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”「校正するこころ」を欠いて世に出された言葉は、不幸です。充分に育つまもなく、厳しい大海原を泳ぐ力を自分のものとすることなく押しだされるのですから。～中略～言葉にとっての不幸は、受け手（読者）を傷つけ、不幸にします。そして、はねかえって今度は書き手をも傷つけ、不幸にします。吐き捨てられただけの言葉は、みずからの心を踏みにじり、人の心を、この世を壊します。”
”あなたの言葉には、かならず色や温度があります。あちこち飛んで行って、なおかつその果てに受けとめてもらいたい行き先があります。自分の言葉はいま何を感じているのか。うれしいのか、怒っているのか、悲しみに暮れているのか、疲れているのか。まず自分の言葉に正直であることです。言葉に対して素直に自分を開いていくこと。そうすれば、あなたの言葉がどこに行きたがっていて、何をどう望んでいるのか、きっと見えてくることでしょう。それはあなたにしか見えない、ほんとうの世界です。”
”「言葉にしたとたん、言葉は嘘になる」というジレンマです。逆にいえば、一つの言葉には、その言葉が切り捨ててきた幾千万もの思いが背負われてある、ということです。言葉はしょせん、言葉なのです。しかし、この「しょせん」というひと言には、底なしの裂け目を覗きこむような、おそろしいまでの奥深さがあることを感じてください。”
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今年１月に放映されたNHKのプロフェッショナル仕事の流儀で「校正者」の大西寿男さんをたまたま拝見。言葉の世界への異常なまでのこだわり、情熱、真摯に取り組むすべての姿勢に度肝を抜かれました。積極的受身という言葉がいまでも耳から離れません。ちょうどコロナで臥せっていた夫となんとなく二人で見ていたのですが、見始めてから、あんぐりと口を開いたまま見終えたと言っても過言ではないくらい、この方の仕事＝校正者への愛に魅了されたのです。
校正者とは、とても地味なお仕事のように思います。しかしあらゆるジャンルの文学にたずさわりながら数種類の辞書を片手にお仕事している経験がある中で、あえて「言葉の世界」を語られるわけです。様々な角度の言葉を網羅してきた大西さんが見ている世界は、ここまで生きてきた文章好きの私としては、おもいのほか見たこともない世界でした。
そこで講演に巡り合い、参加をして、ご本人様からお話を伺って、サインをいただいたのです。
そして年末も第二弾の講演にうかがいます。今年の年初、年末は大西さんで始まり、終わる予定です(笑)
この本はサインを戴いてにもかかわらず、驚くほど付箋だらけ、書き込みがとまらずに真っ黒にしてしまったので、今度の講演では新たに同じものを二冊目購入する予定です。小説が好きな人でもなんでもいいのですが、言葉に関わる人や、言葉を愛する人はぜひぜひ読んでもらいたいです。
私は読みながらずっと心が揺れっぱなしでした。校正というお仕事にとくに興味がない人でも全然面白いと思います。いまはネット、ラインなどでも言葉は飛び交っています。文章で物事を伝える事の根本を教えてくれる本です。
檜原有輝 ひばらゆうき スケジュール
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