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”社会人になってしばらく私は、世の中は五割の理不尽と四割の不可解、一割の正義で成っている、と思っていた。けれど仕事の基本を身につけ、自分なりのやり方をたぐり寄せていったあたりから、その割合は徐々にだが変化した。”
”首尾一貫した人に憧れる。どんな局面でも、意志を貫ける人間になりたい。しかしまた、状況や環境に左右されるのも生物の性である。雨にも風にも負けるわけだが、ただ、春になればまた自分の成長を取り戻せもするのだから、そう捨てたものでもない”
”TVをつければ、タレントといわず、あっけらかんとなにか食べている場面にでくわす。食べる姿を公衆にさらすことがなんでもない時代に、いつしかなったのだ。「食う」という行為はけれど、もっとしみじみしたものにも思う。それは生きるということにまつわる切実さで、だから人の食べる姿には、惚れ惚れするようなたくましさと一片の侘しさが宿るのではないだろうか”
”常に”自分の頭で考えることをしてほしい(中略)もし今自分でも持て余している短所があるとすれば、案外それは大事な核となって個人や仕事を支えていく可能性があるから”
”蛇口をひねれば水が出て、冷蔵庫には常に冷えた飲み物があり、ガスや電気のおかげで二十四時間快適に過ごせる。そういうなかにあっていつしか人は、たいていのことは思い通りになるものだと勘違いをしてしまったのかもしれない。”
”胸ときめく甘い時期を越え、エゴだの意地だの沽券だの、きれいごとではない人間の業が顔を出してからが恋愛の醍醐味である、と思う。”
”恋というのは、いつの時代もすんなりとは運ばない。切なる想いや恋情がすげなくかわされたり、裏切られると、自分の存在まで否定されたようでやりきれなくなる。けれど誰かのためにもがいたり耐えたり泣いたりしている人の姿は、端から見ると思いがけず美しく、健やかで魅惑的な人間味に溢れているものなのだ。”
”孤独というのは足にからみつく草に似て、知らぬ間にそこにあって快活なはずの私たちの歩みを阻むのである。例えば、どれほど話しても自分の本心がうまく相手に伝わらなかったり、周りの考えになじめなかったりと、あらゆる場面で孤独はいとも簡単に顔を出す。”
”金が貯まったためしがない。これまで生きて一度も、である。(中略)金遣いが荒い、ということではない。朽ちかけた一軒家に住み、朽ちかけた一軒家に住み、家具はどれも二束三文の古道具、美食家でもなければ着道楽でもなく、買い込むものといえば本とCD程度というつましい暮らしぶりである”
”事実から派生する真実は人の数だけあるということだ。ひとつの事象に同じように立ち会っても、見方感じ方が違えば証言は食い違う。”
”小説の”登場人物を考えるとき、名前よりも年齢よりも性別よりも、まず仕事を決める。なにを生業にしているか、ということは、その人物の考え方や所作、行動パターンを形作っていくのに大きな役割を果たすからだ”
”結局、理想的仕事とは与えられるのではなく、自らの工夫や心の持ちようで作るものなのだろう。私は今、「自分らしい仕事」にこだわり続ける人より、どんな仕事でも自分らしくこなしている人を尊敬している。”
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去年、ベスト3に入れさせてもらった著者の本。今回はエッセイを拝読しました。時代小説をかかれるだけに…なかなか文章に慣れずに読み進める速度が進まず、ちょっと前半は難を感じました。それと自分のことを語るのは…みたいなことを文中で仰っていた通り、前半は日常の事が多かったように思います。きっとファンにはたまらないと思います。
だからか、気になるポイントや内容についてあんまり頭に入ってこなかったのですが、後半は違いました。好きな小説について思うことや、作家になる馴れ初めや、著者の心の言葉が綴られていて、私としては、やはりここが知りたかった!と思ったのはあります。それなりに誇りとされる部分には口調が強く出ていたように思いますし、自身の矜持みたいなものが色濃く出ているところが読みごたえがあり抜粋させていただきました。
まだ「占」しか作品を拝見していないのですが、ぜひ時代小説もトライしていきたい。私は藤沢周平も好きなので、大丈夫なはず!と思っていますが…
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