知り合いの9割以上は...並以下だ!

 知り合いの9割以上は...並以下だ!

  知れば知るほど薄くなるのが人間の価値...最初から長持ちしない

殺人に見える形を先に整える

机の上にあるものを動かし
向きをそろえ
触った跡が残りそうな場所を
何度も見直す

練炭という言葉だけが
部屋の中央に置かれた物よりも
大きく見える

手袋をした指先で物の端を押し
少しずれれば戻し
戻しすぎればまた動かす

誰かが見たときに
どういう順番で目に入るかまで
考えたように配置するけど
整えたはずの手元ほど
細かいところで崩れる

紙の角が一枚だけ浮く
椅子が数センチ斜めになる
触れた場所を確かめるために
指を引き、また伸ばす
その動作を一度で終えればいいのに
二度、三度と同じ場所へ戻る

視線だけが先に動き
手があとから追いつく
爪先は出口の方向を向いたまま
上半身だけが部屋の中央に残っている

「これなら、そう見える」

短い言葉を置いたあとまた紙を直す

直した紙を見て
今度はその直し方が
不自然に見えないか確かめる

物を動かした指を拭き
拭いた布を畳み
畳んだ角をそろえる

そろえた角が気になって
もう一度開く
閉じる
置く
少し離れて見る
近づいて見る

殺人に見せるための部屋なのに
残っていくのは
何度も同じ場所を触った跡だけだった

冷たい空気の中で指先だけが忙しい

最後に残った紙の端を押さえた指が離れ
その紙だけが
最初から動かされていないような顔で机に残っている