彼の姿を見た瞬間


なぜかわからないけど涙が溢れてきた



「え、おい!何で泣いてんだよ!


今日美羽の誕生日じゃん!


おーい!泣くな泣くな~」



「だって…だって…」



泣き止むまで、ずっと背中を擦ってくれていた






ようやく落ち着いたころ、



「もしかして、俺こないと思った~?

可愛いとこあんじゃん♪」



「そんなんじゃ…!!!

ないこともないこともないこともないことも…」




「おいどっちだよ!」



「「あははは…」」






ほんとは嬉しかったんだよ


一瞬でも、私の誕生日を過ごしてくれて


ほんとに自分の口じゃないと思うぐらい


動かない口が憎かった



「ままま…そんな美羽に


プレゼント持ってきました~!!!

ぱんぱかぱーんっ」



自分で効果音を言ってしまう健斗



「え、いらないっていったのに…」




「いいのいいの!


っていうか、こっから真面目に話聴けよ。」




そして、11月8日。



私の誕生日の日が来た。



プレゼントいらないって言ったけど


健斗来てくれるかな…



確証もないのに、ついわくわくしてしまう自分がいた



なんだか自分があつかましい人間のような気もした






でも、夕方の5時を過ぎても

彼は病室に現れなかった



心待ちにしていた私の気持ちも


今日はきっとこれないんだっていう思いに変わっていた



それに面会時間は6時まで


1時間あるかないか





そう思ってもう寝てしまおうと思った




――――バタバタバタバタッ


ガラッ



「美羽っ!おきてっか~!!!」



「そいや、美羽って誕生日いつなの?」



「11月8日だよ。健斗は?」



「俺5月5日!超こどもの日!」



そういった彼は自分で笑い出した



つられて私も笑って…



毎日が楽しかった。




「え、てか11月ってもうそろそろじゃん!



な、なにがいいプレゼント?」




え…プレゼント?




私は友達にプレゼントを貰ったことなんて

一度も無かった



というより、親からさえまともに

もらったことがないような気がする



親は許す限りなんでも買ってくれた



最初はそれがおもしろかったけど


次第に飽きた。


ものを手に入れるより



外の世界を手に入れたかった。



そんな私にプレゼントをくれる人がいたなんて…




「ん…いらないよ。


その気持ちで十分だから!」


「なんだよそれ~


せっかくかってやるのにー!!!」




「健斗だってもうそろそろじゃん!」




「…今何月かわかってますか~?」




「わかってるよ。


10月28日…だよね?」




「ぶっぶー残念!


10月29日でした~

わかってねぇじゃん!


てか問題そこじゃなくて!」




じゃれあうような会話が



いつまでも続いていた


それから1週間に1回程度だったけど


彼は私の病室に遊びに来てくれるようになった。


いまだに理由はわからない。


けど、彼と居られるなら

なにも聞かなくてもいいと思った




「美羽っ!起きてっか~?」



いつもこの台詞で入ってくる彼



いつしか呼び捨てで呼び合うようになっていた



「いつも言ってるじゃん!起きてるよ!」




ちゃんと笑うのなんて、何年ぶりなんだろ…



――俺さ、ちょくちょくここにきていいかな?




あなたのその一言で



わたしの暗かった世界に


一本の光が射した


それは虹のように輝いていて


きらきらしていて



私の世界を包み込んでいったんだ