あくまでも、現地で実際に聴いた時の印象を記した、個人的な感想です。
以下の(1)(2)を演奏すること。演奏順は(1)(2)の順とする。
1.W.A.Mozart : Rondo D-dur K.373b (Anh.184)(指揮者無しで演奏すること)
2.A.Jolivet : Concerto pour Flûte et Orchestre à cordes(指揮者付きで演奏すること)
6/3 本選審査
1.エレーヌ・ブルゲ(フランス) 26歳
<一次No.44 ☆☆☆☆ 二次No.7 ☆☆★ 三次No.2 ☆☆☆>
本選のトップバッターと言うことで、さすがの本選出場者でも、緊張の様子が伝わって来た。モーツァルト、動きは相変わらず大きいが、音量自体は抑え気味。ソロやピアノ伴奏が続いたからなのか、聴く側の耳が慣れていないからそう感じたのかも知れない。かなり慎重な滑り出しだが、案外に音楽は流れている。白井さん率いるオケのお蔭かも。ジョリヴェはゆっくり目の出だしだったが、中間過ぎてからは俄然勢いが増した。この曲を良く知っている・何度も演奏しているような雰囲気があり、如何にも吹き慣れている感じ。演奏そのものの印象は、予選の時と大きく変わらず、「これはこうだよ、あれはああだよ」と言う感じで、常に饒舌。行間を読むような趣きのある演奏とは対極にあるように思う。上手いんだろうけれど、個人的には苦手なタイプの奏者。
→ ☆☆☆
2.マリアンナ・ゾォナック(ポーランド) 18歳
<一次No.39 ☆☆☆★ 二次No.11 ☆☆☆☆☆(満点) 三次No.1 ☆☆☆☆☆(満点)>
暗譜。モーツァルト、音そのものが爽やか。テンポも適度で心地よい。曲の雰囲気を、音量で無くニュアンス・吹き方で変えて行けると言うのは、彼女の音楽的な素養が豊富な証拠だと思う。ジョリヴェ、音そのものには重厚感がある一方で、オケに負け気味なのは、音量そのものが控えめ過ぎるからなのか。加えて残念だったのは、ところどころ音がひっくりかえったり、吹き損ないが目立ったと言うこと。若さからのほんの少しの焦りが演奏に出てしまったのだろうか。流れて行ってしまいがちな、練習番号<31>前後の譜面の読み込み・演奏は大変見事で、説得力があった。
→ ☆☆☆★
3.秋元 万由子(日本) 24歳
<一次No.10 ☆☆☆★ 二次No.3 ☆☆☆☆★ 三次No.9 ☆☆☆☆★>
ポーカーフェイスがトレードマークの彼女だが、本選の舞台は平常心で臨まれているのが感じ取れた。如何にもフルートらしい音色、音は澄んでいて、音楽が常に正直でまっすぐ前を向いている。笛の端で指揮を執っているような感じで、オケをリードし、自由に泳いでいるよう。聴いている側も、テンポの伸縮が心地よい。難しくない場所で何度か吹き損じがあったのが残念。ジョリヴェ、メリハリのあるデュナーミクが印象的で、純粋にジョリヴェの譜面=音楽を追いかけているのが聴き取れた。さすがに最後は疲れて力んでしまったのか、音が出て来なかったが、自身の音楽性ややりたいことが良く見えた熱演だったように思う。ラウンドを進むにつれ頭角を現してきた印象で、コンクール後の伸びシロがまだまだありそうな、前途有望な奏者。
→ ☆☆☆★
4.ハン・ヨジン(韓国) 15歳
<一次No.24 ☆☆☆☆★ 二次No.18 ☆☆☆☆ 三次No.12 ☆☆☆☆☆(満点)>
モーツァルトは、予選とは異なり案外大人しい導入だが、曲のスタイルには合っている。音色は相変わらず素直で伸びやか、澄んでいる。カデンツァも良く考えられている。パッセージの音も綺麗に揃い、とてもモーツァルトらしい音楽造りで、かわいらしい面も覗かせる。ジョリヴェも暗譜。引き続き音楽が活きているが、全体的に一本調子なのが気になった。常にうるさい訳ではないのだが・・。オケの音が少し重い印象で、ソロとの曲に対する捉え方が幾分異なるようにも思える。疲れて来る後半も音がくっきりと聴こえて来る。音楽に対する真摯な姿勢は評価できるが、譜面の後ろに隠れているものを、演奏の背後・行間で示唆出来る奏者になれるかどうかで、今後更に上の段階に進めるかどうかが決まるように思う。ジョリヴェの曲間で客席から拍手が上がったが、既に3人の奏者が同じ曲の演奏を終えている訳で、勢いに任せたこのような配慮を欠いた聴衆の行為には、首を捻らざるを得ない。
→ ☆☆☆☆
5.アンナ・コンドラシナ(ロシア) 26歳
<一次No.15 ☆☆☆ 二次No.17 ☆☆☆★ 三次No.10 ☆☆☆★>
モーツァルトから譜面台あり。オケをリードしようとしてか、全体的に音が大きく、とてもはっきりと吹く。成熟した中庸の良さのようなものは感じるものの、この音楽が持つ楽しさがあまり感じられない。カデンツァもあっさり通り過ぎる。ジョリヴェ、強奏時のヴィブラートに特徴。全体的に流れを重視し、あまり細かいところには拘っていないような感じ。言葉が多い演奏と言うか、幾分楽器でしゃべり過ぎ・吹き過ぎの傾向あり。好き嫌いが分かれる演奏だろう。
→ ☆☆☆
6.ユ・ユアン(中国) 16歳
<一次No.27 ☆☆☆★ 二次No.12 ☆☆☆☆★ 三次No.11 ☆☆☆☆★>
いかにもフルート本来の音色と言う感じの、やわらかさ・懐かしさを感じる音色。推進力のある、如何にもモーツァルトと言う音楽が聴ける。細かい部分に拘らず、上手に流れを作っている。カデンツァも良く考えられており、かわゆさ、人間らしさが聴こえる。ジョリヴェも暗譜。曲全体を大河のような大きい流れが包み込む。後半は多少アバウトさが感じられたが、ジョリヴェを吹いた6人の奏者の中では、最も印象に残った演奏。因みに、独特の音色を生み出している彼のフルートは、日本で購入したヤマハの「イデアル」と言う種類だそう。
→ ☆☆☆☆
<私のジャッジ>
☆☆☆☆・2名 4 6
☆☆☆★・2名 2 3
☆☆☆・2名 1 5
予選ではっきりしていた実力差が、本選審査の課題曲ではそう大差がつかなかった。ジョリヴェの協奏曲は前回大会の予選の課題曲でもあり、コンクール前からこの個性の出難い協奏曲を本選の課題曲にするのはどうかと思っていた。前回のC.P.E.バッハの協奏曲での白熱した本選を思い出すにつけ、最大の「聴かせ場」となる本選課題曲、次回開催時の選択には、より慎重であって欲しい。
