The Key of Midnight -23ページ目

黒木宏作品展

黒木宏作品展 に、友人たちと行ってきました。

鎌倉駅の西口を出てすぐのところで開かれています。徒歩一分ほど。

ギャラリーには20点ほど作品が展示されているのですが、どれを観ても綺麗。

近くに寄らないと判らないのですが、絵の表面に突起状に絵の具がはねていたりと、写真ではとても想像がつかない立体的な絵です。

文字通り、「見方を変える」ことで全く違ったものになるので、観ていて飽きません。

個人的に気に入った絵も多く、特に「Blue」や「雨の風景」(どちらも黒木宏ホームページを探せば写真があります)は、手元に飾りたいなあと思わせられる色彩でした。勿論、手の届くような値段ではないのですが。


今日は黒木先生もいらしていたので、色々お話を拝聴していましたが、面白いエピソードがいくつもあって楽しく時間を過ごせました。

画廊の方や、その場にいらしていたほかのお客さんともお話しましたが、皆さん気さくで良い方でした。

結局、一時間くらい観賞してその場を後に。


その後は鎌倉散策。

石ころ館やジブリのお店など、何度行っても面白いところです。

また、鎌倉駅周辺で最も大きな書店、島森書店にも。

やっぱり鎌倉は良いなあ。

今日は遅めの時間に行ったのであまり多く回れませんでしたが、次はゆっくり散策でもしたいな、と。

以前、某小説に影響され「一日で鎌倉中の寺社を回る」などという企画を立てて、友人と北鎌倉から江ノ島まで、歩きで30以上の寺社を回ったこともありましたが・・・・・・。

鎌倉ではゆったりと過ごすのが一番です。


最後に少し宣伝。

作品展は19日まで開かれているので、鎌倉に行かれることのある方は、こちらも寄ってみてください。

日曜など休日はご本人がいらっしゃることもあると思うので、特にお勧めです。



夏休みまで

試験終了しました。

そして、明日から三日間、試験休み。実質もう夏休み気分。

「夏に読む本」をいくつかまとめてみたりも。

まずは、お勧めを頂いている、

「誘拐もの」が数冊と、「イリヤの空、UFOの夏」から。

割と長めの作品でハードカバーのものなども、長期の休みでないととても読んでいられないので、こちらもチェック。

後は・・・・・・。文章作法の本に、量子力学関係の書籍が数冊。これもその気になったときに読めばすんなり頭に入ってくるので、常に手に取れる位置に。


・・・・・・でも何より先に、借りている本を読まなくては。コミック、小説、参考書等合わせて30冊以上あるのですが・・・・・・。はたして夏休みまでに読み終わるのだろうか。

心配です。



明日は画家・黒木宏氏 の作品展に行ってきます。鎌倉でやっている、とのことで、近くて助かります。

毎回個展が開かれたら観に行っているのですが、写真と違い、まさに本物の味がある絵で、とても綺麗。

お勧めです。


直木賞候補作

テスト始まってるんだけれどなあ・・・・・・と思いつつも、少し前に第135回直木賞候補作が発表された ので予想だけ。

候補作は以下の六作。


伊坂幸太郎 「砂漠」
宇月原晴明 「安徳天皇漂海記」
古処誠二 「遮断」
貫井徳郎 「愚行録」
三浦しをん「まほろ駅前多田便利軒」
森絵都 「風に舞いあがるビニールシート」


・・・・・・ぜんぜん読んでない・・・・・・。

「砂漠」が読んでいる途中、「愚行録」が積んであって、「風に舞いあがるビニールシート」がチェックに入っていた作品・・・・・・って、結局一作も読了していないわけですが。

なので、予想というよりは個人的な願いで・・・・・・。

やはり、伊坂さんでしょうか。

これで5回目のノミネートですから、そろそろ取っても良い頃だと思いますし。

貫井さんにも取って欲しいですが、難しそう・・・・・・。

受賞作の発表は十三日とのことです。



・・・・・・そういえば、全く話題は変わるのですが、昨日書店に寄ったら大山誠一郎「仮面幻双曲」 が置いてありました。何時の間にか単行本にまとまっていたのですね。

これ、果たして今年の「このミス」「本ミス」に入るのだろうか・・・・・。微妙なラインだと思うのですが。最初から単行本で出ていれば、一位はとれたはず・・・・・・。

それはともかく、この作品は傑作です。

ミステリ好きなら絶対に読むべきである、と言い切っても良いほど。

「アルファベット・パズラーズ」同様、ミステリ部分以外の面白みはほとんどないですが、それだけ純粋にミステリです。個人的にはこちらのほうが「アルファベット」より好み。

元が犯人当て企画の作品なので、本気で推理しながら読むと良いです。

素晴らしい発想の転換で、きっと多くの方が驚愕すること間違いなし。お勧めです。

哲学

明後日から五日間、土曜日まで期末テスト。

今日もテスト勉強をしていましたが、やはりいつもの現実逃避が。

テストが近づくと、勉強以外のことでやたらと頭が働くようになる。・・・・・・これは誰もがそうなのでしょうか。

英語を勉強しつつも、"PHILOSOPHY"という単語を見ただけで、頭の中ではゲーテル命題やら人間の存在価値やら意味不明な思考が飛び交い・・・・・・。

挙句、コミュニケーションが成り立つ理由を量子論と絡めて考えていました。何をやっているんだろう。

マジックも急に新しいネタが思いつくし・・・・・・。

この時期の、ある種の冴え(?)は自分でも驚くものがあります。

そういえば、涼宮ハルヒが現実に存在するとか、六次元のタイムマシンが可能なこととか、叙述トリックの極限による精神崩壊とか、そんなことを考えていたのも全部試験前あるいは試験中。

今から思えば「何やっていたんだ・・・・・・」と呆れるよりほかないのですが。

考えている間は本気という点が怖いです。そこまでテストから逃げたいのだろうか? 自分ではそんなつもりないのに。そもそも、テストは別に嫌いじゃないのですが・・・・・・。


・・・・・・そのようなことを考えていて、結果的に「何故テスト前になると無意味に何かを考えたくなるのか?」という疑問について「記憶」という観点から解いてみようとか思っている自分がいる。思考ループ。本当に何をやっているんだろう。


・・・・・・テスト勉強します。

「何も考えない」ことが、一番勉強の効率が上がる方法かもしれない。

上半期ベスト

今日で六月も終わり。

上半期ベスト作品を10冊選んでみました。

順位などはつけていません。作者名50音順。


 

ポール・アルテ 「第四の扉」感想

これぞ本格ミステリ。数々のギミックに驚くこと間違いなし。


大阪圭吉 「銀座幽霊」感想

これほど昔の作品なのに、決して現代にも負けないミステリ。


瀬尾まいこ 「幸福な食卓」感想

泣ける・・・・・・と一言で片付けてしまえる話ではない。切なく優しい作品です。


天藤真 「大誘拐」感想

ノンストップの面白さに、ミステリとしての完成度の高さ。必読。


夏目漱石 「こころ」感想考察

流麗な文章で綴られる「こころ」。一度は読んでおきたい一冊。


東野圭吾 「白夜行」感想

淡々と描かれながらも、強烈な哀切が残る二人の生涯。


福井晴敏 「Op.ローズダスト」上巻感想下巻感想
エンターテイメントの極限。圧倒的な感動。


ダン・ブラウン 「天使と悪魔」感想

全く長さを感じさせない海外ミステリ。気がついたら読み終わっています。

古橋秀之 「ある日、爆弾がおちてきて」感想

優れたSF短編集。読んで「良かった」と思える一冊。


米澤穂信 「夏期限定トロピカルパフェ事件」感想


今年発売されたミステリの上半期ベスト。巧みな構成に驚かされます。

また、次点で、

新城カズマ 「サマー/タイム/トラベラー 1・2」1感想2感想

時間ものSFで、青春小説。中高生にお勧め。


・・・・・・こんな感じでしょうか。

こうして見てみると、なかなか良い作品が多かったですね。

ただ、ミステリで言えば、「これは凄い!」と心から驚けた作品が少なかった気がします。

やはり、読めば読むほど新鮮な驚きは失われていくのかな・・・・・・。


下半期は、加納朋子さんの新刊や麻耶雄嵩さんの本格ミステリ・マスターズが出版される予定なので、そちらに期待しています。

・・・・・・出版されない、なんて事態になりませんように。今年中に読めることを願います。

季節の変わり目

期末試験まで残り一週間を切っているにも関わらず、そんな時期に急に喉が痛くなったり足に軽い捻挫をしたり・・・・・・。

その上、サークルの会誌の編集作業が徹夜に及んだり(最近早い就寝を心がけていたのに)、蒸し暑い中の印刷作業でさらに体力が失われたり・・・・・・と。

そんな日々です。


このごろは暑くなってきましたね。

やはり、急激な気候の変化は辛いです。

いきなり30℃って。

そろそろクーラー入れようかなあ、なんて贅沢なことを言っていられる身ではないので、ひたすら水出しの緑茶を飲んで体を冷やしていますが・・・・・・。

今からこんなで、この夏乗り切れるかどうか心配。

自分は、これでも暑さには強いほうだと思っていたのですが・・・・・・今年は厳しそうです。

甘く見ていると突然ダウンしそう。

皆様もお身体にはお気をつけ下さい。

北村薫 「六の宮の姫君」

北村 薫
六の宮の姫君

最終学年を迎えた「私」は卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていく一方、田崎信全集の編集作業に追われる出版社で初めてのアルバイトを経験する。その縁あって、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。

「あれは玉突きだね。…いや、というよりはキャッチボールだ」

―王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡って、「私」の探偵が始まった…。

 

 ◆ ◆ ◆

 

このシリーズを読むのをいったん中断していたのには理由があります。

一言で言えば、読むのにもっと適した時期があったからで。本書は芥川などについての論考が中心となっているのですが、ならば授業で芥川をやった後のほうが良いだろうと。

実際に、それは正しい選択でした。

多少なりとも芥川に関する興味や知識を持った上で読んだほうが絶対楽しめる本です。というより、そうでないと厳しいかもしれません。

一部どころか全編、文学に関するミステリ。このようなミステリは初めて読みました。まるで・・・・・・というか、本当にそうなのですが、論文を小説風にしたかのような感覚です。

特に芥川と菊池寛が中心ですが、それ以外にも谷崎潤一郎を筆頭とする何人もの著名な文豪のエピソードが盛り込まれています。

自分にとっては、名前も知らないような作家も何人か・・・・・・いや、かなりいたのですが。

知っていれば、いっそう興味深く読めるのは間違いないでしょう。


本書のメインとなる作品は、タイトルにもある通り芥川の短編「六の宮の姫君」に違いないのですが、「羅生門」の論考のほうもなかなか面白かったり。

おまけ程度にかかれているだけですが、授業で扱っていたテーマなだけに興味深かったです。

ちなみに、本書に出てくる芥川らの作品は青空文庫 で読めますので、こちらを読む前に、未読の方はせめて「六の宮の姫君」 くらいは一読しておくことをお勧めします。


・・・・・・それにしても、円紫師匠は、もはやサブキャラ並の扱いになってしまっていますね。

いや、あるいはそれ以下か。前作でも登場出番はわずかでしたが、本書はさらに少ない・・・・・・。

ここまで来ると、少しさびしい気もします。


時期が良かったから楽しめた一冊。外していたらどうだったかはわかりません。7点

シリーズも、今出ている分では一冊を残すのみ。

これは・・・・・・読むのを躊躇ってしまいますね。



考察好きな方へ

最近、「こころ」について考えていて、ふと今年に入ってからプレイした二本のゲームのことが思い浮かびました。

どちらも、感想を途中まで書いたは良いのですが、結局「真相」に辿り着くことができず、理解できないまま感想をアップするわけには行かない、と途中で止めてしまったものです。

ただ、「そろそろ上半期ベストでも選ぼうかなあ」という頃になって、これは外せない! と断言できるのがその二本であって・・・・・・。多少なりとも、感想をまとめておく必要があるかな、と。


先に書いておくと、ジャンルはどちらもSFミステリです。

厳密には片方ミステリじゃないかもしれませんが。ともかく、自分が今まで見た中で、過去最高級に難解な作品です。その難解さたるや、あの「夏と冬の奏鳴曲」を越すのでは? というほど。

SF好きで、考察が好きな方にとっては、これほどまでぴったりな作品はないと思います。


まず一つ目。「Remember11」

サクセス
SuperLite 2000 シリーズ Remember11 -the age of infinity-
オフィシャルホームページは Remember11 Official Home page

テキスト重視のADV。小説に選択肢がついただけ、と思えば良いです。その選択肢がなければ、トリック的に成立しない物語なのですが。

これは、自分にとって、ある方向での「ミステリの到達点」と言える作品。

あらすじを読まれた方は、西澤保彦の「人格転移の殺人」などを思い浮かべるかと思いますが、とにかく規模が違います。

人格が時空を越えて交換する現象――通称、転移現象という設定を何から何までトリックに活用しており、複雑でありながらも、その構図はとても綺麗なものになっています。


そして、これが最大の特徴ですが、

本作は、「夏と冬の奏鳴曲」や「神様ゲーム」などにある趣向を極限まで突き詰めたミステリです。

ノベルゲーム、という形式を完全に活かしきり、大量の謎と伏線をばらまいて、この物語は”完結”する。

「未解決」ですが、「未完結」ではありません。

ただ、はっきり言って、この謎を自力で全部解くのは不可能に等しいです。

考察サイトをいくつも回って、その上で数ヶ月もの間毎日のように考えつづけても、自分は未だに答えが出せていません。

こんなもん理解できるか! といいたくなる人の気持ちも良くわかる。ただ、「理解できない」から駄作という評価を下す、というのはどうにも納得しがたい意見ですが。


本当に考察が好きな人向けです。

量子力学がかなり密接に話に関わってくるので、ある程度の知識があったほうが良いでしょう。

時間、空間、次元、世界。

一見小さな舞台に、大きな「謎」が詰め込まれている。
こんな壮大かつ複雑に絡み合ったトリックは、過去に見たことがありません

個人的には、自分の好きな要素が満杯まで詰め込まれたようなゲームだったので10点です。

プレイ時間は20時間、考察時間は80時間以上。

時間が無い方には厳しいかもしれませんが・・・・・・。

興味があるなら、何がなんでも読んでおくべきです。




さて、もうひとつはこちら。「Sense Off」

どちらかというとSFよりの作品。

ゲーム・ミュージック, 半場友恵, 浅川悠, 倉田雅世, 橘ひかり, 長沢美樹, 手塚ちはる, 櫻井孝宏
「Sense Off ~a sacred story in the wind~」オリジナルサウンドトラック&パーフェクトドラマ
 

これもまた、上の作品とともに、麻耶の「考察系」の作品が好きな人には受け入れられ易そう

実際、作品中にも「美凪三條」やら、「マイナー通り」やら、麻耶ネタが出てきていますし・・・・・・。シナリオライターの方も意識しているのは間違いないです。


これ自体は、ドラマCD+サントラ+ゲーム体験版のセット。

でも、この体験版というのが、「本編全部」収録されている、つまり製品版とほぼ違いのないものなのです。

一点違いがあるとすれば、製品版には18禁指定がかかっており、こちらは全年齢、ということだけ。18禁シーンがカットされている以外は全て同じ。

それが、製品版より安価で入手できて、しかもサントラ・ドラマCD付なら、別に未成年でなくてもこちらを購入するほうが得でしょう。

ちなみにこれ、何処を見ても売り切れ、Amazonのユーズドでは15000円近い価格がつけられている貴重なものですが、実は楽天 で普通に手に入ります。

これもそのうち入手不可能になるでしょうから、今のうちに興味がある方は購入しておくことをお勧めします。


さて、内容ですが・・・・・・。数学的で、概念的な、何だかよくわからないSF、と言うのが良いでしょうか。

元が年齢制限かかっているので抵抗感じる方はいるかもしれませんが、性別問わず誰が読んでも問題ない、と自分は感じました。ただ、ある意味問題なのは、時折出てくる数学系のギャグ(ハミルトニアンやらマクローリン展開やら)と、後半部で暴走するシナリオ。

大半の人が置き去りにされると思います。それが狙いなのだとは思いますが。

哲学、数学、論理・・・・・・そういったものが苦手な方は手を出さないほうが無難かと思われます。


ただ、そういったものが好きな方にとっては、本作の構造は堪らないものがあるでしょう。

どのルートも途中までは穏やかな学園ものの雰囲気で進み、ラストで、とんでもなく意味不明などんでん返しが起きます。

本当に最初のうちは意味不明です。何が起きたのかわからぬまま、唐突にエンディングを迎えます。

これがまるで「夏冬」のようなのですが、厄介なのはこのどんでん返しが、独特な世界観、概念に基づくものである、という点。

そのため、全部のルートを読んで世界観を理解し、その上で「どうしてこうなっているのか」という謎を解く必要があります。

そもそも世界観からして難解なので、完全に理解するにはかなりの時間が要るかと思います。

相変わらず自分も理解できていません。

この難解さが、「未成年には理解できない」ということが言いたいのかもなー、と感じました。

理系の大学などに通われたことのある方なら、意外とすんなり飲み込めてしまうのかも・・・・・・。

これは9点。シナリオとは関係ありませんが、イラストが微妙な代わりに音楽が最高です。サントラだけでも3000円出す価値はあるかと。


・・・・・・何だか恐ろしく長くなりました。

最近、何をかいても長文化する傾向にあるのですが・・・・・・。

テキストだけのメールで毎回原稿用紙5~10枚程度の量をやり取りしていたり。

よくないな・・・・・・。

やはり一度文章を見直すべきか。


相当読みづらくなりましたが、結果的に言いたかったのは、

この二作は「夏と冬の奏鳴曲」が好き、という方は絶対に買いです――まあ、それだけです。

それならわざわざこんな長文書く必要ないのでは? と書いてから自分でも思ったりしましたが、

これからは当分短い文章が続く予定なので、今回は大目に見てやってください。

「こころ」の構造

さて、相変わらず「こころ」の話ですが、今回でいったんは終わりにするつもりなのでご容赦ください。


先日、現代文の先生に「こころ」についてお聞きしたら、良い本があるということで、三冊ばかり「こころ」について論じてある書籍を貸してくださいました。

それを読んで自分もいくつか考えるところがあったので、今度はそちらをまとめてみます。


まずは、いくつか気になった解釈についてのメモなど。

渡部直己「メルトダウンする文学への九通の手紙」 p87、「不敬文学論序説」 p80-94。

Kという文字の意味について書かれています。

余り本質とはかかわりがない気がしますが、面白い見方です。

ただ、相当に文章が難しく、他のページなど見てみると「天皇萌え」やら、「転移」する「猫システム」やら、何のことだかと頭が痛くなってしまいます。個人的には、この理論だけ本屋で立ち読みする程度でよいかも・・・・・・と思ったり。

また、小林陽一「漱石の『こゝろ』―総力討論」 もなかなか。特に、「遺書」の書法、という補論は気に入りました。

どうでもいいといえば確かにそうなのですが、あれだけ長い遺書を四つ折りにできるものなのか、というのは最初読んだときに漠然と感じた引っかかりだったので、それについて触れてあって少し嬉しかったです。

 

さて、これらの書籍を踏まえて・・・・・いるかどうかはわかりませんが、自分なりの解釈。

「こころ」は、無限に続くような構造をもった物語である。

二元論。三位一体。

そのようなことから本書について考えていくと、

先生はKを間接的に自殺に追い込み、

同様に、私も先生を自殺に追いやった。

そして、Kも先生も遺書を残しており、その詳細度合いはK<先生。

回りくどい言い方をせずに、はっきりといえば、

「こころ」は、”私”の遺書である、というように考えています。

そう考えると、何か自分ではしっくりくるものがあります。

これは、「私」から読者に訴えかける遺書であり、擬似的にではありますが、読者は「私」を自殺に追い込むべくして置かれていたのではないか、と。

人間は誰しも、自分の気がつかないところで、誰かを死においやっているのかもしれない。そういうことなのだと思います。間接的に読者にその事実を突きつける、ということで。

だとすれば・・・・・・。文字通り、「自分を見直す」ことに、本書の最大の意味がある。

 

これに関する裏付け(?)もあるにはあります。

例えば、登場人物の呼び名の問題。一人称と三人称が合わさっているので、同列に並べて考えていいのかどうかは微妙なところですが、

「私」「先生」「K」、最も世間で使われる単語(=一般的)なのは「私」、次が「先生」、最後に「K」。

だんだん、「範囲」が広まってくるというか・・・・・・。「K」が自殺し、「先生」も自殺した。そして「私」。さらに範囲を広めるには・・・・・・。代名詞さえ設定しないこと。要は、完全に「不特定多数のうちの誰か」にしてしまえばよい。それが、読者。

Kから先生へ、先生から私へ。その続き。「こころ」は、誰が読むのかはわからない、まさに「誰か」に宛てられた遺書(メッセージ)である。

「私」は、自分の遺書の中に丸々「先生」の遺書を取り込みましたが、それをもって間接的に、自らの死の理由を告げようとしたのでしょう。そう考えれば、「中 私と両親」における、中途半端な「私」の退場も納得できるものになります。すなわち、そこで「語るべきことは終わった」と。

 

本書を読めば、誰もが、Kが自殺した理由、先生が自殺した理由などを考えるでしょう。

・・・・・・これは、まさに、「自分を見直す」行為を促すことに直結します。

なら、Kが自殺した理由などに関しては、「唯一の解」はあらかじめ存在しないはず。それは、個人個人の心の中にあるべきものです。そうであってこそ、読者への訴えかけが成立する。

考えれば考えるほど、「自分のこころ」を間接的に「考えさせる」物語であり・・・・・・タイトルどおり「こころ」そのものが、本書には書かれている。

 

別に自殺に追い込む、といったことだけに限らず、人が生きていくということは、必ず他の誰かに影響を与えつづける、ということです。至極当然のことですが、それがこんなに明確に感じ取れて・・・・・・感動しました。

 

もっともこれは、僕の独り善がりな思い込みに過ぎないかもしれません。むしろその可能性のほうが高いでしょう。

でも、こういう解釈に自分で辿り着き、それで納得できたのです。

だから、これで良かった。

もちろん、「これだけが唯一の正解」なんて考えをもってしまったら、これ以上先に考えることを放棄するのと同様なので、そんなことは言いません。

だからそのうち・・・・・・もしかしたら数日後にでも、「こんな考えは違っている!」と前言を撤回して、また新しい解釈でも思いつくかもしれませんが、とりあえずはこれで、自分の中での「こころ」に関する解釈問題にはいったん区切りをつけたいと思います。

 

色々なアドバイスを下さったPさん、さかきさん、そして先生。

どうもありがとうございました。御蔭様で、大変貴重な読書経験ができました。

そして、良い一冊に巡り合えたことに、感謝を。

やっぱり、本を読むのは良いですね。


「こころ」感想

まずは箇条書きで、読みながら思ったこと、読んで思ったことを、可能な限り時系列に沿って、そのまま書いておきます。

作品の内容に触れているので、未読の方は読まないほうが良いかもしれません。


・何故「先生」「私」など、固有名詞が出てこないのか。

・冒頭から漂う、心に残るような暗さ、またそれを淡々と受け入れる静けさは、一体どこからくるものなのか。

・先生が「財産を貰っておけ」という発言をしたとき、自分もなぜか、裏切られたような感覚を覚えた。

・「両親と私」は、前の章に比べると、普通の小説のように感じられる。

・「先生と遺書」に出てくるK・・・・・・。何故「K」なのか? 名前を明かさないのは、先生のKに対する配慮? どうして先生は「K」をわざわざ呼び寄せたのか?

・「精神的に向上心がないものはばかだ」・・・・・・深く心に残る。今までに読んだいろいろな台詞の中でも、これは特に、印象強いものだった。

・そして・・・・・・どうしてKは自殺したのか? 恋が理由ではないだろう。

・そのときの先生の心情を想像すると、とにかく痛い。

・先生は自殺しなければならなかったのか? 人間の不安定さ、弱さ、といったものを感じる。ここで、「自殺」という手段をとるのが、先生という人間の弱さのあらわれであり、良さであるのかもしれない。


・・・・・・ここまでが初読時。

総合的な感想は先にも書いたとおり。

疑問点が多すぎて、心の中で整理がつかない状態でした。

ただ、一つだけ書いておきたいのですが、ここまで読んだ時点で、自分は確かにこの小説が「心に残るであろう作品」である、と思えたのです。

別に他の人の評価がどうとかではありません。もしこれを書いたのが夏目漱石ではなくて、誰にも知られていないような無名作家であったとしても、自分は本書を「凄い」と感じたに違いない、と思います。

ただ、読み終わってから改めて思い返してみると、そこには疑問がいくつもあるばかりでした。

そして、それこそが一番の「疑問」に思えたのです。・・・・・・何故、自分は本書が凄い、と感じたのか。

面白い、楽しい、ではなく、「良い」「凄い」「印象に残る」など、なんとなく漠然とした感覚が残っているばかりで、その点もどうにもつかみきれませんでした。


一体自分は、この小説の何を読んだのか。

普段はそんなことを意識的に考えたりはしませんが、本書の場合はその思いが強く浮かんできて、どうしてもそれを理解したくなりました。

・・・・・・というのも、自分で自分のことが良くわからない、という状態が落ち着かなかったからだと思います。本書を読んだあとだと、特に、そのようなことに対して敏感になってしまいます。


そこで、改めて細かい描写に気をつけながら、再読してみました。

でも結局、わからないままです。

今現在も手元に「こころ」を置いて、ふと気が付くとページをめくるようにしていますが・・・・・・。

疑問に対する答えは得られません。


「今は理解できなくても良い」というのは、確かに正しいことでしょう。

でも、結局のところ自分は、今理解できないのが辛いのです。このような曖昧な感覚は、放置しておくと消えてしまって、後からでは思い出せないかもしれない。だから、今理解しようとしているのだ・・・・・・というのが、正しいところだと思います。


これではほとんど自己分析に等しいですが、

「こころ」は、確かに自分にとって鏡のような作品でした。

大げさかもしれませんが、一言で表現するなら、それが一番しっくりくる気がします。


考えることが多すぎてまとめきれませんが、やはり本書は、今の自分にとって何かの深い意味のある小説であったのだ、と。その思いは変わりません。

これから、本書の「理論」や「解釈」にふれていくにしても、最初に読んだときの感想、そして今考えているようなこと、これだけは絶対に忘れてはならない、と感じます。

色々な方が仰ることを聞かせていただくうちに、改めてそのことを確認できました。

誠にありがとうございました。