ハッ!
夢か・・・。













「あんた達・・・」

アリスは目の前に現れたニーナ、音無、健を見つめて声を漏らす。

「お待たせしましたにゃ」

「・・・間一髪だった」

「お前は厄介な事しかしねぇな」


各々がアリスに言葉を投げる。

アリスは緊張が解けた様に膝から崩れ落ちた。


「それで・・・てめぇが敵って事でいいか?オッサン」


無表情のままこちらを見守っている男に健が声を投げる。

「・・・ふ」


「?」


「ふふはははは!!はははははハハ!!小賢しい!」

男は咆哮する。

男の周りに3対の炎球が出現する。

「消し飛べぇえ!!」

「スペル『成長する氷の壁!』」

アリスの叫びに応じる様に目の前に氷壁が出現する。


飛んで来る炎球が氷壁にぶち当たる。

「いくら人数が増えた所で私の敵では無い!愉快な死体に仕立ててやるからさっさと死ねぇ!」


次々と炎球が当たり、面積を小さくしていく氷壁。

「散って!」

手を前に突き出したままアリスが叫ぶ。


その声を受け、四方八方に散るニーナと音無。

「てめぇが残ってどうすんだよ!!」

俺は最後まで残ったアリスを強引に抱き寄せ、左に大きく飛んだ。


俺達は男中心に三角形に広がった。


「お次はこっちから行きますにゃ!!」

「・・・加勢」


最大限に身体の能力を引き出したニーナと、それと同じ速さで走り出す音無。

音無は一体何者なんだろうか・・・。これが終わったら聞くことにしよう。


男の2メートル前で二人の姿が消える。

「む?」


目の前の敵がいきなり消えた事に男が疑問符を浮かべる。

と、次の瞬間には二方向から蹴りが放たれた。

「ハァァ!!」


「・・・喰らって!」

ドォン!と衝撃波を撒き散らす。

「少々油断していた様だ。やんちゃなんだね君達」

男は無傷のまま二人の蹴りを両手で止めていた。


「スペル『見捨てられた神の鉄槌』!」

静止状態の三人にアリス魔法によって作られた大質量の岩石が降り注ぐ。


それに合わせて二人が男から飛びのく。

男がそれに応じて炎球を上に放つ。


なんと言うかそこから人間離れした戦いが繰り広げられ始めた。

ニーナが消え、音速を超える拳を放ち、音無が斬撃を繰り出し、アリスが魔法をぶつける。


そんな光景を俺は半目で見守っていた。

なんと言うか凄い疎外感だ。
走りたくなる最後・・・。
抑えろ・・・。













司は俺の顔を上げさせると、冷たく言い放つ。

「今君の出来る事は二つ。その寿命を削って彼女達を助けるか。それともここでじっとして彼女達が死ぬのを待ってるかだ」


司の言葉が俺の思考を削り取る。

「行け。考えるのはそれからだ」


「・・・っち」

促される様に部屋を飛び出す。


シン。と静まり返った部屋の中で司は静かに謝った。

「済まない氷山健・・・。僕には結末を付けられない。
だから・・・頼んだぞ」













ドパァン!!と川が爆発した。


「・・・・・・」

アリスは声に成らない声を上げていた。


ショッピングモールで出会った男は、自分を死にかけに追い込んだ張本人だった。


瞬間的に空間飛躍で川まで飛んだはずだった。

しかし、この男は追って来た。


「ふぅ~ん。君結構凄い魔法使うんだね。関心関心」

一人で頷く男。


空間飛躍魔法は演算が非常に大変で、たった一人で発動するには範囲が限定される。


ショッピングモールから川まで500メートル。

それがアリスの限界だった。

「さて、この前は殺しそびれたけど今日は逃がさないよぉ」


目の前の男が手の平を上に向ける。

キュボ!と野球ボール大の炎球が出現する。

まずい。とアリスは身構えた。


さっきは間一髪避けて、川が吹っ飛んだがもろに喰らえば爆死コースまっしぐらだ。

「それじゃあバイバイ~」

友人に別れを告げる様な感じで男が腕を振る。


その動きに伴って炎球が人間の認識速度を上回るスピードで発射される。

「・・・っ!!」


動きに合わせ、真横に飛んだアリスに向かって炎球は飛んできた。


(あぁ・・・。私死ぬのかしら)

心の中で走馬灯を見はじめたアリスに幸運が訪れる。

「はぁぁぁあああアアア!」

雄叫びを上げてニーナが真横から炎球にドロップキックをかましたのだ。

進行方向を無理に変えた炎球は住宅街に飛んで行く。


「・・・二刀流。剣の舞」

その先には苦無を二刀に持った音無。


炎球が音無を襲う。
かの様に見えた。


しかし炎球は音無をすり抜け、空中で霧散したのだった。


一連の事態を男は無表情で見守っていた。


しかしアリスの幸運はまだ尽きて居なかった。

「ああ・・・。考えるの面倒になった」

健が・・・来た。
フラグ回収は間に合うのか・・・っ!?










暗闇の中で俺は膝を抱えて居た。

先程告げられた真実が頭の中をぐるぐる回る。


「・・・」


目の前を広がる闇が気分を右肩下がりにしていく。


『ここでもっと落ち込む事を一つ』

嫌~な予感が背筋を凍らせる。

ギギギ。と壊れたロボットの様に首を少女に向けた。

『私が健に宿っているのは理解出来たでしょう。では魔法である私が存在する為のエネルギーは、何処から来るか』


一旦言葉を切って、ドレスを翻して言い放つ。

『それはつまり。健の寿my・・・』

彼女の言葉は最後まで聞こえなかった。

俺の最速ワンパンが顔面を捕らえたからだ。


まるでボロ雑巾の様に転がりながら、少女が遠ざかって行った。

「ふざけんなよクソ魔法が!!」


大分遠ざかった少女に怒鳴り声を投げる俺。


ピクリとも動かない少女の頭に足を乗っけながら、健が邪悪な顔で語り掛ける。

「誰の許可取って使ってんの?人の大事な寿命をさぁ!
さっさと消えろよ。消えてくれマジで。
いや。頼みます消えて?」


高速で浴びせられる罵詈雑言。

しかしその程度で収まる健ではないのだ。


『考えてみて・・・。私、宿ったら移動出来無いのよ・・・?』

「うぐっ!」

言われて見ればそうである


宿ったからと言って直ぐに死ぬわけでも無いし、身体の傷を消してもくれた。


口調が癪に障るが悪い奴では無いかも知れない。

『そんな事より貴方にお客さんよ』

最後にもう一発殴ろうか考えて居ると、少女が無理矢理俺を元に戻した。









「やぁ」

目の前にうざい位の笑い顔があった。

「何で居んだよ。校長」

そう。目の前に居る男こそ紛れもない。

ドSの雷鳴司その人である。

「僕は告げに来たんだ」

相変わらず笑顔を崩さない司に健は怪訝そうな顔をする。

「君の家族が襲われてる。星川河川敷でね」

「なっ・・・!?」


「しかも相手はアリスを一撃で倒した男だよ」


司の言葉は所々に魔法使いのワードが混じっている。

それが意味するのはつまり。

「お前・・・魔法使いなのか?」

「正確にはだっただよ。担い手君」


そういって俺の机に腰掛けた司が告げる。

「さぁ選べ。君の命と女の子達の命。どちらを取る?」


司は表情を無にして俺に問い掛けた。




次回更新に続く。