ドイツのナチやデンマークのナチをと戦った、ドイツ占領下で活躍した実在のレジスタンスを描いた物語。
レジスタンスのリーダー・ヴィンター(ピーター・ミュウギン)の命令に従ってナチの要人を暗殺していたベント(マッツ・ミケルセン)とヨーン(トゥーレ・リントハート)のコンビは、この命令が本当に正しいのか、次第に疑問を抱くようになっていく。
その過程で登場した敵か味方か分からない女ケティ・セルマー(スティーネ・スティーンゲーゼ)に惑わされ、「何の為に戦っているのか」がわからなくなりはじめる。
そしてギルバート(ハンス・ツィッシュラー)と会ったことでさらに深みにハマり、ヘルマン・サイボルトの暗殺では任務遂行中にベントは負傷してしまう。
これをきっかけに、一度は暗殺に失敗し、これまで運転手でありサポート役だったヨーンは自らの手でギルバートの暗殺を実行し、地獄への一歩を踏み出す。
そして2人はヴィンターが出す命令は「祖国のため」ではなく、組織の保身や別の思惑があることを知り、「自分たちは何のために、誰のために戦っているのか」という迷宮に迷い込むことになる。
結局、最期は偽情報に騙されて囚われてしまうが、ベントは徹底抗戦して最期を迎える。
本編がはじまってからず〜っと、ベントは自分自身に「何故こんなことをやってるのか」と自問しながらも「正しいことだ」と自負をしていただけに、女に騙されたのは救いがない。
しかも90まで生きたって。
本人は騙されたと思っていないところが悲惨なのだが、本人的にはその思いのまま逝ったので、それはそれで良かったのかも。
ナチス占領下のデンマークで同胞を売った裏切り者や売国奴たちの姿は、韓国映画の『暗殺』や『密偵』などに描かれる親日派と同じで、レジスタンス側の「誰が裏切り者か分からない」恐怖をうまく描いてる。
しかしセルマーへの愛情の間で揺れ動くベントは、心のどこかに罪悪感がぼんやりと存在してて、セルマーがそれを巧みに利用したようにも見える。
このあたりは自分たちの行いを信じて疑わない「義烈団」とは対照的。
ナチスの秘密警察のリーダーであるホフマン(クリスチャン・ベルケル)は、敵でありながらも敬意を払っていたのが印象的だった。
冷酷なナチスでありながらも、戦時下という状況下で「命を懸けて信念を貫く者」と描かれてるのは、何故か救いがあった。
そしてベントと対峙した時にホフマンが「敵を殺せば社会が変わると思うか?」の問は、韓国の義勇軍ものでも必ずと言っていいほど登場するセリフ。
しかしこの後のセリフが違いすぎて、核心を突いていると思ったが、このやり取りでベントの心理がますます錯綜していく。
ヴィンターに「言われたことだけやってろ」と言われ、吹っ切れたのか、ベントとは対照的に割り切って任務を実行するヨーン。
そのヨーンは車の中で娘ヨーヨーの誕生日を祝うが、妻は他の男と住んでいる。
家庭を失い、彼らは何の為に戦ってるのか。
でもこれでヨーンはこの世に思い残すこともなくなり、自分から進んで暗殺にのめり込んでいく。
『愛を耕すひと』でも感じたが、マッツ・ミケルセンは「大切なものを失って初めて気づく男」を演じさせると抜群に上手い。
銃弾一発の痛みが生々しく、立て続けにデンマーク映画を観たが、語りかけるような独特な世界観があり、無駄にハッピーエンドにしないところが面白い。



