主人公 香織:パンダの中学時代からの友人。
27歳の時、老舗割烹料理屋の次男である次郎と結婚した。
それから5年、香織は不育症と義母の言動に悩まされていた。
次郎:香織の夫
克子:夫の母、つまり義母
ーーーーーーーーーーーーーーーー
結婚2年目の年末。
その日は、次郎の実家で行われる
餅つき行事のために、
親戚や近所の方が集まっていた。
義母克子
「もう、
今年は孫にも会えなかったし
このくらい
手伝ってもらわないと。」
この手の話を克子がするときは、
大体周りに家族はいない。
4ヶ月前に、
流産をしたばかりの香織は
傷口に塩を塗られて辛かったが
それでもこの時は、
ただただお義母さんも、
孫に会えず残念だったんだろうな、
くらいに思っていた。
餅つきが始まり、
まずは慣れた大人がペッタンペッタン。
掛け声もかかって、
賑やかだ。
その後近所の子供たちは
子供用の小さな杵で
ペッタンペッタン。
昔、私たちが生まれ育った地域でも、
こうして餅つきは行われていた。
準備をする
大人たちは大変だったかもしれないが
子供たちはにとってはこうして
つきたてのお餅を食べたりして
楽しい体験だったりする。
香織はそんな子供たちを
微笑ましい気持ちで見つめながら
いつか自分の子供も
この輪の中に入れてあげたい。
そんなことを思っていた。
次郎
「香織、体調大丈夫か?
お餅は重いから、
僕が手伝うからね。」
次郎が香織に声をかける。
普段から細かい気遣いの出来る夫。
多少義母の言葉に刺があっても、
彼がいるから頑張れる。
義母克子
「香織さん、きなことあんこ
このお皿に2種類分けて
皆さんに配って下さる?」
克子に声をかけられた。
香織
「あ、はい!わかりました!」
義母克子
「本当なら先に、
あなたが気を回して
準備してくれていても良かったのよ。」
香織
「…すみません。」
義母克子
「このお支度、去年もやったでしょ?
お義父さんたちはねぇ、
板前さんと一緒に
お雑煮の仕込みをしたりして
忙しいのよ。
だからこのくらい先に気を回して
準備しておいてくれても
良かったのにねぇ。
私の時代は、
ちゃんとその日の流れを
メモにまとめておいて
翌年からは自分だけでも出来るように
予習してきたもんですけどねぇ」
決して、怒った口調にはならず、
あくまでも
穏やかな感じを貫いている克子。
この時香織は、
確かに自分がもっと気を回して
先に動けば良かったと
素直に反省していた。
ちゃんと、
裏方業務に徹さなければ。
香織
「すみません。
あとでちゃんと、
今日の流れはメモしておきます。」
義母克子
「そうねぇ。
一郎の嫁じゃないから、
うちのしきたり全てを
教えてるわけじゃないし、
このくらいはねぇ。
香織さんは普段は英語で
お仕事されているようだけど、
日本の習わしも知らないようでは
一人前の女性には
なれませんからねぇ。」
…モチの味付け用の
きなことあんこを
皿に分けてなかっただけで
こんなに色々いうのか。
克子は若い頃からここに嫁いで
克子にとっての社会は
この割烹料理屋しかないのだ。
老舗のお店の看板を
長年支え続けてゆくことは
本当に大変なことだと思うし
香織はそんな義母のことを
この頃はまだ
尊敬したりもしていたし
次郎のためにも
なんとか良い関係を築いてゆきたいと
必死な時期だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
いつも読んで下さってありがとうございます。
これまでのシリーズはこちら。
シーズン1 ミキの芝生 『DVモラハラ夫の不倫』
シーズン2 武田さんの芝生
シーズン3 紀子さんの芝生 『夫の不倫相手は、まさかのあの人。』
シーズン4 琴美ちゃんの芝生 「お笑い芸人の男。」
シーズン5 読者さんの芝生 「意見を聞かせてください。」
シーズン6 みどりさん親子の芝生 「父親の不倫を見つけました。」
シーズン7 春菜ちゃんの芝生『婚活アプリで結婚相手は見つかるか』
シーズン8 青木の芝生 男友達の告白。
シーズン9 紗子さんの芝生 「見て見ぬふりん。」
シーズン10 百合子ちゃんの芝生 「運命の人の本性は。」