「お、思い出したよ…


昨日はごめん…」



もっと他に言いたいことあるのに。


口が、自分のいうことを利いてくれない。



「あ、まじで?よかった~


またいって忘れられたまんまだったら

どうしようかと思ったよ!


なぁ、どれぐらい覚えてる?」



「幼稚園、遊んでくれたなぁってことしか…」




「いやもうそれで十分!」




嬉しそうににかっと笑った彼の顔を見て



胸の奥が熱くなった気がした。



「俺さ、ちょくちょくここにきていいかな?」


「え、なんで…?」



私の胸はどきどきするばかり。


「美羽ちゃんさ、なんにも言わないまま

幼稚園卒園しちゃったじゃん?


俺ずっと喋りたかったんだ



君に引かれるものがあったから」




え、どういうこと…?



「…なんつってね。

ほんとは理由なんてないよ。


いやあるんだろうけど

言葉にちゃんとできないな…



ま!そゆことだからよろしく!じゃね!」





風のように彼は去ってしまった


残された私は何をどうしたらいいのかわからなくて、



ただ、彼とまた会えるということが嬉しくて




それ以上はなにも考えられなかった



「ほら、俺さ、昨日分かってもらえないまま


ばらばらになったじゃん?


ぜってーわからしてやろうと思って。


部屋探したよ!」




なんであたしのために…

そこまでしてくれたの?


なんであたしを見つけようとしてくれたの?


なにを思っているの?



いいたいことはたくさんあったのに



なにも口にすることができない。



「え…あ…」




口もうまく動いてくれない




「あーよかった!超すっきり!



もう俺のこと思い出してくれた?」





―――ガラガラッ



あ、お母さんだ。



そう思って振り返った




だけど、お母さんじゃなかった。




…健斗くん?



「あ!いた~!


むっちゃ探してんから!」




なんで…?




もう眠れないな…



夢を見ることが、今の私にとっては

一番楽しい時間だった。



病気じゃない自分を作れる。


誰とでも話が出来る。



普通の人ならできることは



わたしにとって違う世界の話だった。




気がつくともう朝の10時。



外は暑そうな、7月のことだった。



まだ冬は始まっていないのに


外はとても寒そうだった




ぱちっ



「あ…」



腕がベッドから落ちた反動で起きたんだ…




でも、思い出した。



健斗くん。



病弱だった私と唯一嫌がらず接して

たくさん遊んでくれていた人。




なんで、今頃になって


やっと思い出せるの…


あの時思い出していたら、

ちゃんと会話もできたのに




会話できたのに…