停止・取消について )
2021 年 6 月 18 日以降、非常に話題に挙がっている送り出し機関の停止・取消。まず、以下の 5 社については、失踪の発生が著しいとの理由で、日本側主導で停止となったと言われています。
既に当該送り出し機関からの「半年後に再開しますから、大丈夫です!」「系列の送り出し機関と契約してください!」等々の連絡が取引先の監理団体に入っていることでしょう。
停止となったのは以下の 5 社(2021 年 8 月 18 日以降)
①HOA BINH IMPORT-EXPORT JOINT STOCK COMPANY(HOGAMEX:認定送出機関 リストNo.11)
②Thai Nguyen Import Export Joint Stock Company(Batimex:認定送出機 関リスト No.77)
③MH Vietnam Investment Promotion Joint Stock Company(MH VIET NAM., JSC:認定送出機関リストNo.99)
④ International ITC Joint Stock Company(ITC:認定送出機関リスト No.132)
⑤ Song Hong International Human Resource and Trading Joint Stock Company(SONG HONG HR.,JSC:認定送出機関リスト No.141)
*⑤については、令和 3 年 4 月 23 日 14 時以降、既に利用不可。
外国人技能実習機構 【失踪者の発生が著しい送出機関に対する措置について(周知)】
https://www.otit.go.jp/files/user/210618-101.pdf
特に、先に述べた系列の送り出し機関への移行はよく考えてほしいと思います。
送り出し機関〇〇の系列会社、グループ会社ということで、既に OTIT から目を付けられている可能性は低くありません。 5 社の発表の後、次はベトナム側から 8 社の処分をベトナム側(DOLAB)が発表しました。 うち 4 者は取消、残り 4 者は再申請というものです。処分の理由については、公式な発表はありません。
取消
1. Viet Nhat HR(Công ty cổ phần liên kết nhân lực Việt Nhật)
2. JV-system(Công ty cổ phần Thương mại và Đầu tư JV-System)
3. Hutraserco(Công ty cổ phần Hữu Nghị Bắc Giang)
4. Transmeco(Công ty cổ phần Vật tư thiết bị giao thông
再申請
5. Saigon Inserco(Công ty TNHH Dịch vụ Quốc tế Sài Gòn)
6. Alsimexco.,SJC(Công ty cổ phần cung ứng và xuất nhập khẩu lao động Hàng không)
7. Cienco No1(Tổng công ty xây dựng công trình giao thông 1)
8. Vinalines(Tổng công ty Hàng hải Vinalines)
DOLAB(海外労働管理局)
【Các doanh nghiệp đưa ra khoi khỏi danh sách phái cử TTS kỹ năng sang Nhật Bả(認定送り出し機関リストからの除外について)】
http://www.dolab.gov.vn/New/View2.aspx?Key=6568
8 社の中にも、既に新たな社名でライセンスを取っているところ、前取締役が逮捕されているところなど、いわくつきのところが多いです。
はじめの 5 社にしても、次の 8 社にしても、最初の送り出し機関選びという入り口を間違えますと、必要のないストレスがかかり、時間や労力を後始末に割かれることになります。送り出し機関は決して、監理団体にとっての YES マンではなく、二人三脚で実習制度に取り組む対等なパートナーであるという認識が不可欠です。そして、「この 13 社と契約したことがある監理団体」というだけで、その他多くの送り出し機関から、「あの送り出し機関と付き合ってた監理団体でし?」と色眼鏡で見られているという恥ずかしい事態に気づくべきです。キックバック等、ワガママ三昧でもしていたのだろうという印象しか与えません。
お金や酒池肉林に釣られて、自ら泥沼にはまっていくという愚かな選択をしないようにしてください。
なお、2023年2月現在、再び大量の送出し機関ライセンス停止がDOLABから発表されました。すでに老舗の送出し機関では、新しいライセンスを取り直しており、古い送出し機関のライセンスを削除しました。また保証金の積み増しがあり、それができない送出し機関はライセンスの無期限停止を通達されています。コロナ禍で2年以上実習生が送り出せなかった2019年以降にライセンスを取った送出し機関の中では、この積み増しができないため、ライセンス停止になったところもあります。(弊社もそうですが)今のところ、保証金の積み増しができれば、ライセンスが復活するようです。
⇒ 送り出し機関の選び方と見るべきポイント ④ へ続く










