音楽と競馬、思ったことを書いて行きます -53ページ目

 

7/14

深見さんのピアノですが、打鍵の強さ、それに伴う音符自体の意味付けの強さをまず感じ、また、音同士の連関の強さに由来する、弾かれる音楽そのものの構造と音楽の持つ勢い・流れの良さが感じ取れます。その一方で、ゆったりとした部分でのコクや味わいに不足するような印象も無く、曲を通してお聴きした時の満足感を相当に感じる演奏です。その中で、語られる言葉がほんの少し過ぎるような音楽にも聴こえ、個人的な好みからすると、言い方が難しいのですが、もう少し行間が感じられる=作曲家が書いた音楽の意図をそのまま投影したような、いわゆる「佇まい」が感じられるような演奏もお聴きしたいと思いましたが、彼女の演奏スタイルは確立されておられますし、それが彼女の個性でもあるんですよね。実際に、これまでの多くのコンクールでの受賞歴からも、彼女の音楽が評価されていると言うのも、また事実です。技巧的にも相当なものをお持ちですが、この日は帰国してすぐ(しかも、大雨でいくつものトラブルがおありになった由)と言う状況もあり、わずかに安定していなかった部分もあったでしょうか。

当日購入させて頂いた最新CD=ドビュッシー/12の練習曲とラヴェル/「鏡」と言う、2人の作曲家の作品を並列されていると言う選曲を見ても、彼女の幅広い音楽性を汲み取ることが出来ます。実際にこの日の演奏でも、ドビュッシーは比較的自由な雰囲気で弾かれていた印象ですし、ラヴェルはとても引き締まった演奏と感じ、彼女の選曲の意図ははっきり表出されていたと感じました。個人的に最も注目していた「ダンテ~」、嬰ヘ長調の部分あたりの、天国的な美しさと心情の表出はとりわけ見事で、その前後の部分との対比が十分に際立っており、彼女のまた違った一面を垣間見ることが出来ました。これまで、この曲の実演には非常に多く接していますが、森本 美帆さん、梅田 智也さんの実演に並ぶ三本の指に入るような名演だったと思います。曲間のトークや終演後にお客さん達との会話で聞えて来た「コテコテの関西弁」も、とても楽しかったですね。

素晴らしい演奏の数々、ありがとうございました。今後益々ののご活躍を、心より願っています。

 

 

7/9

数年前に一度、そして昨年に一度、ライヴで演奏をお聴きした深見 まどかさんのコンサートを聴きに伺いました。

事前に告知されていたプログラムから、サティとドビュッシーの一部が割愛され、その代わりに、ドビュッシーの異なる曲と、ラヴェルから1曲が加えられていました。「ベルガマスク組曲」はぜひ全曲お聴きしたいと思っていましたが、それが叶わなかった代わりに、思いもかけないラヴェルの「道化師の朝の歌」をお聴き出来たと言うことになります。当日、販売が開始された彼女のデビューアルバム「ドビュッシー「12の練習曲」/ラヴェル「鏡」」の、宣伝も込めての曲目変更と言った感も無きにしもあらずですが・・・。

感想をちょっと詳しく書かせて頂きたいと思い、少し時間を置いて再度記事を書かせて頂こうと思っていますので、当日の演奏については、今日はここまでとさせて下さい。

 

終演後、この日弾かれたリストと、数年前にお聴きしたワーグナー=リストの楽譜にサインを頂こうとお待ちしていましたが、熱心なファンの列が途切れず、1時間程待つような感じになりましたが、お話もさせて頂き、お待ちして良かったです。彼女の思う、ラヴェルとドビュッシーの「違い」をお聞きできたら更に良かったんですが、時間もありませんでしたし、それはまた次の機会と言うことに。購入させて頂いた彼女のCDも良く聴き込みたいと思います。

私が、坂本 彩さんと親交があると申し上げたところ、彼女に写真を送りたい(私がどのような人物かわかりませんから、ね・・・)と言うことで、恥ずかしながら、ツーショットの写真を撮られてしまいました・・・。演奏後のお疲れのところ、いろいろとありがとうございました。

昨年開催された、第9回神戸国際フルートコンクールで第3位に入賞された、アンナ・コンドラシナさんのコンサートを聴きに伺いました。

 

コンクール時の記事は、以下の通り。

一次予選 https://ameblo.jp/magic1963/entry-12305106354.html

二次予選 https://ameblo.jp/magic1963/entry-12305113509.html

三次予選 https://ameblo.jp/magic1963/entry-12305114279.html

本選 https://ameblo.jp/magic1963/entry-12305114798.html

 

本選出場者6名全員のサインを頂いた、本選課題曲・ジョリヴェ/フルート協奏曲の譜面。私の宝物です。

 

コンドラシナさんは、個人的には当時あまり評価しなかった方ですが、こうやって単独で聴かせて頂くとやはり素晴らしいですし、コンクールの後、更なる成長を感じさせて頂けると言うのも、うれしいものです。ムチンスキーのソナタは、最近いくつかの演奏でお聴きした佳品ですが、バラエティに富む4つの楽章の性格を見事に描き分け、濃密・凝縮した音楽を聴かせて頂き、取り分け素晴らしい演奏でした。ピアノの蒲生 祥子さんのサポートも申し分なく、テンポ感、リズム感、テクニック、幅広い音楽性などなど、どれをとっても彼女の才能は非凡ですよね。

ポピュラーな曲目には特に拘らず、コンドラシナさんが1時間と言う時間の中で、自身が吹きたい曲をバランス良く並べられ、大変見事で充実したプログラムとなっていました。

 

昨年のコンクール受賞パーティーで、同じ円卓の隣同士になった方と偶然再会しました。3年後のコンクール会場で、またお会い出来ることをお互いに誓いながら、今日お支払した「投げ銭」が、3年後のコンクール開催に是非とも生かされますよう、心から願っています。

 

コンドラシナさんにはご無理を申し上げ、お忙しい中、昨年のコンクール時に吹かれた楽譜など、サインをたくさんいただきました。ありがとうございました。

非営利・有志の方々で運営されている「サロン・コンサート協会」が、今年めでたく1000回の公演を企画・実施を達成されました。私は、そのうちのほんのわずかな回数しか聴きに伺っていませんが、こちらの公演がご縁となり、関西を中心に活躍されている多くのアーティストの皆さんとお知り合いになれ、心から感謝しています。

 

この日は、この協会と繋がりのある5名の奏者の皆さんが、それぞれお得意の曲目を演奏されました。ショパンのピアノ協奏曲第1番は、弦楽四重奏にピアノソロと言う、いわゆるサロン形式での演奏でしたが、ピアノの阿見さんの、手の内にいれているからこそ可能な繊細かつダイナミックな演奏が、弦楽器の皆さんにも十分に伝わり、大変スケールの大きいショパンをお聴き出来たように思います。第2楽章で感じられた音楽の「うねり」は、この編成だからこそ可能な表現で、取り分け素晴らしい瞬間でした。阿見さんは、ここ最近何度か聴かせて頂いていますが、海老彰子さんのご指導を得ておられることもあるのでしょうか、ことショパンの演奏は、常識的でありながらも、時折とても個性的で自由な面も覗かせ、ショパンの演奏にそびえるひとつの大きな壁を見事に超えられた、そんな印象さえ受けます。一方で、アンコールにシューマンを選ばれたのも、如何にも阿見さんらしいなあと思いました。

ハイドンの四重奏曲は、私も何度か弾いたことのある馴染みのある曲で楽しみにしていましたが、最初は低弦の音量が幾分大きいように感じ、メンバー間のバランスがちょっとどうかなと思いましたが、曲が進むにつれそれも解消して行き、それぞれのパートが有機的に絡み合い、ハイドンらしい機知を聴かせてくれるような、なかなか聴きどころのある演奏でした。その中で、4人の奏者の皆さんの個性もはっきりと聴き取れ、私自身としても大変収穫の多い演奏でした。アンコールのモーツァルト、相当速い演奏でしたが、各奏者の実力が見事に発揮・反映された、これも大変爽快な演奏でした。

 

今後も多くの公演が企画されて行くようですし、更に多くの聴衆の皆さんに、ぜひ聴きに来て頂きたい、そう願わずにはいられません。

関西の若手・中堅ピアニストの中には、とても素晴らしい才能を聴かせて下さる方々が何名かいらっしゃいます。具体的なお名前は、またいつか、と言うことにさせて頂きますが、この日お聴きした森本 美帆さんは、常に安定した演奏がお聴き出来る、私がご信頼している数少ないピアニストのおひとりです。

ハンガリー留学からの帰国後、これまでドビュッシーやベートーヴェンを弾かれる機会は非常に少なく(と言いますか、皆無)、この日のリサイタルは、そう言う意味でも非常に貴重な機会でした。良く比べられるラヴェルとドビュッシーですが、美帆さんにはドビュッシーの方がより合うのではないかと以前から思っていまして、この日弾かれるドビュッシーの演奏を心待ちにしていました。この日弾かれた曲は、ドビュッシーが書いた曲の中ではそれ程「重量級」とは言えませんが、それでも、美帆さんのされたいこと、そして、彼女の音楽的な感性や持ち味が十分に滲み出た、大変興味深い演奏をお聴き出来たように思います。

判りやすい言葉で書かせて頂くと、ラヴェルの音楽の最も大きな特徴は「リズム」、そして「抑制」、一方、ドビュッシーの最も大きな特徴は「響き」、そして「率直さ」だと思っています。美帆さんのピアノは、ドビュッシーのこれらの特徴を大切にしながら、愚直に音→和音を積み重ねて行くことにより、曲と言う音符の集合体を自身が吟味・想像し、それを具現化されて行かれるのですよね。そういう行為の積み重ねが、この日のドビュッシーの演奏にも良く表れていて、響きの中に表れる構築物が、見事に眼前に迫って来たのが、例えば前奏曲集抜粋の演奏だったように思います。

では、構造のしっかりとした古典のベートーヴェンのソナタの演奏はどうだったかと言うことですが、若い奏者が良く聴かせる「やり過ぎるルバート」などによる、テンポを揺らし感情を露わにしながら、必要以上に面白く聴かせようとするような演奏とは大きく異なり、彼女のベートーヴェンは、落ち着いたテンポの中で保たれて行く極めてインテンポの流れ・とても堅固な音楽で、ベートーヴェンの楽譜に忠実でありながら、それでいて味わい深いものでした。一聴すれば「面白みのない演奏」だと言い換えることも可能かも知れませんし、特に第2楽章では、(曲そのものもそれ程面白いと言うものでもありませんが)とても朴訥とも言えるような演奏でしたが、一歩一歩進んで行く「歩み」「積み重ね」が、彼女のこの曲の演奏に於ける姿勢を端的に表していたように思います。第1楽章の提示部の反復をされたこともそうですし、また、第3楽章での同じパッセージの繰り返しにおいても、何か異なるような仕掛けをしようと言う意図は皆無、彼女らしく「かっちり」と弾かれ、ひた向きにこのソナタと向き合おうと言う姿勢が大変良く感じられた、大変素晴らしい演奏でした。曲そのものを明らかにしよう、・大切にしよう、そんな真摯な姿勢が垣間見られた演奏でした。続くお得意のハンガリー物も、いつもと全く同じく常に安定してしており、申し分のないものでした。

演奏前にお話しさせて頂いた時、右手の状態にご不安がおありになられるようなことをお聞きし、心配していましたが、それも取り越し苦労でした。

今後も、関西のピアノ界をリードして行くような存在としてのご活躍を、心より楽しみにしております。

 

ベートーヴェンのソナタ集の楽譜を購入して1年程ですが、これまでいくつかの優れた演奏をお聴きして来ましたが、この日の美帆さんの演奏も、それに加わりました。楽譜が擦り切れて読めなくなるぐらい、もっともっと聴いて行きたい曲集ですよね。