物語は始まったばかりです・・・。









「グォォオオ!!」


「アリス!ニーナ!散れ!!」

臨戦体制を取った熊に健は二人に叫ぶ。


熊のパンチは一撃必殺らしいしな。

「・・・ただいま」


「お帰りなさいませお嬢」

目の前の楓が言葉を発すると、熊がひざまずいて流暢な日本語を口にした。


「・・・あ?」

「お嬢。こちらの方々は?」


「・・・あっちの家族。健の荷物を頼む」

「御意」


ズンズン。と地響きをさせながら熊が近づいてくる。

「お荷物を」

差し出される熊の手。

反射的にその手に荷物を乗せてしまう。


「こっちの世界の熊は喋るのねぇ」

「そうですにゃ・・・」


「ってちょっと待てぇ!!」

俺の声が森の中に響く。

「なんで熊が喋ってんだよ!なんで熊と顔見知りなんだよ!なんで二人は納得してるんだよぉおおお!!」


俺は度重なる非日常 な出来事にキレた。

俺の家の居候は毎回毎回混沌を引き連れて来るのか全く検討が付かない。


「自己紹介が遅れました。私は門番のクマオです」

「そのまんまじゃねぇか」


「・・・先に行ってるから」


音無がアリスとニーナを引き連れて森の中に消えた。

残される俺と自称門番のクマオ。


「・・・氷山殿」


「・・・なんだクマオ」

「この世界にはツッコんじゃいけない事があるのです」


「・・・ゴメン」

熊に諭された主人公であった。








クマオと共に歩く事数分。

目の前に巨大な木の門が見えてきた。

「クマ。あれが門なのか?」


「えぇ。この胡蝶門こそ私の勤める場所であり」

クマオが門を両手で押しながら言葉を切る。

「楓お嬢の故郷。水狐の里です」


門を抜けると、そこには大きな村が広がって居た。

「・・・すげぇ」


門があるのは村の一番高い所。

そこから緩やかな下り坂になっていて、村の中まで続いていた。


「ようこそ。水狐の里へ」

横のクマオが目の前にやって来て、ひざまずき俺に頭を下げた。

「・・・恥ずかしいから止めてくれ」

静かに俺は呟いた。




次回更新に続く