壁∥д・)<始まります。



第一章『音無楓』


「・・・」

「・・・」


全てが凍てつくような沈黙が食卓に流れる。

「「はぁぁああ!!」」

健とアリスが同時に動いた。

狙うは最後の一枚のベーコン。


アリスのフォークを健の箸が止め、木製の箸なのに火花が散る。

「貰ったぁあアア!!」

アリスのフォークを跳ね上げ、健の箸がベーコンを捕らえる。

と同時にニーナが手づかみで口に放り込んだ。

「ご馳走様ですにゃ」


「99戦99引き分けか・・・」


「そうね・・・」


朝、昼、晩と戦い続け一ヶ月。

学校は夏休みに突入していた。


勝負の度にニーナが食べるのがオチだけどな。

壮絶な勝負の後片付けをしていると、インターホンが鳴った。


「はーい。どちらさまで・・・」


健の言葉はそこまでで途切れる。

突如伸びてきた腕に襟首をガシッ。と捕まれたからだ。


「・・・ただいま」


「楓!?」

そう。そこに居たのはあの事件以来姿を消していた、音無楓その人だった。


「・・・いきなり呼び捨てなんて。ポッ」


表情一つ変えずに恥ずかしそうな擬音を口で出す楓。

何がしたいんだコイツ・・・。


「・・・帰郷します」

目の前の楓は俺の襟首を掴んだまま、そんな風な事を言った。


「帰郷?お前って帰る所あったのか?」


「・・・私が家無し子みたいな事を言って居ますね。ショボーン」

「・・・・・・その擬音を口で言うのはなんだ?」


「・・・キャラの後付け設定は日常茶飯事」

「それは言っちゃいけません」


健のツッコミが鋭く響いた。






家に置いて行くのが不安なので連れて来たアリス&ニーナと、俄然やる気の無い健は楓に連れられ森の深部まで歩いて来ていた。


「楓さん・・・。いつまで歩くおつもりで?」


「・・・もうすぐ」

その返しに俺はため息を吐く。


一時間前から全く同じ返しをされてれば必然的に出るってもんで。

「こう言うのがこっちの世界の森なのねぇ」

「薄暗い雰囲気ですにゃあ」


周りを見渡しながら魔法使い二人が感嘆の声を漏らす。

「自分の荷物は自分で持てよ・・・」


げんなりしながら健が呟くと、楓が立ち止まり言い放った。

「・・・出迎え」


楓が指差した先には。

「グォォオオオ!!」

巨大な熊が立っていた。


冗談だろ?


次回更新に続く