町の本屋さん -21ページ目

幸せのありか

私達は日に焼けながらも潮風が心地よくてしばらく海を眺めていた。
波の音に癒される。
私達はいろんな話をした。
会社のこと、仕事のこと、親のこと、小さい時のこと、恋愛のこと、そして拓実のことも少し話した。
山崎さんは彼女いない歴3年だそうだ。
結婚を考えた彼女がいたんだけど、30を迎えて振られたそうだ。
私と同じだ。
彼にも同じ傷があるから、私のこともわかるのかなと思った。
山崎さんには2つ上のお姉さんがいて、子供が二人いるそうだ。
甥っ子が可愛くて可愛くてしょうがないと、早く子供がほしいと、言っていた。
「薫ちゃん、俺の子生んで。」
と最後に付け加えて。
私はその言葉にどん引きしてしまった。
「ごめん、下心なしだから。」
と山崎さんは言った。
「下心見え見えです。」と私が言うと、ゲラゲラ笑ってごまかした。
下心、あってもいいんだけどなって思っていたけど言葉にはできなかった。

幸せのありか

私達は子供のように無邪気に遊んだ。
おかげでお互い年甲斐もなくびしょ濡れになった。
それがまたおかしくて笑った。腹の底から笑った。
こんな風に笑うことなんてなかったなぁって思う。
気取らない自分でいられるのもいいのかもしれない。
「サンドイッチ、作ったんだけど食べませんか?」
と私が言うと
「待ってました!」
と山崎さんは万歳した。
「その中身は何かなぁってずっと気になってたんだよ!お腹すいた~。」「お腹すいたね~、あんなに遊んだからね。」
敷物も持って来てなかったから、そのまま砂浜に座った。
「こうやってる間に服も乾くね。」
と山崎さんは言った。
サンドイッチを一口食べると
「おいしい。」
と言ってくれた。
その一言で私はうれしくなる。
「毎日、食べたいよ。」と山崎さんが言うので、「いつでも作りますよ。」
と私が言うと、
「鈍感だなぁ。」
と山崎さんは苦笑いをした。
私はちょっとうれしかった。
でも気の利いたことも思いつかず何も言えなかった。

幸せのありか

山崎さんとなら普通の恋愛ができるな。
買い物したり、食事いったり、夏祭りや花火を一緒に行ったりできるかな。
ずっとずっと私が憧れていたこと。
ずいぶん長い時間を拓実に費やしたんだと実感する。
山崎さんがはじく海水がきらきら光ってきれいだった。水をはじいて無邪気に笑う山崎さんが可愛いく見えた。
「気持ちいい!泳ぎたい!」
と山崎さんは言った。
「わたしも!今度来るときは絶対水着持ってこようね。」
「また一緒に来てくれるの?」
山崎さんはちょっと驚いて言った。
「また連れて来て下さいね。」
改まって言うとちょっと照れた。
「やったぁ!今度は薫ちゃんの水着が見れるぞ!」
「やだ。もう!」
私は恥ずかしくて思いっきり水をかけてやった。
「ひゃ~冷めて!」
逃げる山崎さんにざばざば水をかけてやった。