
「Pink Trumpets」('24)
不倫の末の苦い別れから6年後に再会した元恋人同士の2人を描いた20分強の短編恋愛映画です。主演はライアン・カービー、ダグラス・ユング。
ストーリー自体は平凡。どこかで何度も観たことがあるような話。
それでも、美しい映像と印象的な音楽によって溢れ出てくる切なくもロマンティックな雰囲気に酔いしれてしまう映画でした。
特にタイトルにもなっている「pink trumpet(和名:キダチベニノウゼン)」の花が本当に美しく印象的に使われていて、それによって象徴される情感には日本の映像作品における桜のイメージをちょっと感じました。
ところで、ストーリー上は全く日本的な要素はない映画なのですが、金継ぎの皿が印象的に登場していて、最初は「なぜ?」とちょっと驚きました。しかし、海外で「kintsugi」が単なる日本の伝統工芸ではなく、「欠点があったり、不完全であったりするものを受け入れる哲学」として認識されていることを知り、実際に監督がメイキング映像の中で、この金継ぎの皿が「主人公が壊してしまった様々なものの再生」を象徴していると熱く語っており、「なるほど」といたく感心してしまいました。
「テイクアウト」('04)
ショーン・ベイカー監督の長編2作目で、中国からニューヨークに渡り、中華料理店で配達員などをする不法移民の日常を描いたドラマ映画です。主演はチャールズ・チャン、共演はエング=フア・ユー、ワン=ザイ・リー、ジャスティン・ワン他。
主人公は、確かに気の毒だけれど、あまりに愚かだし、配達員の仕事に最も必要な愛嬌も全くないなど、「もうちょっと何とかしろよ!!」という怒りの気持ちの方が強く湧いてしまい、イマイチ冷めた目でしか見られず。
ただ、ドキュメンタリー風の撮り方は非常に効果的で、映画自体の出来はとても良いです。
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「フォー・レター・ワーズ」('00)
ショーン・ベイカー監督のデビュー作で、真夏の夜の米国郊外の町を舞台に、本音をぶつけ合う男子大学生たちを描いたドラマ映画です。主演はデヴィッド・アリ、共演はヘンリー・ベイリン、フレッド・バーマン他。
「物語」の体(てい)をなしていないので、当然ながら物語としての面白さを期待すると「何じゃこりゃ!?」としかならないでしょう。あらすじを尋ねられても答えようがない。
それでも、1971年生まれのショーン・ベイカー監督の実体験が大いに反映されていることは間違いない本作の内容は、1990年代前半の米国の男子大学生の「リアル」を切り取ったドキュメンタリー映画のようで、その生々しさは、その場を覗き見ているように気持ちにさせられるほど。
高校を卒業して2年、大学生としての生活にも充分に慣れてきているにもかかわらず、それでも地元の昔の仲間たちとつるみたい男子の気持ちは大いに理解できるし、共感もできる。しかも、そんな「楽しい時間」が永遠に続くことはなく、その一瞬だけのものだという儚さや切なさも感じられて、年齢の近い自分には胸に迫るものがありました。
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「再会の答え」('10)
アメリカのカントリー歌手ガース・ブルックスのヒット曲「Unanswered Prayers」をもとに、高校時代の恋人と再会した、妻子ある男性を描いたドラマ映画です。主演はエリック・クローズ、共演はサマンサ・マシス、メッチェン・エイミック、パティ・デューク、ジェニファー・アスペン、トニー・オーラー、アレックス・フルンカ、ジョン・ハリントン・ブランド他。
ストーリー自体は陳腐でありきたりだけれど、よく言えば「普遍的」なので、それはまだいい。
少なくともキャスティングは絶妙![]()
特に、元恋人役は美しく、主演のエリック・クローズと並ぶと間違いなく美男美女なのだが、相性が悪く、同じ世界の住人に見えないのに対し、妻役はそこまで美しくはないものの、エリック・クローズとの相性がとてもいいのは、実に良く考えられたキャスティング。
それより何より一番気になったのは、今作が公開された2010年当時を舞台にしているのに、主人公をはじめとする登場人物のキャラクター造形があまりに1980年代。「いつの時代の価値観で生きてるんだ?」と言いたくなるほど。
ただ、これもまたアメリカという国の現実なんでしょうし、それから15年が過ぎた今も本質的には変わっていないんだろうなという印象も。
とにかく、登場人物たちの言動の古臭さしか印象に残らない映画でした。
「BRO DOWN」('25)
子供の頃からの大の親友である30代の独身男性2人のおかしくも心温まる友情を描いた約10分の短編コメディ映画です。主演はトレヴァー・アダムス、A・J・ヘルフェット。
登場人物は2人だけ。いわゆる「ブロマンス」をとても「可愛らしく」描いていて実に微笑ましい (^^)
また、公開されているNG集を観ても、撮影現場の和気藹々ぶり、主演2人の仲の良さが見て取れて![]()
深みは全くないですが、10分程度で気楽に観られますし、ちょっとだけ幸せな気分になれる映画でした (^^)v
「ショーン・コネリー/盗聴作戦」('71)
ニューヨークの高級マンションを狙った強盗計画を描いた犯罪映画です。主演はショーン・コネリー、共演はダイアン・キャノン、ラルフ・ミーカー、アラン・キング、マーティン・バルサム、クリストファー・ウォーケン他。
何じゃこりゃ?!
主人公たちの犯罪計画が、盗聴によって事前にFBIに筒抜けになっていることが物語上重要な要素であるかのように描いておきながら、それが結局何の意味もなさないってどういうこと?
別件での盗聴なので強盗事件の証拠には使えないとか、そもそもFBIと地元警察で連携はできないってことなんでしょうけど、それなら、こんな思わせぶりな描き方をする必要もないし、この物語自体が根本的に意味をなさない。
単に「実はFBIによって当たり前のように盗聴されてるんですよ」という注意喚起が目的なら、強盗映画にする必要すらないし。
せめて犯罪映画として強盗の手口に巧妙さがあれば、まだ楽しめたのですが、呆れるほど雑な犯罪計画で![]()
とにかく、名匠シドニー・ルメット監督がどうしてこんな意味不明のくだらない映画を撮ったのか謎。
「ブルータリスト」('24)
ホロコーストを生きのびて東欧から米国に渡ったユダヤ人建築家の波乱の運命を描いたドラマ映画です。主演はエイドリアン・ブロディ、共演はフェリシティ・ジョーンズ、ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ、アレッサンドロ・ニヴォラ他。
予備知識なしで観たら、実在の建築家の数奇な半生を描いた伝記映画だと思ってしまうほど、説得力のある重厚な人間ドラマでした。
1988年生まれで子役出身の俳優ブラディ・コーベットが映画監督デビューして10年。長編映画としては3作目。1作目から高い評価を得ていましたが、既に「巨匠」の域に達している格調高い演出は見事としか言いようがなく、本作が高い評価を得たのは当然。
ただ、自分の好みとしては、主人公をはじめとする主要な登場人物の誰にも共感できなかったのは残念。理解はできるし、おかしいとは全然思わないんですが、多少なりとも好意的に見られる人物がいるにはいても、物語の中心にはいないので、観ていてちょっとしんどいものがありました…。
また、終盤の展開はちょっと駆け足で唐突感があり、3時間を超える長尺をこれ以上延ばすことができず、最後だけ仕方なく大幅にカットしたような印象を受けてしまい、後味は微妙な感じに。そこまでが良かっただけに残念。
「ナイトメア・アリー」('21)
ウィリアム・リンゼイ・グレシャムの1946年のノワール小説「ナイトメア・アリー 悪夢小路」を原作とし、読心術を武器にショービジネスの世界でのし上がっていく男の成功と転落を描いた、ギレルモ・デル・トロ監督によるサスペンス映画です。主演はブラッドリー・クーパー、共演はケイト・ブランシェット、トニ・コレット、ウィレム・デフォー、ルーニー・マーラ他。
「ダークファンタジーのイメージが強いギレルモ・デル・トロ監督がフィルム・ノワール?」と不思議に思っていたのですが、実際に観てみると、フィルム・ノワールとダークファンタジーの親和性がとても良いことを知りました (^^)v
とにかく、デル・トロ監督らしいこだわりの映像はダークな世界観を見事に表現していて、それだけでも充分に観応えがあります。
ただ、150分の尺は長過ぎたかなぁ…。
物語が本格的に動き始めるまで1時間もかかっていたので、そこは30分くらいでさくっと描いた方が良かったんじゃないかなぁという気も。
もちろん、ラストのオチを際立たせるために、序章部分をしっかり描きたかった意図は分かるんですけどね。
そんなわけで、ちょっと不満はありますが、充実したキャストと映像美を「じっくりと味わう」映画でした。
「プロジェクト・タイタン」('24)
土星の衛星タイタンに向かう宇宙船で次々と苦難に遭遇する乗組員たちの運命を描いたSFサスペンスです。主演はケイシー・アフレック、共演はローレンス・フィッシュバーン、エミリー・ビーチャム、トマー・カポネ、デヴィッド・モリッシー他。
ケイシー・アフレックにSFのイメージが全くなかったので「どうなんだろう?」という興味で観てみたのですが、実際に観て納得。
作り手が本当に描きたいのは「妄想と現実の区別がつかなくなっていく主人公の姿を描いた不条理心理サスペンス」であり、SF要素は不条理な部分を不条理に見えないように説得力を与えるための設定に過ぎないのです。そう考えれば、ケイシー・アフレックの起用はバッチリ![]()
ただ、映画としては物足りない。
「妄想と現実の区別がつかなくなっていく」設定は非常に好みの題材なので、僕はそれなりに楽しめましたが、それでも、この手の映画を山のように観ている者にとっては、終盤の展開とオチは完全に予想通りで全く意外性がない![]()
もう一捻り、もうちょっとの工夫が欲しかったところです。





