連続ドラマW「災」('25)
人に「災い」をもたらす「ある男」を描いたサイコサスペンスシリーズ全6話です。主演は香川照之さん、共演は中村アンさん、竹原ピストルさん、宮近海斗さん、松田龍平さん、じろうさん、中島セナさん、内田慈さん、藤原季節さん、坂井真紀さん他。
「興味深く」観ることはできました。
連続殺人事件を、何らかの原因や動機が存在する生身の人間による犯行として描くのではなく、動機も手口も全くわからない、というよりも、そもそもそういったものなど存在すらしていない自然災害や事故のような「災い」として描くアイデアはちょっと新鮮。
一貫して不気味な緊張感が張り詰めているので、観ていて疲労感はあるのですが、サイコスリラーとしてはよくできていると思います。
これでどういう結末を迎えるのかなぁと思っていたら、「予想通り」ではありましたが、実際に「予想通り」のものを見せられると、生煮え感は否めず。作り手の意図通りなのは分かっていますけどね。
もしかすると第2シーズンがあるのかもしれませんが、このノリで何作も作り続けても観ている側が飽きるだけですし、ただただ不快感しか残らない話なので、ほどほどにしておいた方が良いと思います。
ところで、主演の香川照之さんの演技が注目されているようで、確かに実質的に1人で何役も演じる「巧みさ」や、キャラクターが醸し出す「不気味さ」の表現は見事なのですが、逆にその「分かりやす過ぎる不気味さ」が、むしろこの役には合ってないように思えて仕方なかったのです。この役は、存在感の薄い、人の記憶に全く残らないような没個性の人物でありながら、どこか不気味さを匂わせるタイプだと思うので、香川照之さんでは存在感がありすぎて、「違う」と思うのです。
「スウィート・ドリームズ」('24)
回復施設の依存症患者たちによるソフトボールチームの奮闘を描いたスポーツコメディドラマ映画です。主演はジョニー・ノックスヴィル、共演はモー・アマー、ボビー・リー、セオ・ヴォン、ブライアン・ヴァン・ホルト、ジョン・パーク他。
→ Wikipedia「Sweet Dreams (2024 film)」
ストーリー自体は昔ながらのハリウッド映画という感じ。
ただ、依存症という深刻な問題をユーモラスに陽気に描くのはいいんですけど、あまりに浅くて軽いので心に響くものがないのです。
コメディとしてはこれで充分なのかも知れませんが、観終わった後の満足感はとても低く、物足りなさしか残りませんでした。残念。
「ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ」('22)
実話をもとに、タリバンと間違われて米軍基地収容所に収監された息子を救出すべく奔走するトルコ系ドイツ人の母親を描いたコメディドラマ映画です。主演はメルテム・カプタン、共演はアレクサンダー・シェーア、チャーリー・ヒュブナー、アブドラ・エムレ・オズテュルク他。
意味のある映画だと思います。
胸の痛む話をコミカルに描くことで逆に深刻さや悲惨さを際立たせる手法も、珍しくはないですし、悪くないです。
が、主人公のキャラクターが…。
愛すべき「トルコのお母ちゃん」として描いているのは分かりますし、多くの人にとっては「愛すべきキャラ」なんだと思います。演じるメルテム・カプタンは確かに愛嬌がありますし。
でも、僕はこういうおばちゃんに生理的嫌悪感があってどうしても受け入れられなかったのです…。そのせいで物語にも入り込めず、感情移入もできず…。
その一方で、今の米国相手では、不可能な話だなと思いながら観ていました。
「ミツバチと私」('23)
男の子として生まれながらも、女の子として生きたいと願い、性自認に悩み苦しみながら日々を過ごす8歳の子どもを描いたドラマ映画です。主演はソフィア・オテロ、共演はパトリシア・ロペス・アルナイス、アネ・ガバライン、イツィアル・ラスカノ、マルチェロ・ルビオ他。主演のソフィア・オテロが第73回ベルリン国際映画祭で、史上最年少の9歳で主演俳優賞を受賞しています。
両親、特に母親の描き方が「興味深い」。
母親は「性別など関係ない」として、息子が(伝統的な意味での)女の子のように振る舞うことも受け入れているし、女子更衣室(女子トイレ)を使うことも認めている。しかし、受け入れているのは「女の子のような息子」であることまで。父親も、母親ほど納得はしていないけれど、そのように受け止めている。
一方の主人公は性自認が完全に女性であり、「女の子のような男の子」ではなく、純粋に「女の子」でありたいと思っている。
この親子の認識のギャップは多くの人が思っている以上に大きいということを描いているわけです。
ただ、1本の映画として観ると、大して面白くはなく、道徳の教科書みたいな説教臭さは否めず。
「メイ・ディセンバー ゆれる真実」('23)
1990年代にアメリカで実際に起きた「メイ・ディセンバー事件」をモチーフに、13歳の少年と不倫をして実刑判決を受けた既婚女性を描く映画で彼女を演じることになった女優と、事件当事者の2人をはじめとする関係者の姿を描いたドラマ映画です。主演はナタリー・ポートマン、ジュリアン・ムーア、共演はチャールズ・メルトン、コーリー・マイケル・スミス、エリザベス・ユー他。
この題材を映像化するのに、こういう描き方をするのかと、終始「興味深く」観ることができました。
ドキュメンタリー映画の内容を、そのままプロの俳優を使って再現しているようなイメージ。
本当のところは、もしかすると当の本人たちですらよく分かっていないのかもしれないという「曖昧さ」をそのまま曖昧に描いているのは![]()
ただ、映画の作り手としての明確な「主張」がないことに不満を感じる人もいるかもしれないなぁなどと思いながら観ていました。
「ミステリアス・スキン」('04)
1966年生まれの米国の作家スコット・ハイムが幼少期の実体験をもとに執筆した1995年の小説「謎めいた肌」を原作とし、幼少期に性被害に遭いながらもあいまいな記憶のまま成長した2人の少年の対照的な「その後」を描いた青春ドラマ映画です。主演はブラディ・コーベット、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、共演はミシェル・トラクテンバーグ、ジェフリー・リコン、ビル・セイジ、メアリー・リン・ライスカブ、エリザベス・シュー他。
性被害者として具体的に描かれている人物は2人だけですが、それでも描き方が多角的で、ステレオタイプなキャラクターとして描かれていないのが見事。また、性加害者が周囲からは好人物と見られているため、一段と被害が表面化しにくい現実を描いているのも![]()
実体験に基づいた小説を原作としているだけあって、舞台となる1980年代から1990年代にかけての米国社会のありようも現実味があり、それだけに主人公2人の痛々しさが一層生々しく感じられました。
観ていて辛い物語なので、万人にお勧めできる内容ではないですが、「観るべき映画」ではあります。
「警察官カロリナ~善と悪の境界線~」('23)
カタジナ・ボンダによるポーランドのベストセラー実録小説を原作とし、行方不明になっていた父親が実家の地中から他殺体で発見され、母親に殺人容疑がかかってしまった警察官の女性が事件の真相に迫る姿を描いたポーランドのポリスサスペンスシリーズ全6話です。主演はマヤ・パンキェヴィッチ、共演はエリーザ・リチェムブル、イザベラ・クナ、マテウシュ・クミェチック他。
さほど期待値が高くなかったせいもありますが、予想外に楽しめました (^^)v
細かいところでは「ちょっとそれはいくらなんでも現実離れしすぎでは?」と言いたくなるところもありますが、そんな欠点を補って余りある、主人公と彼女の相棒で上司である男性刑事とのバディ感が魅力的で![]()
物語の二本柱の一本である主人公の家族の物語が解決してしまったので、続編があるかはわかりませんが、このコンビの活躍をもっともっと観たいです (^^)
「ロッカビー:パンナム103便爆破事件」('25)
1988年12月に航空機の爆破で270人が死亡したロッカビー事件で娘を亡くした医師ジム・スワイアの著作「The Lockerbie Bombing: A Father's Search for Justice」を原作としたドラマシリーズ全5話です。主演はコリン・ファース、共演はキャサリン・マコーマック、サム・トラウトン、アルダラン・エスマイリ他。
→ Wikipedia「Lockerbie: A Search for Truth」
→ Wikipedia「パンアメリカン航空103便爆破事件」
かなり思い切った内容。
公式には事件は全て解決したことになっていますが、そこにはさまざまな矛盾や謎が残っていることを告発する内容。
一応、ドラマの中では、必ずしも主人公の見解や主張が100%正しいとは限らないと予防線は張っていますが、それでも確定した裁判の結果を根本から覆す内容だったのにはちょっとビックリ。
このドラマは今年の初めに本国イギリスでリリースされたそうですが、この作品が事件の謎の解明に繋がる、とまでは言わないまでも、何らかの影響を与えるのか、気になります。
「帰ってきた あぶない刑事」('24)
1986年から始まった人気テレビドラマシリーズ「あぶない刑事」の8年ぶりとなる劇場版シリーズ第8作です。主演は舘ひろしさん、柴田恭兵さん、共演は浅野温子さん、仲村トオルさん、土屋太鳳さん、西野七瀬さん、早乙女太一さん、岸谷五朗さん、吉瀬美智子さん他。
テレビシリーズは2作とも当時好きで観ていましたが、映画版はほとんど観たことがありません。
別に嫌いになったわけではなく、「あぶ刑事」は1980年代だからこそ成立した話なのに、それを1990年代以降も続けることに違和感があったのです。
そんなわけで、この8年ぶりの新作映画も観る気は全くなかったのですが、たまたま機会があったので観てみました。
面白くなくはない。
むしろ面白い。
懐かしさもあるし。
それでも、2020年代を舞台に、70を超えた2人が昔と全く同じノリで演じることへの違和感、というよりも「痛々しさ」は最後まで拭えず…。
ま、単なる「お祭り映画」にいろいろ細かいことを突っ込むのは野暮ってもんですけどね (^^)






