図書館にて。
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”私は、ALS（筋萎縮性側索硬化症）という病気の当事者です。運動神経だけが選択的に侵されて、二年から五年で随意筋（自己意識下で動かすことのできる筋肉）のほとんどがまったく動かせなくなる病気です。全身不随になって生きるか、生きることを諦めるかを、自分で決断しなければならない極めて過酷な病です”
”発病前に真剣に自殺を考えたことはありません。（中略）楽天的で明るい性格もありますが、自分を肯定も否定もせず、人と比べることもあまりしないからではないかと感じています。発病してからは、三回も本気で自殺を考えました。三回目は、衝動的に本当に自宅のマンションの九階から飛び降りようと思いました。しかし、もうその時には飛び降りるだけの筋力は残っていませんでした”
”この病気の過酷なところは病状だけではなく、生死を自分で選ばなければならないことです。気管切開をして、人工呼吸器をつけて全身不随となって生きるか、それともつけずに生きるのを諦めるか。患者の七割が呼吸器をつけずに死んでいきます。病状の恐怖以外にも、二十四時間の介護を必要とするため、家族の負担、経済的事情から生きることを諦める患者も多く、我々患者はこれを時として、「自死」と呼びます。”
”ALSを表現することばにNO Cause NO Cure NO Hope」（原因不明、治療なし、希望なし）というものがあります。私は、発病した頃には、悔しいけど、うまいこと言うなぁと思っていました。ですが、しばらく経つと（中略）希望なしは解釈の問題であって、ALSでも希望を持って暮らしている患者も、決して少なくないことに気がついたのです”
”差別を受ける側のカテゴリーには属していますが、（中略）かなり好きなように生活しています。差別を受けて嫌な思いや、つらい思いをしているとはとても思えません。差別されていることで、かえって大事にされていることもあります。”
”普通が存在するから差別も区別も生まれるし、日常が存在するから心の問題の全てを解決できないのだと思います。心と体があるように、普通や日常が存在しています。その普通の枠からはみ出すと苦しみます。マイノリティがその典型です。日常を失う怖さは、想像を絶する場合があります。”
”大抵の人は、闇を知らずに一生を終えます。もちろん、それでよいと思います。そういう人に、当事者意識をもってと求めるのは難しいですが、それでも私は、（中略）闇を見せることで、「こんな人でも生きているのだから自分も」と思ってくれるかもしれないと思い、これからも光も闇も伝えていきたいと思っています。”
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医療者として色んな患者さんと出会ってきました。それぞれに大変な苦痛があるのは承知ですが、もし自分が…と想像した時に耐えきれないだろうと思ったのは「ALS」と「白血病」でした。でも後者の白血病は昔よりも少し認識が改善しました。ネットが繋がる時代になったからです。昔の白血病の患者さんの孤独は相当なものでした。感染していはいけないので、病棟の奥の奥の部屋の隅っこで、面会者と面談できても僅かの時間、状態が厳しければ会えない。たとえ面会に来訪してくれても。相手は完全防備のガウンマスクが必須。温もりを感じることもできない。ただひたすらに暗くひっそりとした病室で死の恐怖に耐えながら闘病しなければならなかったのです。今は携帯もあるし、動画通話も出来る時代。本当に有り難いことです。
しかし今でもALSは著者も述べられている通り、頭は最期までクリアなのに身体がまったく動かせない。呼吸さえ、、、どれほど怖い事だろう、と思います。看護師時代は、コミュケーションで伝えられない人の意図を拾う事が、私はなぜか得意な方でした。だから「ALS」患者様の担当につけられることが多かったのですが、意図は読み取れても会話はさすがに最小限しかできません。だから今回この本で「生死｣など問題をどう考えているのか？という考えを知ることができて感銘を受けました。これもパソコンなどで長文の読み起こしが出来る時代が反映されていると思います。
生きるとは？死ぬとは？優生思想、差別など。まさに自分自身があらゆる現実に向き合わなくてはならない立場になってからこそ、湧き上がる感情。リアルな言葉にされた内容には、気づかされる点がいっぱいあります。2024年には出版予定であるpart２もぜひ楽しみにしています。少数派でありながらも、こういう介護される側、支援を受ける側の人の気持ちがもっと世の中に広まりますように。
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