Marc のぷーたろー日記 -22ページ目

「Pit Stop」('13)

 

テキサスの小さな町を舞台に、恋人との別れを引きずったまま鬱屈とした日々を過ごしている2人の男性と周囲の人々の姿を描いたドラマ映画です。主演はビル・ヘック、マーカス・ディアンダ、共演はエイミー・サイメッツ、ジョン・メリマン、アルフレド・マドゥロ、ヘザー・カフカ、コービー・サリヴァン他。

 

Wikipedia「Pit Stop (2013 film)」

 

タイトルの「pit stop」は長距離ドライブの途中のトイレ休憩や食事・給油のための一時停車を意味するアメリカの俗語。そのタイトルの通り、人生の「一時停車」中である2人の男性の心情を丁寧に描いています。

 

若くもないが中年と呼ぶにはまだ早い年齢の労働者階級の男性が田舎町で暮らす中で抱く閉塞感はシビア。

 

観る前は主人公2人の物語にフォーカスしているのかと思っていたのですが、どちらかと言えば群像劇に近く、周囲の人々が「新たな一歩」を踏み出す姿に触発された主人公2人が同じように一歩踏み出すまでを描いています。

 

映画の中では劇的な展開は特になく、強いて言えば、劇的な出来事の「その後」を描いたような雰囲気なのもグッド!

 

さほど期待しないで観始めたのですが、意外な拾い物でした (^^)v

 

「ハロルド・フライのまさかの旅立ち」('23)

 

レイチェル・ジョイスの小説デビュー作となるベストセラー小説をジョイス自ら脚本を担当して映像化した作品で、死期の迫った元同僚に大切な想いを伝えるため、800kmの道のりをひたすら歩き続ける老人を描いたドラマ映画です。主演はジム・ブロードベント、共演はペネロープ・ウィルトン、リンダ・バセット、アール・ケイヴ、ジョセフ・マイデル他。

 

よくある「いい話」「心温まる話」で終わらせないのは、さすがイギリス映画。

 

主人公の気持ちはよく分かるし、突飛な行動も理解できるのだけれど、感情移入したのは奥さんの方。

 

辛いのは主人公だけじゃない。奥さんだって辛いのに、そんな妻を置いて一人で「贖罪の旅」に出るなんて勝手すぎると思うのは当然。

 

でも、そのあたりもしっかり描き、最後には奥さんにも救いがあるのはグッド!

 

切ない話ですが、後味は爽やかで心に沁みる映画でした。

「瞳をとじて」('23)

 

謎の失踪を遂げた俳優の消息を追う元映画監督の探究の旅を描いたドラマ映画で、ビクトル・エリセ監督の31年ぶりとなる新作です。主演はマノロ・ソロ、共演はホセ・コロナド、アナ・トレント、ペトラ・マルティネス、マリア・レオン他。

 

Wikipedia「瞳をとじて (2023年の映画)」

 

題材も見せ方も好みだったこともあり、3時間近い長尺を飽きずに最後まで観ることができましたし、評価に違わぬ「いい映画」だとは思います。描きたいこと、見せたいことはよく分かりますし。

 

ただ、あまりに「お上品」な作りで、イマイチ響かず…。

 

物足りなく感じたのは期待値が高すぎたのでしょう。

「フォールガイ」('24)

 

リー・メジャース主演のテレビシリーズ「俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ」('81-'86) の映画版で、現役復帰したハリウッドのスタントマンが危機に巻き込まれ続ける姿を描いたアクションコメディです。主演はライアン・ゴズリング、共演はエミリー・ブラント、アーロン・テイラー=ジョンソン、ウィンストン・デューク、ハンナ・ワディンガム、ジェイソン・モモア他。

 

Wikipedia「フォールガイ (映画)」

 

スタントマン出身のデヴィッド・リーチ監督の面目躍如という感じ。

 

そして、アクションだけでなく、コメディやロマンスの要素もたっぷりと加え、まさに昔ながらのハリウッド娯楽映画。

 

アーロン・テイラー=ジョンソンやジェイソン・モモアの贅沢な使い方もいい (^^)v

 

シリーズ化も想定してるんじゃないかと思いますが、続編があれば観たいと思うほどには楽しめました (^^)

「ゴッドランド/GODLAND」('22)

 

19世紀末、アイスランドまで布教に赴いた若きデンマーク人牧師の過酷な旅路を描いたドラマ映画です。主演はエリオット・クロセット・ホーヴ、共演はイングヴァール・E・シーグルズソン、ヴィクトリア・カルメン・ソンネ、ヤコブ・ウルリク・ローマン、イーダ・メッキン・フリンスドッティル他。

 

画角が4:3、四隅が丸く削られていて、昔のブラウン管のテレビで観ているような古めかしい映像。

 

その一方で、美しいが恐ろしくもあるアイスランドの雄大な自然の迫力。その点は充分に楽しめました。

 

が、ストーリーはただただ不快だったなぁ…。キリスト教の傲慢さをストレートに描いているのはいいけれど、キリスト教を憎んでいる自分にとっては中途半端だったし…。

 

とにかく、主人公がいくら若いとは言っても、牧師である以前に、人としてクズすぎる。

 

アイスランドの自然の厳しさは、聖職者でも狂ってしまうほど過酷であると言いたいんでしょうし、主人公はその報いをちゃんと受けるんですけどね…。

 

アイスランドで見つかった当時の複数の写真から着想を得たそうですが、どうしてこんなストーリーにしたのか、僕には分かりませんでした。

「RHEINGOLD ラインゴールド」('22)

 

ボクサーを経て犯罪者になるなど波乱に満ちた青春期を過ごしたドイツのラッパー、カターの自伝を原作とした伝記映画です。主演はエミリオ・ザクラヤ、共演はカルド・ラザージ、モナ・ピルザド、デニス・モシット、アルマン・カシャニ他。

 

映画自体は実話をもとにしたフィクションということになっているので、いろいろ割り引いて観るべきなんでしょうけど、それでも確かに波乱に満ち溢れていて、映画になるのも納得の人生。

 

クルド系イラン人の現代史とも言うべき両親の物語から始まり、ドイツ社会の底辺で生きる移民の若者たちの生活をシリアスに描いた序盤に対して、成人してからは間の抜けた犯罪コメディになり、その極端な変化に戸惑いも。

 

刑期をきちんと終え、既にミュージシャンとして成功している彼の過去の犯罪歴を描くにあたって、軽いコメディタッチにして誤魔化そうとしているのは分かりますけど、ちょっとあざといかなぁ。

 

とにかく、最後まで観終わった後の感想としては、カターの人生よりも、彼の両親の人生の方が遥かに興味深く、こちらを映画化して欲しいです (^^)

「ハワイ」('13)

 

偶然に再会した幼なじみの2人の青年が共に夏を過ごす姿を描いたアルゼンチンの恋愛映画です。主演はマヌエル・ビニャウ、マテオ・キアリーノ、共演はルス・パラソン、マヌエル・マルティネス・ソブラド他。

 

Wikipedia「ハワイ (2013年の映画)」

 

ドラマティックな出来事は全く起きず、演出も極めて控えめ。セリフも少なく、一貫して静かな世界。

 

それでも主人公2人の心情が、セリフやモノローグで一切語られなくても、手に取るように分かるほど、繊細で雄弁な演出と演技のおかげで、ちょっとした緊張感があり、最後まで全く目が離せないのです。

 

また、アルゼンチンの田舎町を舞台にしているのにタイトルが「ハワイ(原題:Hawaii)」である理由が最後の最後で分かるのもグッド!

 

ただ、ラストシーンをどう解釈するかは観る人次第かなと。

 

僕にはどうしても主人公の願望を具現化した妄想や夢としか思えなかったんですよね…。そう解釈すると切ないけれど…。

 

とにかく、美しい田舎の風景の中で淡々と綴られる「散文詩」のような心地よい空気感の映画でした。

「愛欲のセラピー」('19)

 

精神科医の女性が悩み多き患者の女優に振り回されて次々と奇妙な状況に巻き込まれていくさまを描いたコメディ映画です。主演はヴィルジニー・エフィラ、共演はアデル・エグザルコプロス、ギャスパー・ウリエル、ニールス・シュネデール、ザンドラ・ヒュラー他。

 

ジュスティーヌ・トリエ監督らしいコメディ。

 

子持ちの働く女性主人公のダメなところや酷いところを赤裸々に描き、観る者に嫌悪感すら与えるほど生々しく描く一方、分かりやすい漫画的なクズ男を登場させて笑いを取るパターン。

 

が、自分でも驚くほど、これっぽっちも笑えなかった。

 

ジュスティーヌ・トリエ監督の長編作品を一通り観て分かったのは、「意図はよく分かるが自分には全く合わない」ということだけでした。

 

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「ヴィクトリア」('16)

 

幼い娘2人を女手一つで育てている、やり手の女性弁護士の多忙な日々を描いたドラマコメディ映画です。主演はヴィルジニー・エフィラ、共演はヴァンサン・ラコスト、メルヴィル・プポー、ロラン・ポワトルノー、ロール・カラミー他。

 

ヴィルジニー・エフィラの明るいイメージのおかげで「コメディ」として気楽に観ることはできましたが、映画自体はちぐはぐでアンバランスな印象。

 

シングルマザーの弁護士を主人公に「女vs男」を物語の中心に据えておきながら、最終的には陳腐なラブコメでまとめるというのは、娯楽映画としてはアリだと思いますが、安易としか思えず。

 

2020年代の今ならもっと違うまとめ方をしたんじゃないかなぁと思えてなりませんでした。

「ソルフェリーノの戦い」('13)

 

フランス大統領選挙の決選投票が行なわれた2012年5月6日をのパリを舞台に、家庭と仕事の両面で振り回される女性TVリポーターの多忙な一日を描いたドラマコメディ映画です。主演はレティシア・ドッシュ、共演はヴァンサン・マケーニュ、アルチュール・アラリ、ヴィルジル・ヴェルニエ、マルク=アントワーヌ・ヴォージョワ他。

 

これがコメディであることは分かるのですが、浅薄で愚か者でしかない元夫婦に振り回され続ける幼い娘たちも、ベビーシッターの青年も気の毒でしかなく、全く笑えず。自分にとってはただただ不快なだけの映画でした。