第二章に入る前に番外を。











薄暗い部屋。

几帳面に空調が管理された部屋で、司は立たずんで居た。

「調子はどうだい?」

『・・・俺に何の用だ』


「昔馴染みが話して居るのに君はつれないね」

悲しげに声を上げる司の前には大きな氷の塊。

『俺の魔法を喰らって死ななかった化け物だろう』

その声は氷塊の中から聞こえるのだった。


「魔力を焼かれ人の身に堕ちた気分はどうだい」

『どうだっていい。魔力が有ろうと無かろうと俺は俺だ』


「ふふ・・。君らしい答えだ」

司は部屋の扉に手を掛けて言った。

「解ける事無い封印の中から彼らを見守る事だね。彼らはきっと良くなって行くはずさ」

『・・・どうだかな』

そう答えた男を尻目に司は部屋を後にした。









「パパは警戒心が足りないのよ」


スクエル屈指の大豪邸、氷山ハウスの裏から抜け出した鈴はそう呟いた。


何しろ家に居た頃から女心にとことん鈍かった兄である。

「女の子と同棲なんて危なすぎるよ!!私が止めないと・・・」


若干暴走気味の氷山妹。

焦ると周りが見えなくなる所がそっくりだ。

「確かここら辺に・・・。あった!」

鈴が探して居たのは人間世界に通じる穴である。


最もそれはスクエルには何処にでも合って、探す必要は無いのだが。

「待っててお兄ちゃん。私が守って上げるからね!」


暴走する妹は最終鬼畜の様に穴に飛び出して行った。










「ねぇ富田君」

「何だい華ちゃん」


「私達もう出番無いのかしらね」

「モブキャラの宿命だからね。仕方ないさ」

「そうね。名前も忘れられるのがモブよね」


「ちなみに俺の名前富家だから」

「・・・ごめんなさい」


二人の会話はいつまでも続いたと言う。









次回更新に続く



どうでしょうか?

自分的にはモブ達の雑談が好きだったり(笑)
自分は合っているのかな・・・。









「おぉおおおりゃぁああ!!」

「ただ振るだけでは武器を活かせません!!」


老人が俺に木刀を支給してから、3時間が経とうとしていた。

健は当初の目的を忘れて、老人に木刀を振り続ける。

「私達だってっ!!」

木刀の剣筋を捌きながら、老人は叫ぶ。

「彼女を、楓を贄にしたくはなかった!!しかし楓は既に心を決めていたんですよ!」

それは心の叫びだった。


まるで自分の無力さを歎く様な、そんな叫びだった。

「・・・ってねぇ」

「何ですか!」


「てめぇら分かってねぇよ!!」


声を上げ、疾走する健。

「辛いのはお前達じゃない!!なのに何で楓を支えてやる人が居ない!」

上段からの袈裟切り、続け様に燕返し、右からの胴。


声を荒げると共にスピードが増して行く健。

「例え贄になる決意が合っても、楓を支えてやらなかったのはてめぇらだ!」

遂に健の突きが老人のどてっ腹にヒットした。

「・・・それだけ楓を思って下さるお方は、貴方が初めてだ」


全力の突きにも怯まなかった老人は静かに腰を降ろした。

「これから楓の支えになって貰えないだろうか。彼女の近くには貴方がいる」


「言われなくても支えになるだろうよ」

健は木刀を投げ捨て言った。

「俺の大切な家族だからな」









戦い終わった老人から聞いた話はこうだった。

楓は贄として選ばれ、その身に水狐を宿したらしい。

そして水狐は深い眠りに着き、楓は封印の巫女として村を守っていたという。


「宿す・・・か」

水狐は強い妖術を持っており、一度暴走すれば楓は弾け飛ぶ。

自分の中に何かを宿すと言う所に健は同じ境遇を感じていた。


「健殿」

考え事をしながら歩いて居たら、クマオが目の前にいた。

「どうしたクマオ?」

「非常に申し上げにくいのですが・・・」

返答を渋るクマオ。

「言って見ろって」


「実は村に通じていた山道が落石で塞がれた様で、しばらくこの村から帰れません・・・」


クマオが告げた真実を俺はため息混じりに聞いた。


どうせこんな事だろうと思ったさ。







   第一章

    終
乾いた笑いが出るようになりました。











「こちらでございます」

白髪隻眼の老人に連れられ、俺は村の最深部の豪邸に連れて来られていた。


(ここは時間軸が違うのか・・・?)

視界に写る物全てが古い。


日本の情緒ある風景と言えばそうなのかも知れない。

「お掛け下さいな。お客人」

周りに気を取られて居る内に、俺は広間に付いて居た。

「自己紹介は要るか?」

「要りませぬよ。そちらよりも、こちらの説明が欲しいのでは?」

笑いながら語りかけて来る老人。

「水狐の里だっけか。この村の名前」

「左様。この村の名前は水狐の里。文字通り水狐を奉る為の村でございます」


「楓はここの出身で合ってるよな?」

俺の質問に老人は高らかに笑った。

「いや失敬。あんまりおかしな事を言うものですから」

この老人が言う事はいちいち俺の神経を逆なでする様だ。

「出身ではありません。彼女はこの村の贄なのですよ」









時同じくして、別世界スクエルでは。

「お父さん~!お父さぁん~!」


「何だ鈴?死にそう見たいな声を出して」

「お兄ちゃん大丈夫かな?心配だよぉ」

「心配要らないよ。だって健は・・・」

一息入れて、そして父は言う。

「俺の息子だからな!!」


「・・・ますます心配になって来たよ」










「贄・・・だと?」

「えぇ。その通りです。彼女は水狐を鎮める為に贄となった」


「・・・っざけんなよ!!」

頭より体が先に動いて居た。


足に魔力を込め、解放する。

それだけで俺の体は老人目掛け跳んでいた。


この原理はニーナから教えて貰った。

「うおぉぉぉおお!!」

ぎりぎりまで引いた右手を一気に打ち出す。


老人の体は吹き飛ばされる。

はずだった。


「無駄ですよ」

ドゴォン!と鈍い音が響き渡る。


「なっ!?」

俺は驚愕した。


老人は片手だけで俺の拳を掴んでいたから。

「まぁ落ち着きましょうか」

老人は拳を握ったまま俺に払い腰を掛ける。

それはつまり受け身が取れないと言う事で。

「げふっ!」


思い切り床に叩き付けられた俺は、呼吸を吐き出した。





次回更新に続く