シーズン6
大地くん・・・シーズン6の主人公。高校2年生の男の子。これからの出来事を、長男として必死に受け止めてゆく姿を書いてゆきたいと思います。
妹ちゃん(葵)・・・大地くんの妹。中学2年生。たまたま見た父親の携帯から、浮気を知る。
お母さん(みどりさん)・・大地くんのお母さん。40代半ば。息子に楽器を教えてくれる人を探しているというみどりさんとは、知り合いの伝手で繋がりました。
お父さん(タケシ)・・・大地くんと妹ちゃんの父。不倫相手のヒロミには、タケシくんと呼ばれている。
若林ヒロミ・・・・お父さんの不倫相手。大地くんの友達である裕介くんの母。
若林裕介・・・ヒロミの息子。
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タケシとヒロミの
くだらない会話の途中に
私はパソコンのLINEで
みどりさんに合図を送った。
本当ならこの次の手を使う前に
タケシにには旅行を
中止にしてもらいたかった。
このままでは
家族を失うかもしれないのに。
バカだね。
◆
みどりさんはキッチンに移動した。
あたかもそこに
ずっといたかのように。
ほどなくしてタケシは
一旦トイレに入った。
携帯を握りしめたまま。
その間にみどりさんは
ベランダに携帯を取りに行く。
そして私はみどりさんに
非通知で電話をかける。
さぁ、次の手だ。
5分以上トイレに入っていたタケシは
何食わぬ顔で戻ってきて
リビングでつまみを食べながら
テレビを見始めた。
みどりさん
「ねぇ。
あなた次の週末
仕事じゃなくて
旅行に行くの?」
みどりさんは、
笑うことも怒ることもなく
淡々とした口調で告げた。
タケシ
「え?何が?
どうしたんだよ急に。」
みどりさん
「どうやら行き先も
あなたが言っていた場所とは
違うみたいだけど。
どうして?」
タケシ
「だから、一体何がどうしたの?
急すぎて
意味がわからないんだけど!」
そうでしょ。
意味わからんでしょ。
何がなんやら
わからないでしょ。
それが狙いです。
そう、ここからの作戦は
(大混乱作戦。)です。
みどりさん
「なんで否定しないの?」
タケシ
「いや、否定もなにも
さっきまでなにも言ってなかったのに
ちょっと席を外して戻ってきたら
急にそんなこと言い出すの
おかしいでしょ。」
そうよね、おかしいよね。
みどりさん
「さっきあなたが
ベランダに行っている間に
知らない人から私の携帯に
不在着信で電話があったの。」
本来なら
裕介くんを泊まりに来させようとした
ヒロミを疑うところだが
ベランダでついさっきまで自分が
ヒロミと話していたわけだし
きっとトイレでも
LINEをしていただろうから
電話の相手がヒロミじゃないことは明白。
それなら一体どこから聞きつけたのか
脳内パニックよね。
タケシ
「知らない人って?
不在着信なら
出る必要ないじゃないか。」
みどりさん
「まぁそれはそうなんだけど…
とにかく
その人に言われたの
ご主人の来週の旅行先
私知ってますよ。
って。怖かったから
質問も返さず切っちゃったけど
どういう意味なんだろうね。」
タケシ
「…どういう意味って
そんなの信じる必要ないよ。
俺はちゃんと
出張なんだから。」
きっと心臓は
バクバクしているだろう。
みどりさん
「そうだよね。悪戯だよね。
じゃああの電話
なんだったのかなぁ・・」
結局タケシは
みどりさんの携帯に残した
不在着信も見なかったし
電話の相手が
男か女かも聞いてこなかった。
嘘をついたり
取り繕ったりするのが得意なタケシだが
今回ばかりは
なにも思い浮かばなかったようだ。
だけどここからさらに
追い込みますからね。
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これまでのシリーズはこちら。
シーズン1 ミキの芝生 『DVモラハラ夫の不倫』
シーズン2 武田さんの芝生
シーズン3 紀子さんの芝生 『夫の不倫相手は、まさかのあの人。』
シーズン4 琴美ちゃんの芝生 「お笑い芸人の男。」
シーズン5 読者さんの芝生 「意見を聞かせてください。」