Marc のぷーたろー日記 -77ページ目

「狂気の愛」('85)

 

ドストエフスキーの「白痴」から着想を得た作品で、破滅への道を突き進む若者たちの姿を描いた犯罪アクション恋愛映画です。主演はソフィー・マルソー、フランシス・ユステール、チェッキー・カリョ、共演はクリスチアーヌ・ジャン、ジャン=マルク・ボリー、ミシェル・アルベルティーニ他。

 

Wikipedia「狂気の愛」

 

頭でっかちの劇作家が書いた観念的で意味不明のセリフを役者たちが延々とがなり立てるだけのくだらない演劇を見せられた気分。ここまで意味不明だと不条理劇と割り切ることもできますが、それが20分程度の短編映画ならともかく、90分以上もずっと同じテンションで見せられ続けるのは拷問でしかないです。

 

とりあえず、(自分にとっては)二度と観る必要も価値もない映画監督のリストにポーランド出身の「奇才」アンジェイ・ズラウスキーを加え、今後はフィルタリングできるようになったことだけは自分にとって意味があったかもしれません。

「みじかくも美しく燃え」('67)

 

1889年に実際に起きたスウェーデン貴族で妻子のあるシクステン・スパーレ中尉(34歳)とサーカスの綱渡り芸人エルヴィラ・マディガン(21歳)の心中事件を描いた恋愛ドラマ映画です。主演はピア・デゲルマルク、トミー・ベルグレン、共演はレンナルト・マルメル、クレオ・イェンセン、ニーナ・ヴィーデルベリ他。

 

Wikipedia「みじかくも美しく燃え」

 

この手の映画は一般的に主人公2人のバックグラウンドや出会いを描くと思うのですが、そういったものは一切なく、2人が駆け落ちして最も「舞い上がっていた」時から描いているのはちょっと新鮮。

 

ただ、まだ若いヒロインはともかく、30代で妻子持ちの男があまりに幼稚すぎてストーリーには全く惹かれないどころか、憤りしか感じず。

 

それでも、絵画のように美しい映像と、本作でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞した、撮影当時まだ10代だったピア・デゲルマルクの魅力だけで最後まで観られる映画でした。というよりも、観るべきところはそこしかないです (^^;;;

「シング・フォー・ミー、ライル」('22)

 

バーナード・ウェーバーの児童文学「ワニのライルのおはなし」シリーズを原作とし、奇跡の歌声を持つが観客の前では歌えないワニのライルと孤独な少年の交流を描いたファンタジー映画です。ライルの声はショーン・メンデス、出演はウィンズロウ・フェグリー、ハビエル・バルデム、コンスタンス・ウー、スクート・マクネイリー、ブレット・ゲルマン他。

 

Wikipedia「シング・フォー・ミー、ライル」

 

全てが予想通りにしか展開しない退屈なストーリーではありますが、これはこれでそれなりに楽しめる映画ではあります。

 

でも、実写向きではないなぁ。何でアニメーションにしなかったんだろう?

 

どんなに可愛らしく漫画的にデザインしても、ワニの皮膚の質感を実写映画の中で表現するとどうしても気持ち悪さが出てしまうし、残飯や生ゴミはどう考えても実写じゃブー

「グリーン・ナイト」('21)

 

アーサー王の甥サー・ガウェインの試練の旅を描いたダークファンタジーです。主演はデヴ・パテル、共演はアリシア・ヴィカンダー、ジョエル・エドガートン、サリタ・チョウドリー、ショーン・ハリス、ケイト・ディッキー、バリー・キオガン、ラルフ・アイネソン他。

 

Wikipedia「グリーン・ナイト」

Wikipedia「ガウェイン卿と緑の騎士」

Wikipedia「ガウェイン」

 

いわゆるハラハラドキドキの類やアクションは皆無。「冒険ファンタジー」を期待して観るとかなりガッカリするでしょう。

 

とにかく、あくまで幻想的な「ダークファンタジー」と思って観るべき。

 

その点で言えば映像は実に見事。

 

特に衣裳デザインが印象的で、それだけで充分に満足できます。

 

が、ストーリー自体は観念的で退屈。しかも説教臭さもあるし。

 

そこは自分には合わなかったようです。

「Winny」('23)

 

革新的なファイル共有ソフト「Winny」を開発しながら、違法ファイルの蔓延を幇助した罪に問われたプログラマー、金子勇氏を描いた実録社会派ドラマ映画です。主演は東出昌大さん、共演は三浦貴大さん、皆川猿時さん、和田正人さん、吉田羊さん、吹越満さん、吉岡秀隆さん他。

 

Wikipedia「Winny (2023年の映画)」

 

映画としてはとても良くできていると思います。

 

壇弁護士をはじめとする関係者が、若くして亡くなった金子氏の名誉を挽回し、彼の人となりを1人でも多くの人に知ってもらいたいという強い意志で作られた映画であることがよくわかります。警察の内部不正の問題もうまく絡めていますし。

 

そもそも金子氏を「幇助」という極めて曖昧な罪で逮捕・起訴した警察と検察は愚か者の悪党としか言いようがないし、有罪判決を下した裁判官は即刻罷免すべき能無し。最高裁で無罪判決が出たのは当然であり、日本の司法がまだ「まとも」なものであることを示したという意味でも本当に良かったと思います。

 

その一方で、確かに金子氏は法的には無罪ですが、「明らかに欠陥のあるソフトウェアを配布し続けた」ことに対する道義的責任は問われて然るべき。このあたりを本作では完全に無視しているわけではありませんが、ぼやかしてしまっていることに(それがこの映画の趣旨に反するので仕方ないとわかってはいても)当時を知る者としてモヤモヤしてしまった人は少なくないはずです。そこがちょっと残念。

「レッド・ファミリー」('13)

 

韓国の平均的家族のように暮らしている4人の北朝鮮工作員の運命を描いたサスペンスコメディです。出演はキム・ユミさん、チョン・ウさん、ソン・ビョンホさん、パク・ソヨンさん他。

 

輝国山人の韓国映画「レッド・ファミリー」

 

確かにブラックコメディとして作られてはいますが、悲惨すぎて全く笑えず。それでも、そのコミカルな描写が主人公たち4人に与える意味はしっかりあり、結果的に「笑えないコミカルな描写に意味のあるブラックコメディ」という不思議なテイストに。

 

とにかく、ただただ胸の痛む話。

 

一筋の希望の光を感じさせる終わり方ではありますが、根本的には何も解決していないので決して「救いのある」終わり方ではないですし。

 

観るべき価値のある映画かは微妙ですが、観て良かったとは思っています。

「ブラインドネス」('08)

 

謎の奇病によって世界中の人々が突然失明してしまう極限状況の中でのサバイバルを描いたパニックサスペンスです。出演はジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、ドン・マッケラー、ダニー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナルなど。日本から伊勢谷友介さんと木村佳乃さんが出演しています。

 

Wikipedia「ブラインドネス」

 

原作は小説のようで、確かに小説ならば成立する世界観ですが、映像化、それも長編映画にすると現実味のなさばかりが際立ってしまってダウン

 

このストーリーに科学考証などのリアリティを求めてはいけないことはわかります。あくまで「世界中の人が盲目になってしまった中でただ一人だけ視力を失わなかった人物とその周囲の人々」を描くことだけが目的で、それ以外の全ての設定や背景はどうでもいいんですから。こういう一種の不条理劇は短編映画ならまだ成立するんですけど、長編映画だとどうしても世界観の構築の甘さ、テキトーさが目立ってしまう…。

 

恐らく作り手も映像化向きではないことは百も承知だったんでしょうし、人物の描写をリアルに徹することで世界観のテキトーさをカバーしようと頑張ったのはわかりますが、残念ながら成功には至らなかったようです。

「容疑者〜ねじれた犯罪心理〜」('22)

 

推理作家マイケル・ロボサムのデビュー小説「容疑者」を原作とし、殺人事件の容疑者とされてしまったパーキンソン病の臨床心理士を描いた全5話のサイコスリラーです。主演はエイダン・ターナー、共演はショーン・パークス、カミラ・ビープット、アンジリ・モヒンドラ、アダム・ジェームズ、ボビー・スコフィールド他。

 

心理学の危うさを描きつつも最終的に心理学で救われるという全体の構成はいいし、サイコスリラーとしてはそれなりに楽しめました。

 

が、序盤の主人公のあからさまに不自然な言動だとか、それを見たまんまストレートに怪しんで主人公を容疑者扱いする警察の無能さとか、物語をドラマティックに展開させるためとは言え、あまりにわざとらしくて、ちょっとしらけちゃったんですよね…。それがちょっとマイナス。

「オットーという男」('22)

 

愛妻の死で人生に絶望し、自殺を決意した気難しい頑固な初老男性と、近所に引っ越してきた陽気な家族との交流を描いたスウェーデンのコメディ映画「幸せなひとりぼっち」('15) のハリウッドリメイクです。主演はトム・ハンクス、共演はマリアナ・トレビーニョ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、レイチェル・ケラー、トルーマン・ハンクス他。

 

Wikipedia「オットーという男」

 

「幸せなひとりぼっち」と比べると隣人一家が陽気を通り越して「うざい」「図々しい」家族にしか見えなくて、イライラしちゃったのですが、それでもやはり終盤の展開は涙なしでは観られず… (ToT)

 

最終的にはこのリメイク作品も悪い出来ではないと思うのですが、これなら「幸せなひとりぼっち」を観た方がいいんじゃないかなぁ。アメリカ人がハリウッドでリメイクしたいと思ったのは理解できますけど。

 

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「レベッカ・マーティンソン~衝動的な捜査~」('20)

 

変わり者でやり手な弁護士の女性がかつて捨てた故郷へと戻り、次々と起きる事件の渦中に巻き込まれていくさまを描いたミステリドラマシリーズ「レベッカ・マーティンソン〜型破りな捜査〜」('17) に続く、シーズン2全8話です。主演はサッシャ・ツァハリアス、共演はエヴァ・メランデル、トーマス・オーレドソン、ヤーコプ・エールマン、ラース・リンド他。

 

主演女優がイーダ・エングヴォルから前作に容疑者の妻役でゲスト出演していたサッシャ・ツァハリアスに変更されたものの、他のキャストはそのまま。しかも若い役者に変更されたのならともかく、年上の役者に変更というのもちょっと不思議。そもそもイーダ・エングヴォルとサッシャ・ツァハリアスは似ているわけでもなく、タイプが違うので、この変更に対しては「何故???」としか思えず。

 

が、やはり役者とは化けるもの。

 

サッシャ・ツァハリアスは前作で演じた役柄から大きくイメージを変えつつも、イーダ・エングヴォルとは似て非なる新しい主人公像を描いていて、これはこれで悪くないし、違和感はすぐに消えました (^^)v

 

内容は前作同様、2話ずつで完結するので、全8話で日本で言うところの2時間ドラマ4本分。

 

また、これも前作同様、ミステリとしては単純なので、謎解きの面白さはほとんど全くないですが、北欧のサスペンスらしく、寒々しく、残酷な内容で、日本の2時間サスペンスとはかなり趣が異なります。

 

前作では仄めかすだけだった主人公の幼少期の話や彼女の抱えるトラウマについてもだいぶ明らかになったので、これで完結しちゃうのかもしれませんが、シーズン3が作られるのであれば観たいです。それくらいには楽しめました (^^)v

 

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