ずっとオカシイと思っていたことがある。
それは食べ物につける「生」なんとかのブーム。確か20年くらい前に生チョコのブームから始まったと記憶している。チョコレートってそもそも焼き菓子で火を通してあるんだから論理が破綻してますよね?それを生クリーム多めに使っているだけで生チョコって。
なんとなくキャッチーなネーミングで何も考えない愚民たちをダマくらかしてモノを売ろうという作戦がアクどいぞ。最近では生食パンやら生カヌレ、生ドーナツなんてものまである。アホじゃなかろうか。
先日スーパーに行った時のこと。揚げ物でも買おう(概ね自炊派だが油が無駄になるので揚げ物などは買うことにしている)と総菜売り場を覗いていたら妙な表記を八犬!いや発見。
その名も「生パン粉のアジフライ」数時間後には腐った魚と濡れたパン粉がでろんでろんになって悪臭を発しているような名前だ。パン自体焼いてあるのにパン粉は更にパサパサに乾燥させた後砕いてバラバラにしてアジに塗りたくって更に油でこんがりと揚げて生感が一つもないのに生が付くんかい。
信頼できるwikiさんで「生(なま)」を調べると、「加熱や乾燥や冷凍していない食物の状態」とある。一体、なま、なのか、焼いているのか。ネーミングからは正解が分からない。
同じように、自然なのか、人工なのか。人間は時折分からなくなるらしい、という話が今回の話。自然農法なんてもんは生食パンと同じってことだゼ、すっとこどっこい。
ま、いつものやつどーぞ。
梅原デザイン事務所 梅原 真 様
いつも有り難うございます。
恥ずかしながら弊社は自然卵ネットワークという会に入会しています。恥ずかしながら、と言ったのは、世の中には自ら自然農法やら自然養鶏(自然卵)やらと名乗る農家がたくさん居り、彼らは農業と自然の区別が全くついていないと常日頃から思っていたからです。
農業(畜産)は人工的(アーティフィシャル)な営みであり自然や天然(ナチュラル)の対義に相当するためそもそも論理が破綻しています。或いは彼ら自然農法家、自然養鶏家は超人工的な営みを行い、あたかも自らを神とでも思っているのでしょうか?
本当の意味の自然卵というのは、飼育していないスズメの卵だったりカラスの卵しかあり得ません。つまり狩猟民族であった縄文時代まで遡らねばならない。という思考の末、自然卵なんて名乗るのは絶対に止めようと決めたのです。売れるためなら何を名乗っても良い訳がないではないですか。
私が養鶏を始める際に自然養鶏なるものの本を数冊読みましたがそれは平飼いや放し飼い養鶏の本であって決して自然の卵を採集してくる方法ではありませんでした。自然農法に関しても同じです。彼らを非常にうさん臭く厭わしく思うのは物凄く正義感が強く排他的であたかも文明を拒絶するかのような発言が散見されるからです。
農業は悪いことでしょうか?
そして彼らは自然の生態系を全く壊さない絶対的正義なのでしょうか。実際彼らは神がかったまるでカルト教団の教祖みたいな人が多いように見受けられます。が、聞いた話によると、有機農法のカリスマと呼ばれたある有名な篤農家(農法研究に熱心な農家)は農薬を使わず美しい作物を作ることで有名だった。だが実態は夜な夜な暗闇に紛れて農薬をかけまくっていたらしい。
見つかった彼曰く、綺麗な作物なんて農薬かけないでできる訳がない、と。
ま、そんな経緯から自然卵などと自ら名乗るモノには近づかないことにしておりました。ところが冒頭の自然卵ネットワークというグループへ意に反してウッカリ入ってしまったのは単に卵の紙パックが安く手に入るという理由からです。
実は卵の紙パック業界は1社の独占状態なのです。作っているメーカーは数社あるのですが売り上げは日本モウルドという会社が確か8割くらいを占めている。このためメーカーが極めて強気です。スーパーに売られている透明なプラスチックのパックは一個0.1円とかそれくらいの価格に対して紙のパックは一個50円近くします。原料は牛乳パックのリサイクルなので完全に独占価格です。これが自然卵ネットワークに入ると団体割引で20円近く値引きされるのです。この実利的な意味だけで嫌々ながら入会せざるを得なかった、という次第です。
さて、本題。
先日この会の会長氏とメールでやり取りする機会がありました。今年うちの農場で悩まされている鶏伝染性気管支炎(通称IB)について2.3メールでやり取りをしました。私がIBで悩まされている話をそれとなくすると、彼から「IBは法定伝染病です」なんていう仰々しいタイトルの返信が送られてきた。知ってますがな。
曰く、「IBは人間のコロナウイルスと同様に強毒で変異も早く養鶏業界で最も流行している。人里離れた山奥ならともかく養鶏場のある所なら何処にでもいる。卵の殻が白くなるのが特徴だ。従ってNBワクチン(IBウイルスワクチンの一種)は必須、絶対やるべきだと断言する。」とのこと。やってますけど・・・知ったかぶり、というか私がワクチンを否定している立場かのような発言に唖然。
あ、自然卵の会員だからワクチン否定派だと思った訳ね。って、あなた会長じゃないスか。
彼のブログのプロフィールには、「1983年から薬剤を一切使用しない自然養鶏に取組んでおります」と書かれている。が、ワクチンを薬剤と思っていないのだろうか。ワクチンは生物由来のいわゆる生物製剤でケミカルなイメージの薬ではないように思うかも知れないが紛れもなく医薬品です。いや、本当はワクチンを否定したいのだが経営的理由から否定できないという訳だな。
余り興味はないとは思いますが鶏伝染性気管支炎(通称IB)について少し触れます。
鶏伝染性気管支炎(IB)のウイルスIBVはコロナウイルス同様などではなく鶏に感染するコロナウイルスそのものです。コロナウイルスは自然界に多様に変化しておりあらゆる生物に感染するよう変異したウイルス群です。人間に感染する種類で毒性が低く単なる風邪と言われているものも多数あります。
鶏に感染し産卵数を低下させたり死亡させたりするのは大きく分けて6グループほど知られており、土着のもの、つまり恐らく微生物などに寄生しているものも多い。従って山奥だからと言って感染リスクが少ない訳ではない。また勿論養鶏場間を水平感染するのでエサなどの物流を考えた場合、養鶏を生業とする限りIBVから逃れることはできないと言っても過言ではないでしょう。人間なら風邪をひくことから逃れることができないのと同様です。
ここ2-3年ニワトリノニワでも二種類のコロナウイルスが家畜保健所の検査により検出されておりました。従って興味を持ってネットに転がっている論文や家畜保健所に貰った論文を幾つか読んでいたのである程度知識はありました。特に今年春先に検出されたIBウイルスは今までのものより毒性が強くヒヨコが多数死に農場全体の産卵数を著しく下げておりました。
このウイルスはマサチューセッツ株と呼ばれるグループに属するものでこれまで投与していた、自然卵の会長氏お薦めのNBワクチンでは効果がありません。そこで新たなるワクチンを投与することになったという次第です。鶏用のワクチンのほとんどが飲水や噴霧により投与できるの楽ちんなのなのと、IBワクチンは普及しているのでかなり安価で助かるのですが。
私としてもワクチンなどできる限り投与しない方針ではあります。しかし最小限のワクチンは行わないと近隣の養鶏場に迷惑を掛けることになりかねないのです。養鶏を営み卵を売って生計を立てている限り病気と闘うことは必然。抗生物質の投与は否定できても遺憾ながらワクチンは必須と言えます。
集団で生活する社会的生き物の宿命。本当は自給自足に毛が生えたくらいの規模、数十羽程度の鶏を飼っていればワクチン投与なんてしないで済むのでしょうけど。人も鶏も。
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