・最狂超プロレスファン烈伝 #1~4.5
1990年代前半、日本のプロレス団体が分裂に分裂を繰り返し、新日本プロレス、全日本プロレス、リングス、Uインター、藤原組、FMW、SWS、ユニバーサル・レスリング同盟、パイオニア戦志、全日本女子プロレス、JWP、LLPWが群雄割拠し、さらに、W☆ING、みちのくプロレス、パンクラス、オリエンタルプロレス、NOW、PWC、SPWF、WAR、大日本プロレス、DDTが次々と旗揚げしてゆく熱い熱い多団体時代が到来した。
この「最狂 超プロレスファン烈伝」はその熱い時代をリアルタイムで生きた漢達の物語である。
好きなモノに対し無限の熱情を燃やし続ける生き方を実践した漢達の物語である。
プロレスファンの貴方には勿論のこと、他のジャンルで熱情を燃やし続けている貴方に読んでいただきたい物語である。
あの燃えに燃えた熱情の嵐を、御堪能ください。
(Kindle1巻あらすじより抜粋)
1992年ごろ月刊少年マガジンにて連載してました。全3巻。
自分が生まれた頃に1年弱だけやってたマンガです。
みんな、プロレスは好きかな?
ボクは全く興味がありません。
「浦安鉄筋家族」もプロレスネタだけは読み飛ばす程度には興味がありません。
馳浩って国会議員じゃないんですか!?と言ったらどれくらいの人に笑われるのでしょうか。
以前同じ作者の「BAT DAYS」という草野球エッセイマンガが好きだったので、なんとなくkindleのセールで1冊11円で買ってみたのも大分前。
たまたま出先でスマホの充電器を忘れたとき、スペアのiphoneの中に唯一入っていたマンガがこれで(なぜ⁉)、期待値ほぼゼロのまま暇つぶしのためだけに読みました。
しかし、これが予想に反してめちゃくちゃ面白かった!
東京でプロレスの試合を観るためだけにはるばる九州から上京した青年、主人公・鬼藪宙道。
(リングス・前田日明の大ファン)
大学のプロレス研に入部するも、そこは奇人・変人なんてもんじゃない、本物の魑魅魍魎のはびこる亜空間でした。
この他にも幽霊部員がいっぱい出てくる
当時はプロレス団体が分裂・独立を繰り返し、群雄割拠の戦国時代。
ゴールデンでの地上波中継がありながらも、WOWOWで様々な試合を観ることができた黄金時代。
(とにかく景気のいいエピソードがやたら出てくる。それだけでも興味深く読める)
アントニオ猪木が好きすぎていつもマスクを被っている、奥飛掘三(おくとばすほるぞう=オクトパスホールド)。
調べたら動画出てきた。
お面じゃなくてマスクというところに狂気を感じる
当時はまだおたくという言葉があったかどうか、おたく=宮崎勤みたいな時代だったんじゃないのか?と思うんですけど、本作に描かれていたのは、まさしく最狂の名にふさわしいプロレスファンのめいめいが、周りがどう思うか、どう思われるか、ということにまっっっったくとらわれず、異常なテンションでプロレス愛を貫くその様子。
自分もまあ野球バカを名乗っていいレベルのプロ野球ファンのつもりですが、その熱量は彼らには到底及ばない。
まず「こんな話誰も興味ないよな」「こんな俺悪い意味で変わってるよな」などと予防線を常に張っている地点で劣りに劣っておる。
ばかもん!
好きなもんは好きでいいだろ!
ついてこれない奴のことなんか二の次三の次でいいだろ!
文句言ってくる奴とは本気でぶつかりあってやりあえばいいだろ!
お前はキャラづくりや知識のマウントがやりたくてシコシコアニメ観たり、野球選手の成績をぶつぶつ口ずさんでるわけじゃないだろ!
と喝を入れられたような気がしました。
オタク系雑誌に載っている凡百マンガよりもマニアックな作品が、30年近く前に月刊少年マガジンに載っていたという事実!
徳光康之先生には、単に面白いマンガを読ませてくれただけでなく、ひねくれにひねくれた私の心を打ち捨て、忘れかけていた素直な心を取り戻させてくれて、本当にありがとうと言いたいです。
毎回濃厚な展開が繰り広げられますが、特に終盤は圧巻です。
主人公が目覚めると、そこはプロレスの代わりにプロ柔道が流行っているパラレルワールド。
昭和29年の「昭和の巌流島」で、力道山が木村政彦に惨敗したせいでプロレスという文化が消滅してしまったのです。
しかもなぜか目の前にはプロ柔道が大好きなガールフレンドが!
鬼藪は苦悶します。
プロレスのない世界で、自分はなおもプロレスファンであり続けるのか。
目のまえの幸せを捨ててもなお、アイデンティティを貫くのか――。
この話は間違いなく、2021年に読んだ全てのマンガの中で最高のエピソードでした。
マジで井の頭線の中でボロボロ泣いてしまった。本当にすいませんでした。
まあこっからが大変なんですけどね!
連載終了後も熱烈に支持してくれるファンがいたようで、6年越しでまんだらけが発売元となり、全ページ描き下ろしの4巻が発売されるのですが、そのある意味陰惨ともいえる衝撃的な内容に、ボクは京王線の中でくずおれそうになりました。
リアルタイムで読んでたら発狂してた。
それでも2021年現在、クラウドファンディングで資金を集めて更なる続編をKindleで発表されているという事実にどれだけ救われたことか。
愛は、見失うことがあっても、失せることなど永遠など信じたい!。
テレビ朝日の「プレステージ」という深夜番組で幸運にも大槻ケンヂさんとご一緒する機会があり
このマンガの単行本一巻を読んでいただいた
「面白いですね、これ」と直接、大槻さんのお言葉をいただき
(中略)
「プロレスファンにはたまらないマンガですねえ」とさらに大槻さんの嬉しいお言葉に
同行取材していた僕の担当さんが答える
「ええ、そうなんですけど、プロレスファン以外の読者は全然意味が分かんないらしくて
『辞めさせろ』って手紙が一番多いんですよ」
えっそんなの初耳ですよっ 担当さん
高々の持ち上げられたところをドカッと落とされる
まるで後藤達人氏のバックドロップを喰らったようにボクは女の60分のテーブルから落ちていた
(2巻P193より)
大槻ケンヂがプロレスファンって話はエッセイでよく見たけど、作者と対談が載ってて感激しました。
マニアってすげえ!かっこいい!という純粋な気持ちを十数年ぶりに取り戻した瞬間でした。