Marc のぷーたろー日記 -33ページ目

「飛行機に乗っていたら墜落して、凶暴な人食いライオンのいる原野に放り出された件」('24)

 

飛行機の墜落によりライオンやヒョウなどの猛獣が生息するアフリカの保護区に放り出されてしまった医師のサバイバルを描いた冒険アクション映画です。主演はライアン・フィリップ、共演はエミール・ハーシュ、ミーナ・スヴァーリ、ディラン・フラッシュナー他。

 

邦題がふざけまくってるし、今やアクションスターとなったライアン・フィリップが主演なので、荒唐無稽なアクション映画だと思う人が多いと思うのですが、その要素は皆無。

 

原題は「Prey(餌食・犠牲)」。

 

直接的な残酷描写は一切ないですが、内容自体はかなり残酷で、映画全体のトーンもシリアス。ライアン・フィリップ扮する主人公は善良だが弱々しい人物として描かれており、取り立てて魅力的なキャラクターではありません。

 

魅力的とまでは言えませんが、キャラクターとして「興味深い」のはエミール・ハーシュ扮する怪しげで独善的な操縦士の方。ただ、このキャラクターの終盤の言動が、ありえないとまでは言わないまでも、ぎこちなく見えてしまったのも事実。もちろん、最後まで観れば分かる通り、この映画が「宗教映画」であるとの前提に立てば、このぎこちない展開も「そういうことか」と納得はできるのですが、それでももうちょっと見せ方を工夫して欲しかったなぁ…。

 

説教臭くはないですが、終盤はシラけてしまって、何にも心に響かず、ほぼ「無」の心境でただ画面が流れていくのを見つめていました。

「ロイ・ビーン」('72)

 

無法者から法の番人に転じた実在の判事ロイ・ビーンを描いた、ジョン・ヒューストン監督による西部劇映画です。主演はポール・ニューマン、共演はエヴァ・ガードナー、ヴィクトリア・プリンシパル、ジャクリーン・ビセット、アンソニー・パーキンス、ステイシー・キーチ、ジョン・ヒューストン、ロディ・マクドウォール他。

 

Wikipedia「ロイ・ビーン (映画)」

 

こういう実在の「無法者」を英雄視するような話が嫌いなので、全く期待しないで観たのですが、これが意外に面白かった (^^)

 

登場人物がいきなりカメラ目線で映画を観ている観客向けに話しかけたりするなど、一貫して現実味をなくしてコミカルに描くことで、「大人向けのお伽話」のような世界観にして、主人公の無茶苦茶なキャラクターや殺伐とした話を「この世界ならアリかも」と思わせることに成功しています。

 

個人的には安易な「昔は良かった」風の話は大嫌いなのですが、19世紀末から20世紀初頭にかけての社会の劇的な変化をわかりやすく描き、歴史の浅い米国の「神話」のようにまとめているのも「なるほど」という感じ。

 

出番の少ない脇役にも有名な俳優を起用するなど贅沢な作りで、気楽に観られる娯楽映画でした。

「Mulligans」('08)

 

湖畔の別荘を舞台に、良き夫・良き父として生きて来た男性と、その大学生の息子が連れて来た友人との出会いが招く「完璧な家族」の危機を描いたカナダの恋愛ドラマ映画です。主演はチャーリー・デイヴィッド、ダン・ペイン、共演はテア・ギル、デレク・ジェームズ、グレイス・ヴコヴィッチ他。

 

Wikipedia「Mulligans (film)」

 

長男の友人を演じたチャーリー・デイヴィッドが執筆した同名小説を自ら脚本を務めて映画化した本作。ゴルフでティーショットをペナルティーなしで打ち直すことを意味する用語「マリガン」から「セカンドチャンス」の意味で付けられたタイトルや、一見完璧に見える家族の脆さといったテーマは実に興味深い。特に、真面目な夫が妻にも隠し続けて来た秘密は、その年代の男性として説得力のあるもので、演じるダン・ペインも役に合っていてグッド!

 

が、物語は結局ただの陳腐なメロドラマに堕していて、ただただ退屈。

 

ストーリーのまとめ方も安易で現実味はなく、ただの綺麗事。

 

もっと深みのある人間ドラマにすることもできたはずの題材を料理し切れなかった作り手の力不足が際立つだけの残念な映画でした。

「カラーパープル」('23)

 

20世紀初頭の米国を舞台に、ある黒人女性の波乱の人生を描いたアリス・ウォーカーのピューリッツァー賞受賞作を原作としたスティーヴン・スピルバーグ監督の映画「カラー・パープル」('85) をもとにした2005年初演のブロードウェイミュージカルを映画化した作品です。主演はファンテイジア・バリーノ、共演はタラジ・P・ヘンソン、ダニエル・ブルックス、コールマン・ドミンゴ、コーリー・ホーキンズ、H.E.R.、ハリー・ベイリー他。

 

Wikipedia「カラーパープル (2023年の映画)」

 

原作は未読。1985年の映画は観ていますが、終盤の展開が主人公に都合が良すぎて、ちょっとシラけてしまったんですよね…。また、シリアスな題材なので、ミュージカル向きとも思えず、この映画に対しても全く期待はしていなかったのですが、これが自分でも意外なほど良かった (^^)v

 

そもそもこの物語は「どんなに理不尽な辛い目に遭ったとしても、他人への優しさを失わずに、誠実に生きていれば、それは報われる」という「大人向けの寓話」だということ。ストレートプレイでは「主人公に都合が良すぎる」と感じた終盤の展開も、ミュージカルというファンタジックな表現をすることで「寓話」であることが強調され、違和感なく、素直に受け入れられたのです。

 

ミュージカルが好き、またはミュージカルに拒否反応は全くないという方ならば、1985年の映画よりも、このミュージカル版を観た方がよいと思います。

 

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「コットンテール」('22)

 

亡き妻の願いで、息子夫婦とともに散骨のため英国の湖水地方を訪れた夫の旅路を描いた日英合作のロードムービーです。主演はリリー・フランキーさん、共演は錦戸亮さん、木村多江さん、高梨臨さん、恒松祐里さん、工藤孝生さん他。オックスフォード大学と早稲田大学で日本映画を学んだパトリック・ディキンソン監督が自身の母親を看取った経験をもとに脚本を執筆して撮った作品です。

 

Wikipedia「コットンテール」

 

日本映画を学び、日本語も話せる監督が脚本も担当しているだけあって、日本や日本人の描き方に致命的に変なところはないし、むしろとても丁寧に描かれているとは思うものの、それでも微妙なところに違和感が。

 

おそらく、黒澤明さんや小津安二郎さんなどの古い日本映画の影響を受けているんだと思うのですが、登場人物のキャラクター造形、特に女性が昭和30年代くらいのイメージでかなり古臭い。

 

また、セリフも日本語としておかしくはないものの、実際の日本人はそういう言い回しをしないというところがちらほら。

 

例えば、欧米の人の場合、自分の家族や友人などの身近な人について他人に話す際に、何の説明もなしにいきなり「◯◯が」と名前を出して話し始め、それを聞いた相手から「◯◯ってあなたの△△?」と確認されるという会話が珍しくないですが、日本人はそういう話し方はあまりしないと思います。一般的には名前を出さずに「私の△△が」とか、名前を出す場合も「私の△△の◯◯が」と話し始めると思うのです。そういった細かいところの違和感が気になって仕方ありませんでした。

 

そして自分にとって致命的だったのが主人公のキャラクターが全く受け付けられないものだったこと。こういう人物は普通にいますし、リリー・フランキーさんはピッタリですが、逆にピッタリ合い過ぎていて視聴自体が苦痛で耐えられないほどでした…。

 

いい話だとは思いますし、出来も悪くないと思うのですが、ただただ「not for me」な映画でした。

「カーニバルの殺人鬼」('23)

 

イタリアとの国境に近いスイス南部の町ベリンツォーナを舞台に、毎年恒例のカーニバルでにぎわう中で起きた殺人事件に挑む、心に傷を抱えた警視を描いたクライムスリラー・ドラマシリーズ全6話です。主演はジャンマルコ・トニャッツィ、共演はマッテオ・マルタリ、マリア・アノルフォ、アンナ・ピエリ・ツルヒャー、ルカ・ディ・ジョヴァンニ、ロベルト・チトラン他。

 

最後まで飽きることなく観ることができたので、連続ドラマとしては充分な出来だと思います。古い街並みや古城など、風景の美しさは眼福でしたし。

 

でも、観終わってみると、不満な点がいろいろ。

 

思わせぶりな演出のおかげで、視聴者には早い段階で真犯人がわかってしまうので、後は主人公である刑事がどうやって真犯人を突き止めるのか、そして犯行の動機や11年前の連続殺人事件との関連性は何かというのが焦点に。

 

ところが、結局「真犯人はサイコパスでした」という身も蓋もない結末で、犯人の言動は全てフィクションとしての物語を盛り上げるための都合の良いものでしかなく、そこに説得力が全くないのです orz

 

観て損したということは全くないですが、あまりに安易な内容でガッカリ。

 

とにかく、登場人物が物語を転がすための「都合の良い駒」でしかないことを視聴者に見透かされてしまうようではダメなんですよ。同じように登場人物を「駒」としてしか描いていなくても、それが気にならないほど面白く作れたヒッチコックはやっぱり天才だなぁと改めて思います。

 

ところで、女性検視官のDV被害のエピソードって必要だったんでしょうか?

「ポトフ 美食家と料理人」('23)

 

19世紀末のフランスを舞台に、料理への情熱で結ばれた美食家と料理人の男女を描いたドラマ映画です。主演はジュリエット・ビノシュ、ブノワ・マジメル、共演はエマニュエル・サランジェ、パトリック・ダスンサオ、ガラテア・ベルージ他。

 

Wikipedia「ポトフ 美食家と料理人」

 

料理人を描いた映画の場合、一般的に物語の合間に調理シーンが盛り込まれるイメージですが、この映画の場合は調理シーンの合間に物語が盛り込まれているように感じてしまうほど調理シーンが多く、ドキュメンタリー映画のよう。ところが、世界観は浮世離れしていて異世界ファンタジーような趣。どことなく、死後の世界、天国をイメージしてしまうほど。

 

また、カット割が極端に少なく、各シーンが1カットか2カットくらい。その代わりにカメラを固定せず、パンを多用するのも印象的で、そのカメラワークやカット割はこの作品の雰囲気に合っていてグッド!

 

ただ、主人公2人の20年にわたる物語を、敢えて過去のシーンを一切描かずに、現在のシーンだけで観ている側に想像させる上品な見せ方もいいんですが、個人的な好みで言えば、2人の20年を実際に観てみたかったというのが本音。実写では難しい表現なのはわかっていますけどね。

 

それに、2人の間の恋愛感情も、もうちょっと控えめである方が好み。あくまで「相棒」であり、「親友」であり、そこに仄かに恋愛感情が見え隠れする関係の方がロマンティックだし、セクシーだと思うのは、僕がフランス人ではないからなのかもしれませんけど (^^)

「大変!息子がゲイなんて!」('09)

 

息子が同性愛者だと知ってショックを受けたユダヤ系アメリカ人夫婦のドタバタを描いたコメディ映画です。主演はレイニー・カザン、ソウル・ルビネック、共演はヴィンセント・パストーレ、ジョン・ロイド・ヤング、ジェイ・ロドリゲス、カルメン・エレクトラ他。

 

Wikipedia「大変!息子がゲイなんて!」

 

ドタバタコメディとしては悪くないのですが、この映画が作られてから15年以上が過ぎた今となっては古臭さしか感じないですし、女性の描き方に不快で問題のある部分もあって、そこがどうしても気になってしまって素直に楽しめず…。

 

それでも、2009年当時は(表現は極端で現実離れしているものの)こんなもんだったってことを記録に残したという意味では悪くないかなと。

 

とにかく、「2009年当時は」という前提で観るべき映画です。

「パリ・ブレスト〜夢をかなえたスイーツ〜」('23)

 

2014年に22歳の若さでパティスリー世界選手権のフランスチームの一員としてチャンピオンの座を手に入れた天才パティシエ、ヤジッド・イシュムラエンの半生を描いた伝記映画です。主演はリアド・ベライシュ、共演はルブナ・アビダル、クリスティーヌ・シティ、パトリック・ダスンサオ他。

 

ストーリー自体は道徳の教材にでもできそうなくらいに「おキレイに」まとまっていて特筆すべきところはないですが、演出には舞台劇っぽさがあったり、ところどころに挟まれるイメージには漫画やアニメっぽさがあったりして印象的。

 

とにかく、実の親には全く恵まれなかった彼が、里親には恵まれたのは本当に良かったと思いますし、里親とその家族がいなければ、今の彼はいなかったであろうことがはっきりと描かれていて、彼の里親家族への感謝の気持ちに溢れている伝記映画でした。

 

ただ、彼が世界選手権で担当したのが主に「氷像」だったのにはちょっとビックリ。確かにパティシエとして重要な技能だとは思いますが、「それってパティシエじゃなくて彫刻家じゃね?」と思った素人はきっと僕だけではないと思います (^^;;;

「戦うパンチョ・ビラ」('68)

 

メキシコ革命の実在の英雄パンチョ・ビラを描いた伝記冒険アクション映画です。主演はユル・ブリンナー、ロバート・ミッチャム、共演はチャールズ・ブロンソン、ハーバート・ロム、マリア・グラツィア・ブッチェラ、ロバート・ヴィハーロ、フランク・ウォルフ、アレクサンダー・ノックス他。

 

Wikipedia「戦うパンチョビラ」

 

下っ手クソな映画。

 

相当に金をかけて作られた映画であることは間違いないけれど、その金の全てをドブに捨てたようなもの。どこも誉められるところがない。

 

冒頭で「パンチョ・ビラに捧ぐ」とありながら、パンチョ・ビラがほとんど活躍もしなければ目立ちもしない。たまに出て来て「何かいいこと言ってるっぽい」だけ。これじゃ、口先だけのただのクズ男。

 

必要のないアメリカ人飛行士をただの語り部として登場させるだけならともかく、彼を実質的に主人公にしているので一段とパンチョ・ビラの存在感が薄いものに。結果的にパンチョ・ビラ本人よりも、チャールズ・ブロンソン扮する部下の方がよっぽど印象的。

 

どういうつもりでこんな雑でテキトーな映画を作ったのか本当に謎。