頑張りましょうかね・・・











門番であるクマオが門に残り、健は木刀片手に村を目指していた。


木刀はクマオが村に向かう前にくれた物だ。

「・・・嫌な予感」


渡される際のクマオの言葉が頭を過ぎる。

『彼らに殺られないようにして下さいね?』


「怪しい・・・」

『ねぇ健』

と、考え事の最中に頭の中に声が響いて来た。

「ん?フローか」


声の主は健の中に宿るアリス達の世界の古代魔法。封印の炎ことフローだ。

『人間が多数。木の陰に隠れてるわ』

やっぱりな。と俺は頭を振った。


最初に言われた言葉は必ず回収される。と誰かが言って居た(気がする)。

『それ、使えるの?』


フローが言ったのは俺の右手に握られた木刀の事。

「使える訳ねぇだろ。俺はただの人間だぞ」


『でしょうね。仕方ないわねぇ』

轟ッ!!と体から深紅の炎が噴き出す。


「おい!?」

『敵は武器を持っている!来るわよ!!』

フローの言葉が切れると同時に、無数の影が健に向かって飛び出してきた。


「御命頂戴!!」

誰かがそんな風な事を叫ぶ。


襲い掛かってくる敵をカウンターの要領でフローが俺の体を使って吹き飛ばす。


『おらおらおらぁ!!温いぞお前ら!』

何だかどっちが悪役か分からなくなって来る構図だ。


「やめぇい!!!」

5人目を吹き飛ばした時、野太い声が森に響いた。

「その方は客人ぞ。誰が醜態を晒せと言った」

白髪隻眼の老人が声を上げると、武器を構えて居た人々が武器を降ろした。

「お客人。こちらの者達が御無礼を働いたようで」

頭を下げる老人。


それに合わせて噴き出す炎は体に仕舞われた。

「ご案内しますよ。氷山健様」


白髪の老人がニッコリと笑った。








次回更新に続く
物語は始まったばかりです・・・。









「グォォオオ!!」


「アリス!ニーナ!散れ!!」

臨戦体制を取った熊に健は二人に叫ぶ。


熊のパンチは一撃必殺らしいしな。

「・・・ただいま」


「お帰りなさいませお嬢」

目の前の楓が言葉を発すると、熊がひざまずいて流暢な日本語を口にした。


「・・・あ?」

「お嬢。こちらの方々は?」


「・・・あっちの家族。健の荷物を頼む」

「御意」


ズンズン。と地響きをさせながら熊が近づいてくる。

「お荷物を」

差し出される熊の手。

反射的にその手に荷物を乗せてしまう。


「こっちの世界の熊は喋るのねぇ」

「そうですにゃ・・・」


「ってちょっと待てぇ!!」

俺の声が森の中に響く。

「なんで熊が喋ってんだよ!なんで熊と顔見知りなんだよ!なんで二人は納得してるんだよぉおおお!!」


俺は度重なる非日常 な出来事にキレた。

俺の家の居候は毎回毎回混沌を引き連れて来るのか全く検討が付かない。


「自己紹介が遅れました。私は門番のクマオです」

「そのまんまじゃねぇか」


「・・・先に行ってるから」


音無がアリスとニーナを引き連れて森の中に消えた。

残される俺と自称門番のクマオ。


「・・・氷山殿」


「・・・なんだクマオ」

「この世界にはツッコんじゃいけない事があるのです」


「・・・ゴメン」

熊に諭された主人公であった。








クマオと共に歩く事数分。

目の前に巨大な木の門が見えてきた。

「クマ。あれが門なのか?」


「えぇ。この胡蝶門こそ私の勤める場所であり」

クマオが門を両手で押しながら言葉を切る。

「楓お嬢の故郷。水狐の里です」


門を抜けると、そこには大きな村が広がって居た。

「・・・すげぇ」


門があるのは村の一番高い所。

そこから緩やかな下り坂になっていて、村の中まで続いていた。


「ようこそ。水狐の里へ」

横のクマオが目の前にやって来て、ひざまずき俺に頭を下げた。

「・・・恥ずかしいから止めてくれ」

静かに俺は呟いた。




次回更新に続く
壁∥д・)<始まります。



第一章『音無楓』


「・・・」

「・・・」


全てが凍てつくような沈黙が食卓に流れる。

「「はぁぁああ!!」」

健とアリスが同時に動いた。

狙うは最後の一枚のベーコン。


アリスのフォークを健の箸が止め、木製の箸なのに火花が散る。

「貰ったぁあアア!!」

アリスのフォークを跳ね上げ、健の箸がベーコンを捕らえる。

と同時にニーナが手づかみで口に放り込んだ。

「ご馳走様ですにゃ」


「99戦99引き分けか・・・」


「そうね・・・」


朝、昼、晩と戦い続け一ヶ月。

学校は夏休みに突入していた。


勝負の度にニーナが食べるのがオチだけどな。

壮絶な勝負の後片付けをしていると、インターホンが鳴った。


「はーい。どちらさまで・・・」


健の言葉はそこまでで途切れる。

突如伸びてきた腕に襟首をガシッ。と捕まれたからだ。


「・・・ただいま」


「楓!?」

そう。そこに居たのはあの事件以来姿を消していた、音無楓その人だった。


「・・・いきなり呼び捨てなんて。ポッ」


表情一つ変えずに恥ずかしそうな擬音を口で出す楓。

何がしたいんだコイツ・・・。


「・・・帰郷します」

目の前の楓は俺の襟首を掴んだまま、そんな風な事を言った。


「帰郷?お前って帰る所あったのか?」


「・・・私が家無し子みたいな事を言って居ますね。ショボーン」

「・・・・・・その擬音を口で言うのはなんだ?」


「・・・キャラの後付け設定は日常茶飯事」

「それは言っちゃいけません」


健のツッコミが鋭く響いた。






家に置いて行くのが不安なので連れて来たアリス&ニーナと、俄然やる気の無い健は楓に連れられ森の深部まで歩いて来ていた。


「楓さん・・・。いつまで歩くおつもりで?」


「・・・もうすぐ」

その返しに俺はため息を吐く。


一時間前から全く同じ返しをされてれば必然的に出るってもんで。

「こう言うのがこっちの世界の森なのねぇ」

「薄暗い雰囲気ですにゃあ」


周りを見渡しながら魔法使い二人が感嘆の声を漏らす。

「自分の荷物は自分で持てよ・・・」


げんなりしながら健が呟くと、楓が立ち止まり言い放った。

「・・・出迎え」


楓が指差した先には。

「グォォオオオ!!」

巨大な熊が立っていた。


冗談だろ?


次回更新に続く